GT Introduction
SUPER GT INTRODUCTION
Vol.3 ピットワーク
トップページ
SUPERGT 用語集
Vol.1
GT500/GT300の違い
Vol.2
ウェイトハンディとリストリクター
Vol.3
ピットワーク
Vol.4
レースカーを走らせるまで
Vol.5
チームスタッフの役割
 ピットワークは、SUPER GTの決勝レースでは必ず行われる作業です。というのもレース中には、ドライバーの交代が義務付けられているので、どこかで1回はピットに入らないといけません。このピットインでは基本的に、ドライバー交代の他に、燃料の補給、そしてタイヤの交換が行われます。

 このピットワークにかかる時間は早ければ早いほどいいのです。ドライバーが頑張ってコースで縮めた1秒と、ピットクルーが迅速な作業を行って稼いだ1秒は同じもの。だからひとつのミスが命取りになることもあります。

 ピット作業では、多くのスタッフが一度に作業を行えば時間は短縮できますが、ピットレーンは危険な場所。できるだけピット作業が安全に行われるように、車両に触ることができるのは5人までと決められています。ニスモでは、タイヤ交換が2名、給油が1名、エアジャッキが1名というように担当の決まった4名と、臨機応変に対応できるフリースタッフ1名の5名。ちなみに消火器を持つスタッフ、ドリンク交換、クールスーツ用のアイスボックスの氷交換といったドライバーサポートは、この5名には含まれません。フリースタッフはその名のとおり何でもできますが、基本的には車両のカウルが壊れたりしたときの応急処置担当です。ルーティーンピットの際にカウルがちょっと割れていたりすると、他の作業が行われているときにカウルにテーピングして補修します。

 しかし5人一緒に作業はできません。というのも、給油中にはドライバー交代以外の一切の作業ができないからです。窓拭きも行ってはいけません。では何の作業から始めるのか? ニスモの基本作業は、ジャッキアップ→リアタイヤ交換→給油→フロントタイヤ交換→ジャッキダウンという流れです。タイヤ交換を4本一気に行ってしまうと、タイヤ交換担当は前後のタイヤの間を移動しなければなりません。その移動の数秒がムダですし、慌てることはミスを招いてしまいます。リアタイヤを交換して給油を始めたら、その間にフロントタイヤの位置まで移動して落ち着いて合図を待って交換すれば、 ミスも防げるし時間も短縮できます。ちなみにインパクトレンチで外して、新しいタイヤを入れて、インパクトレンチできちんと装着するというタイヤ交換の目標タイムは5秒台です!

 なお、ニスモでエアジャッキを担当しているのはその車両のチーフメカニック。彼はピットイン時に車両が停車したのと同時にジャッキアップ。給油が済みフロントタイヤを交換している間に、フロントウインドウのティアオフフィルムと呼ばれる透明の薄いフィルムをはがします。これで窓を拭く作業も不要になります。そして再び車両の前に戻り、作業が終わったのを確認してジャッキダウン。作業がすべて終了となります。

 この作業風景はいつ見てもスタッフがキビキビと動き、プロフェッショナルです。GTが始まったころは、ニスモのピットワークが非常に迅速で評判になりましたが、現在では各チームとも練習を重ねてニスモに追いついてきました。ニスモのスタッフは日ごろからランニングをしたりトレーニングルームで身体を鍛えてピットワークに備えています。またレース中にはピットの上にビデオカメラを設置して、レース後にその画像を分析しています。例えば誰がどこでどんなミスをしたのか?それとも車両の位置がずれていたのか?などをチェックすることで、その後のミスの再発を防止しているのです。人間はミスをするものです。でもそれは最小限にとどめなければなりません。

 車両が接触やコースアウトで緊急ピットインしたときも、基本の作業は同じです。すべての基本作業を行ってから、車両の修復作業を行います。

 またニスモでは安全面を考えて、作業エリアで作業をする全員が耐火服を着用しています。特に給油担当は危険ですので、ドライバーと同じ格好=アンダーシャツ、シューズ、ソックス、グローブ、バラクラバス(マスク)、FIAのスネルを取ったヘルメットを着用しています。また決勝レース中も、タイヤ交換担当とエアジャッキ担当は、車両との接触などの安全面を考えてヘルメットを着用しています。

 実は、ピットワークには、車両開発と同じように、数え切れないほどの改良やノウハウが詰まっているのです。今回は実作業の話でしたが、このとき使用しているツールにも数々の改良が施されているのです。各チームのピットワークに注目してみると面白いかもしれません。