ファルケンGT-Rのニュル挑戦では、NISMOがエンジンの技術支援を行っている。NISMO技術部のスタッフがニュルまでサポートに出かけるのだが、今回はスーパー耐久シリーズでもユーザーサービスを担当している高野宏氏に、ニュル挑戦への意気込みを聞いた。
「ニュルに行くのは2年ぶりなんですよ。去年はエンジントラブルのために序盤に脱落しましたから、今年は対策を講じました。昨年末から今年の初めにかけて国内のサーキットで、ロングランテストをしましたし問題はないだろうと思っています。
ニュルというコースはエンジンにとっても非常に厳しいコースです。全開にできない、しかもスロットルをゆっくり開けて行くところが多いんです。ニュル用のセッティングはニュルでしかやれないんです。ですから今年は4月に現地のレースに参戦することでテストを行いました。結果、エンジン本体の出力性能についてはある程度の合格点をつけられると思っています。でもまだ多少詰めるところはありますから、何とか上位に食い込めるようにしたいですね。
ニュルの24時間に参戦することで、いいデータが取れますし自信にもなります。順位は、こればかりはやってみないと分かりませんね。地元のバイパーはもとより特別速いポルシェも数台いますから。信頼性をチェックするために走行テストのスケジュールを組んでもらったわけですから、本番では何とかしたいです。台(エンジンベンチ)上でも試験やっていますし、順当にいけばかなり上のポジションに行くはずですし、注目を集めるでしょうね。今年はファルケンGT-Rの1台だけに集中できますから、何とか頑張って来たいと思います」
ニュルスペシャルのGT-Rの中身は?
ニュル24時間に参戦するファルケンGT-Rは、スーパー耐久仕様のR34GT-Rをベースに、ニュルスペシャル仕様に仕立てられたレーシングカーだ。ベースはS耐用のGT-Rだが、バイパーやポルシェといった強豪に伍するためにNISMOのZ1エンジンを搭載した。これは2771ccのチューンドエンジンで最高出力は約500ps。このパワーを受け止め余すことなく路面に伝えるために285mm幅の太いファルケンタイヤを履いた。そのためにオーバーフェンダーを装着した。加えてカーボン製のボンネット、ドア、トランクリッドに変更。パワーだけでいけばGTマシンを持ち込めばよさそうなものだが、路面の起伏が激しくギャップも多いニュルでは、よく動く足が必要で、このため足まわりの動きが少ないGT仕様ではなく、S耐仕様が選ばれた。当然4WD機能は生きているので、雨が降ったりすれば上位に進出するチャンスはかなり大きい。
ニュルのレースウィーク進行
ニュル24時間は29日(水)にサポートレースのフリー走行や予選から始まる。30日(木)には本格的なレースウィークエンドに突入。朝からワンメイクレースや「V8 STAR」レースなどのサポートレースの予選・決勝が行われる。そして午後には北コースを使用した3時間ほどのレースが組まれているが、これに参加できれば予選前の最終チェックができることになる。昨年これに参加したことで、車高や足まわりの調整ができた。ただし参加できるかどうかは現地に行ってみないと分からない。
31日(金)は、24時間の予選がメインとなる。朝10時からお昼までの2時間が予選1回目。そして夜の7時から11時までの4時間が予選2回目となる。ドイツはこの時期日没の時間が遅く、10時過ぎまで明るい。したがって朝に暫定でタイムを出しておいて、気温の落ちる日没前後にアタック合戦が繰り広げられるのだが、よく薄暗いコースでベストタイムが出せるものだと感心してしまう。ファンは既にお祭り気分。朝から大きなボリュームでズンズンとステレオをかけ、ビールを飲み、空いた缶を木にぶら下げ、そしてのんびりとイベントを楽しんでいる。
1日(土)は朝からサポートレースの決勝が行われ徐々に会場も盛り上がってくる。お昼からは車両を押してコースへ。200台以上の車両が参加するために、全車両は予選順位によって3つのグループに分けられる。最初のグループはグランプリコースの第1コーナー付近から、第2グループはグランプリコースのピット前から、そして第3グループはグランプリコースの最終コーナーあたりで準備をする。1時間半ほどかけて整列したところで、車両はゆっくりとパレードラップへ。そしてローリングスタイルで午後2時に第1グループから順にスタートが切られる。それから24時間後、つまり2日の午後2時(日本時間午後9時)には今年のウィナーが決定する。
今年の参戦台数は暫定で224台。トップグループはポルシェ911GT3が中心で、中段グループの中心はBMW M3。そして日本のN1にあたるグループではホンダ・アコードが中心。1つのピットは6台ほどで共用。給油もピットにひとつの燃料ホース(日本のガソリンスタンドと同じ!)を使用するという、日本では考えられないような形態で行われる。それがニュル24時間なのだ。