【第1回】

フォーミュラEでの担当業務

私は制御エンジニアとして、特に車両走行性能に関わるソフトウェア開発を担当しています。車にはさまざまなセンサーが搭載されており、それらの情報をもとに、その瞬間に最適なモーター出力はいくつか?を、演算するプログラムを考えています。45分間(+1ラップ)のレースを戦うために、バッテリーの状態やタイヤの状態など、様々なことをドライバーも車も考えながら走っています。このコントローラーは、1ms, つまり 1/1000秒に1回の周期で演算して、新しい計算結果を出力します。具体的には、駆動力/制動力の演算や、エネルギーマネージメントなどが主な開発機能になります。開発を進めるに当たり、パワートレインシステムを理解することはもちろん、車両運動に関わるシャシーやタイヤに関する知見も必要になります。

この制御技術は、私がこれまで日産やニスモで培ってきた経験やノウハウを活用することに加えて、日産の電動化技術を活用しながら、その専門家とも密に連携しつつ開発されています。実際に、いくつかの日産の制御技術が本車両に適用されています。

フォーミュラEを簡単にご紹介

フォーミュラEは、電気自動車のフォーミュラマシーンです。この車は、すべての車に共通で適用されている部品と、自由に開発が許されている部品があります。車の空力性能に関わる外観や、カーボン材料で作られている車体、フロントサスペンション、ブレーキ、タイヤなどは共通部品です。一方、自由に開発が許されている部分(つまり、各社の競争力を左右する領域)は、モーター・インバーター、トランスミッション、リアサスペンション、回生協調システムなどです。それらに加え、そのハードウェア達をどのように動かすのが最適なのかを演算するソフトウェアも、開発が許されています。ただ、バッテリーに関しては、ハードウェアもソフトウェアも全車共通部品で、同じ性能になっています。

フォーミュラEは、45分+1ラップを、「限られたエネルギーで一番速く走ったクルマが勝つ」というレースです。基本的な最大出力は200kwですが、Attack Mode(+25kw)やFanBoost(+50kw)という機能があり、限られた時間だけ出力を上げることができます。Attack Modeで出力アップしている時は、Halo(ドライバー頭部を保護する装置)にあるLEDランプが青色に光ります。またFanBoostで出力アップしている時は、赤紫色に光ります。こういった機能の使い方もレース戦略の一つとなります。

このレースカテゴリーは、2014年に北京で「シーズン1」(2014-2015)がスタートしてから、まだ5年目です。日産が参戦を開始した現在の「シーズン5」(2018-2019)には、アウディ、DS(PSA)、ジャガー、マヒンドラ、BMWという世界の名だたる自動車メーカーが参戦しており、競争も非常に厳しくなってきています。さらに、「シーズン6」にはメルセデス、ポルシェもワークス体制で参入する予定です。これだけ多くの自動車メーカーが参入するレースは珍しく、ここで日産がどのように戦っていくのか、ご注目頂ければと思います。

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