全日本GT選手権(JGTC)スタート2年目の94年、GTアソシエーション(GTA)が統括するようになった年から、ウエイトハンディキャップとリストリクターによる性能調整が始まりました。なぜ性能を調整するのか? それは各車両の性能を接近させることで、より迫力あるバトルが繰り広げられると判断されたから。どのチームにも勝つ権利があれば、多くのメーカーやチームが参加しやすくなるし、スポンサーも集めやすい。参加台数が増えれば、シリーズは盛り上がります。
そのためにまずリストリクターという吸気を制限する装置を用いて、各車両のエンジンパワーを接近させました。リストリクターのサイズは、自然吸気、過給器(=ターボチャージャーやスーパーチャージャーなど)付きなどの違い、リストリクターの数(直列エンジンであれば1個、V型であれば2個など)、車重によって、細かく区分されました。もちろん性能が接近しない場合もあり、これは毎年見直されています。
ウエイトハンディキャップは、当時ドイツやヨーロッパで人気を誇ったDTM(ドイツツーリングカー選手権)にならい導入しました。これは速い車両には成績によりハンディキャップとなるウエイトを搭載させ、1台の車両が勝ちすぎないようにするための措置。ウエイトはある一定の成績を収められない場合には降ろすことになるので、再び優勝争いの戦列に復帰できるというもの。
しかし、このウエイト搭載を嫌ってポジションを譲るというレースが何度か起き、ウエイトハンデのシステムはたびたび微調整が行われ、決勝の成績だけではなく、予選や決勝レースのベストラップの結果によって、今年は別表のように定められています。JGTCは、リストリクターとウエイトハンデという大きなふたつの性能調整によって、どのエントラントにも活躍する場を設けることで成功を収めました。
現在、SUPER GTで行われている性能調整は、この2つだけではありません。まず、「性能の引き上げ措置」。これは特認車両以外の車両に設けられた措置で、車両の性能やアクシデントなどでどうしても結果が残せない車両について、リストリクター径のサイズを広げることができるというもの。引き上げは最大2サイズまで行われ、前半戦で振るわなかったチームに後半戦で活躍できる可能性を持たせています。
さらに今年から導入された「GT500クラスの特別性能調整」があります。これは俗に“0.8%ルール”と言われGT500クラスだけに設けられたもので、「車両(+エンジン)+タイヤ」の組み合わせによるグループ分けを行い、同一グループ内最速車(決勝ベスト10周の平均タイム)と、他グループの最速車を比較し、0.8%以上速い場合にはグループ全車に25kgの重量ハンデを課すものですが、実際問題として性能調整になっているのかは、まだ判断ができていない状態です。
この他、駆動方式や、前面投影面積、高地にあるサーキットにおける性能調整も行われてきましたが、今年はそのような細かい調整はいったんやめて、性能調整を見直す年となっています。
“速い者が勝ってチャンピオンを獲得するもの”という論理もありますが、SUPER GTでは、速い者が勝てないレースもあります。シリーズ全体を通してバトルしつつ安定した成績を収めた者がチャンピオンになれるのです。
決勝順位 |
1位 |
2位 |
3位 |
4位 |
5位 |
6位 |
7位以下 |
GT500 |
50kg |
30kg |
20kg |
10kg |
0kg |
-10kg |
-20kg |
GT300 |
30kg |
20kg |
10kg |
5kg |
0kg |
-5kg |
-10kg |
予選順位 |
1位 |
2位 |
3位 |
両クラス |
10kg |
10kg |
10kg |
決勝ベストラップ |
1位 |
2位 |
3位 |
両クラス |
10kg |
10kg |
10kg |
※累計最大ウエイト GT500:120kg/GT300:100kg
※予選順位とベストラップにかかるウエイトハンデが減算されない
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