足まわりと基本骨格の大きな変更
具体的な事例をいくつか紹介してみよう。最初はL/O段階でユニット構成を見直した例。(ロールケージ構成)00仕様ではフロント、リヤ共にサスペンションを大幅に見直しし、車体への入力点を狭いエリアに集約、かつキャビン骨格を構成するロールケージに可能な限り近付けることにしている。
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◆ロールケージ構成
フロントサスペンションで説明すると、ダンパー&スプリングユニットを従来の縦置きから前後水平置きにしたことで、ロワウイッシュボーンからホイールハウス上面まで広がっていた入力点の範囲をロワウイッシュボーンからアッパーウイッシュボーンの範囲に狭めることができた。リヤサスペンションは、フロントと同様に車両前後にダンパーを配置している。このレイアウトは、ダンパー&スプリングの入力をキャビン骨格を構成するロールケージで直接受けられるので、剛性としても効率の良い手法といえる。この結果、ロールケージがシンプルになり、99仕様に対しロールケージで16kgも軽量化することができた。
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◆フロントサスペンション
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◆リヤサスペンション
00仕様のエンジンルームのフロントビューで、注目していただきたいのはエンジンマウント部分。従来エンジンを支えるという機能のエンジンマウントとサスペンション入力点の支持部材であるセカンドクロスメンバーは独立した部品だったが、00仕様ではエンジンマウントにふたつの機能を持たせることにしている。従来のセカンドクロスメンバーの機能を、エンジンマウントとエンジンブロックが代替するといったセミストレスマウントとなっている。ここには示していないが、ファーストクロスメンバーについても廃止し、その機能をラジエターを収納しているカーボンコンポジット製のクーリングボックスに果たさせるようにした。これが部品の多機能化の例である。
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◆エンジンルームのフロントビュー
最後は部品設計段階での軽量化。これはやる内容自体は目新しくなく、メタル部品の肉厚、カーボン部品のプライ数等を減らすということだが、すべての部品について検討をしたということが努力賞であろう。大きなものを挙げると、エンジンブロックのぜい肉を徹底的に削る等を積み重ね、エンジンで10kg程度の軽量化ができている。こういった取り組みをしていった結果、目標の50kg以上の軽量化を達成し、それをリヤアクスル上に積むことで重量配分も目標を過達することができた。
次なる性能要件は重心高の低下。これは徹底して行った。1Gにおける車両姿勢を下げる、部品の搭載位置を下げる、といった取り組みは従来からやっていたが、路面干渉やコースオフした時の脱出性を考慮した範囲での話だった。これが、「速さでは劣っているが、レース距離を走りきると上位にいる」というスカイラインの強さを実現する大きな柱だったわけだが、00仕様ではこのマージンを削り取り、速さに振り向けるという方向へ180度方針転換することになった。
エンジンは、路面干渉するとリタイアにつながる危険性が非常に高いのだが、最も重量があり重心高低下への寄与が高いユニットである。そこで今までのマージンを、10mm以上削ることにし、さらにオイル回収を工夫することでオイルパンの深さも10mm削減、エンジンの搭載位置(エンジンセンター位置)を対路面で20mm規模で低下させている。最終的に車両トータルとして重心高も目標の低下代を達成することができた。
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