GT Introduction
SUPER GT INTRODUCTION
Vol.4 レースカーを走らせるまで
トップページ
SUPERGT 用語集
Vol.1
GT500/GT300の違い
Vol.2
ウェイトハンディとリストリクター
Vol.3
ピットワーク
Vol.4
レースカーを走らせるまで
Vol.5
チームスタッフの役割
 レース翌日、トランスポーターから降ろされたレースカーは、メンテナンスを行うガレージに運び込まれます。まず最初に行われるのは、アライメントのチェック。Zがレースをどのような状態で走っていたのか、どこか壊れているところはないか、データを取って確認します。

 アライメントの確認が終わると、車両は全部バラバラにされます。外板、エンジン、トランスミッション、サスペンション、電装、ホイールなどさまざまなパーツが外されてモノコックだけになります。そして各パーツに不具合がないかのチェックが行われます。

 GT500に参戦している日産車5台のすべての情報が集められ、もし1台にでもパーツの不具合が発見されれば、全チームに情報を流してチェックします。そしてエンジニアや設計者が対策を施します。それは修理であったり、時にはパーツの改良に及ぶこともあります。

 疲労しやすいパーツは新品に交換します。例えば5000km走って壊れるようなパーツは、4000km走行した時点で交換し、レース時のトラブルを未然に防ぎます。このようにパーツは距離で管理されているのです。サスペンションやミッションの中身は、カラーチェックという作業を行いクラック(破損や亀裂)が入っていないか調べます。カラーチェックとは、まず浸透液である赤いスプレーをパーツに吹きかけて数分放置。次に洗浄剤で洗い流します。この状態でもクラックは見えませんが、現像液に漬けてそれが乾くと真っ白な中にクラックが赤く浮き出ます。

 ベアリングは回り具合やゴリゴリした部分がないかのチェックを行い、プリロード(事前に荷重をかけておくこと)をチェックします。

 サスペンション、ブッシュ、ピロボールといった負担のかかりやすいパーツは、ガタのチェックを行い交換します。これまでの品質管理でおおよその寿命が分かっているので、それが目安になります。ただし毎年レースカーが改良されていくので、パーツの寿命をシーズン中に見直すこともあります。

 NISMOでは合同テストでテストカー(350号車)を走らせることがあります。テストにおいて、レースカーはタイヤのテストを行っていますが、テストカーはタイヤのテストは行いません。基本的に改良されたパーツや性能向上のためのアイテムを先行テストしています。

 なおエンジンは、NISMOでは積み下ろしを行うだけで、チューニングを担当しているオーテックジャパンに渡します。今年から基本的に連続2戦はエンジンを開けられなくなりました。ヘッドカバーやオイルパンは厳重に封印されているので、スパークプラグを外して、内視鏡でチェックを行います。2戦使用したエンジンは、オーテックジャパンで念入りにオーバーホールされます。また、レースとレースの合間に合同テストが入ると、作業はもっと大変です。レース用のエンジンを降ろしてテスト用のエンジンを載せ、テストが終了すると、またテスト用エンジンを降ろしてレース用のエンジンを載せないといけません。

 そして改めてパーツをモノコックに取り付けていくわけですが、レースウィークの火曜日までには作業を終了しなければなりません。水曜日には車両はトランスポーターに積み込まれて、木曜日にはサーキット入りするのですから。

 またメカニックは、ガレージでレースカーのメンテナンスだけをしているわけではありません。特にタイヤ交換、給油のメカニックスタッフは、日々トレーニングを行っています。NISMOにはトレーニングルームがあり、筋力トレーニングが行えます。またトレーニングルームの隣にはピットワークシミュレーションのためのトレーニングカーが置いてあり、週に1回はタイヤ交換と給油の練習を欠かしません。ストップウォッチで交換に要する時間を計測し、ビデオで撮影。全員で画像をチェックしてスキルアップをしています。なおレースウィークには、サーキットで一日1回はシミュレーションを行って、迅速なピットワークを目指しているのです。