駆動システム
エンジンが発生する力を走行状態に応じて4輪に最適に配分する4WDシステムは、NISSAN GT-Rの特徴のひとつだが、FIA GT1のレギュレーションでは認められていない。そのため、NISSAN GT-R FIA GT1車両はFRの駆動方式に改めている。また、パドル操作による変速システムも禁止されているため、シフトレバーで操作するシーケンシャル式の変速システムを新たに構築した。

4WDをFR化するにあたっては、ベース車両が採用する、トランスミッションとデフおよびファイナルギヤを一体化したトランスアクスルを踏襲。運動性能を考えれば、当然の選択だ。ただし、自社開発のデュアルクラッチ式自動変速機構(縦置き)を降ろし、SUPER GTで実績のあるリカルド製トランスアクスル(横置き)に載せ替えている。

SUPER GTの450psに対し、FIA GT1は600psを発生するが、6速のギヤセットを含むインターナルはSUPER GTと共用する。ただし、マグネシウム製ケーシングはFIA GT1車両の専用設計。SUPER GTの場合はモノコックと締結し、サスペンションの入力を受け止めるのに対し、FIA GT1車両はサブフレームにマウントし、サスペンションの入力を受け止めない。サスペンションの入力による荷重を受け止めるか受け止めないかで必要な強度・剛性が変わるし、マウント用ブラケットの位置も異なる。専用設計にしたのはそのためだ。
ギヤボックスオイルクーラー冷用エアのインレットは、トランクリッドに設置。オイルクーラーを通過したエアは左右のダクトに分かれ、リヤフェンダー後端のアウトレットに向かう。規則による制約が厳しいため、ベース車両が備えている開口部をうまく転用してシステムを構築した。
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