何故、NISSAN VK45DEが強さを発揮し、今年の最大のテーマだったル・マン24時間レースで1-2フィニッシュという結果を出すことができたのだろうか。稲垣は、「日産のエンジンラインアップにV8 4.5リットルNAという素材が存在していたことがなんといっても強みです。やはりレンジが幅広い総合自動車メーカーならではですよね。もちろん、SUPER GT用からの転用なので、基本的な性能開発が完了していたこともあげられます。現状のライバルは、3.6リットルV8と2.8リットルV6ターボですが、ゼロからの開発のため時間がかかっているように思います。しかし、エアリストリクターによる流量規制に関しては、レギュレーション施行当初からVK45DEには厳しい数値だったんです。こちらがデビュー以降好調なこともあって、ライバル勢にはさらに緩和の方向でBOP(バランス・オブ・パフォーマンス=性能調整)が図られています。このため最高速もほぼ同等になってきましたし、性能面ではもはや圧倒的なアドバンテージはありません」と語る。それでもグリーブスモータースポーツがル・マンで優勝できたのは、補機類を含めてエンジン関係のトラブルが全くなく、安定した性能を発揮できたことが勝因だと考えられている。また、SUPER GTでのNISMOエンジンの評判により、その優位性に早くから着目ししたチームが、総合力に長けた有力チームだったこともある。

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