GT Introduction
GT入門コンテンツ
GT入門コンテンツ
Vol.1「GTって何?」
Vol.2「タイヤの話」
Vol.3「ドライバーの仕事」
Vol.4「メカニックの仕事」
Vol.5「タイヤについて」
Vol.4 「レースカーの装備」
SUPER GTレース概要はこちら
SUPER GTのGT500クラスを戦うフェアレディZは、市販車をベースにしたレーシングカーです。スタイリングは低くワイドでかっこいいですが、市販車と比べるといくつか違う部分も見られます。もちろん車内は、エアコンやカーステレオのような快適装備は外して、車重を軽くしてあります。市販車のZは1480kgなのに対し、レーシングカーは1080kg。では、レースをするためにZにはどのような装備が搭載されているのでしょうか?


ヘッドライト
市販車の形状を模していますが、ランプはICHIKOH製の高照度キセノンランプを採用し、バックマーカーやライバルに接近していることを伝えます。なお、ヘッドライトのレンズの色は、GT300クラスがイエローと決まっています。NISMOは22号車がノーマルのクリアレンズですが、1号車には識別用に薄い水色のシートを貼り付けています。

オーバーフェンダー
Zのボディがワイドに見えるのは、左右に大きく張り出した前後のフェンダーのためです。これは規定で定められた太いタイヤ(最大14インチ=359mm)を履くため。太いタイヤほど、接地面積が広くなるわけで、その分コーナリングで速く走り、ブレーキングで止まることができます。

フロントウィンドウ
素材はガラスではなく、厚さ6mm以上のポリカーボネートという樹脂製のものに交換しており、30%以上もの重量軽減をしています。

サイドウィンドウ
これも素材はポリカーボネートです。なお、Zのサイドウィンドウは開けることができない固定式です。一部にスリットを入れたり、小さな窓を開けてありますが、これはコクピット内のエアを抜くためのものです。それでも熱気が抜けにくいので、ドライバー後方の隔壁(バルクヘッド)にはエアアウトレットが装着されています。

ミラー
ドアミラーは、クラフトスクエア製の軽量で空気抵抗の少ないものに交換しています。鏡面は規定の最低サイズをクリアしています。なお室内から角度のコントロールはできません。室内ミラーはありません(※安全性装備の項参照)

カナード
フロントバンパーの左右に装着した板で、車両の寸法(全幅、全長)内に収まっています。フロントタイヤにグリップを付けたいサーキットで装着します。逆にストレートスピードの欲しい富士のようなコースでは外す場合もあります。一般の車両でも寸法内に収まっていれば車検は通ります。NISMO製Z用ストリートパーツ「フロントバンパースポイラーVer.2」にもオプション設定があります。

牽引フック
市販車では見えないように隠れていますが、レースカーではすぐに分かるように黄色に塗られてむき出しです。車両がコース脇のランオフエリアやグラベルベッド(砂利)で止まったりして、自力で出られなくなった場合、ここ(トーイングアイ)にロープやフックを引っ掛けて引っ張ります。

04Zと05Zのエクステリアの違いについての詳細は、
「The Evolution of SUPER GT Fairlady Z」をご覧ください。


ペダル類
市販車の多くはレバー部が上方から吊り下げられた形をしていますが、レースカーではオルガンのペダルのような形状をしています。これはペダル手前(ドライバー側)の下に収められたブレーキマスターシリンダーストッパーとの距離を短くして剛性を上げるため。レースカーは低重心でシンプルな構造の方がいいのです。

ハンドル
一般にはハンドルですが、レース界ではステアリング(ホイール)と呼ぶことが多いです。一般のハンドルにはクラクションのボタンがある程度ですが、レース用のステアリングにはホーンボタンはなく、代わりにさまざまなボタンや情報を確認できるインジケーターが付いています。なお、ステアリングの情報をより見やすくするために、ダッシュボード右上にも同様のモニターがついています。

シフトレバー
Hパターンではなく、シーケンシャル式のシフトレバーです。N(ニュートラル)の位置からシフトアップするにはレバーを引いて行います。逆に押すとシフトダウンします。NからR(リバース)に入れるにはレバー下にある小さなレバーを引きながら前に押して行います。逆にRからNに戻す場合は手前に引いて行います。小さなレバーは、走行中にミスしてRに入れないようにするための防止装置なのです。

コクピット機器類の操作についての詳細は、
「GTマシン コクピットビューア」をご覧ください。


バックモニター
Zの運転席の後ろには窓はありません。ですから室内ミラーは初めから装着されていません。後方を確認するためには左右のドアミラーを使用しますが、真後ろの状況は分かりませんし、もし接触などでドアミラーが横を向いてしまっては後ろが全く見えず危険です。このためダッシュボード中央には後ろの情報が分かるバックモニターが設置されています。モニター用小型カメラのレンズは、車両後方、NISSANのコーポレートマーク下に装着されています。

ドライビングシート
シートは体が動かないように、ふともも、腰、肩をホールドするよう貝殻(シェル)のような構造になっています。背中部分のリクライニング機構もありません。背の高さの違うドライバーのためにシートは多少は前後にスライドします。

6点式シートベルト
ドライバーの体が動かないようにシートに固定するためのもので、両肩、腰、股間、各2箇所から伸びてきたベルト(ハーネス)(股間は1本にまとめてある)をお腹のバックルで留めます。これでアクシデントの際に体が前にいくこともありません。緊急時にはバックルを開放することで、いっぺんにシートベルトは外れます。

HANS
Head And Neck Supportの略で、カーボンファイバー製。ドライバーの頚椎を守るためのもので、ヘルメットにつながれます。主に前面衝突時にむちうちや前方移動を防止します。
消火器
緊急時に出火した場合、コクピットの消火器スイッチを押すことで、消火器が作動して消火します。消火器本体はドライバーズシートの後方下側にセットされています。

車両の安全面ついては、
「ドライバーを護れ!レーシングカーの安全性を高めるために〜ニスモの考え方」をご覧ください。


マフラー
マフラーは性能的には太くて短いのが理想。通常の車両では後部から出ていますが、GT規定では“横出し”が許されています。このためフロントタイヤの後方から排気しています。性能的にいいばかりか、キャビンの下を排気管が通らないため、ドライバーの暑さという面でも有利です。

クールスーツ
夏場やマレーシアなど、暑いときにはコックピットはまるでサウナ状態です。そこでドライバーの疲労度を和らげるために、クーリングシステムが必要になります。Zでは、ファンでドライバーに冷気を送ったり、氷やドライアイスを詰めたクーラーボックスの中を循環させた水を通す“クールスーツ”をレーシングスーツの下に着て、体を冷やしたりしています。

エアジャッキ
ピット作業でタイヤを交換する際やピット内でメンテナンスをする際に、車両を持ち上げるもので、圧縮窒素を入れることでシリンダーが作動してピストン部分が地面を押して車両が持ち上がります。エアを抜くことでピストンが元の位置に戻り、車両が下がります。ジャッキのシリンダー&ピストンは、コクピット前方の左右に2個、ボディ後部に1個の計3箇所にあります。

ハンディウェイト
SUPER GTでは、速いクルマにはバラストを搭載するというウェイトのハンディキャップ制を設けて、性能の均等化を図っています。ですから予選や決勝で良い成績を収めると、所定のハンディウェイトを車両に積まねばなりません。載せる場所は、車両中心で低い位置がベストなのですが、なかなか理想の場所に搭載するスペースはありません。50kgまではアシスタントシート取り付け部に置く規則ですが、それ以上は、一箇所に固定せず2箇所に分けるなど、チームで判断します。

GT Introduction Vol.4