NISSAN RACE CAR DIRECTORY 日産レースカー名鑑
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Vol.9 大人気の英国ツーリングカー選手権を席巻したFFスポーツセダン


 1993年日本で、スカイラインGT-Rが圧倒的強さを見せたグループA規定によるツーリングカーレースが終了した。そのころ英国では、英国ツーリングカー選手権(BTCC)が人気を集めていた。2リッターの自然吸気(NA)エンジン搭載のセダンで行われたこのレースの魅力は、スタートからゴールまで続く、息つく間もない接近したバトル。常に数珠つなぎの状態で、マシンが接触することも日常茶飯事だった。さらに、全車に車載カメラを搭載し、バトル中のドライバーの表情を映し出すなど、エイキサイティングな映像も各国に供給され、世界中のモータースポーツファンの注目を集めたレースだった。

 BTCCが成功した理由として、マシンの性能差をなくす巧みなレギュレーション設定や、映像を含めたプロモーションのうまさがあげられる。多くの自動車メーカーがワークス体勢で参戦してきたことも、さらに人気に拍車をかけた。日本からは、日産とホンダが参戦。そして地元欧州からは、BMW、ボルボ、ルノー、フォード、ボグゾールなど各国のメーカーが参戦してきたのである。これだけ多くのワークスマシンが、毎戦、激しいバトルを繰り返すのだから、モータースポーツファンにとってはたまらなく魅力的なレースだったわけだ。

 ツーリングカーのマシン造りも、このBTCCあたりから変わってきた。ボディ剛性を高めるため、室内に縦横無尽に張り巡らされたロールケージや、車体の中心付近に極力低くセットされたドライバー着座位置などは、このころから採用され始めている。また、いわゆるハイテク装備はレギュレーションで禁止されていたものの、シーケンシャル方式のトランスミッションが採用されたのも、このBTCCあたりからである。

 この人気のBTCCに、日産は93年から、プリメーラで参戦している。96年まではP10型のプリメーラでエントリーしていたが、97年からはP11型プリメーラに移行している。今回紹介するのは、99年のBTCCシリーズでチャンピオンを獲得したマシンだ。

 SR20DEエンジンをベースに、搭載の向きを前方吸気・後方排気に変更。潤滑はドライサンプ方式、8300回転で300馬力以上を発生。これにXTRAC製の6速シーケンシャルタイプのトランスミッションを組み合わせていた。エンジンルームを見ると、かなり低い位置にマウントされたエンジンが目を引く。さらに、リアホイールがフェンダー内に入るほど低められた車高などに、運動性能を向上させるためのエンジニアの苦労が見てとれる。

 そのエンジンの下には、ラリーカーのような大きなジュラルミン製のアンダーガードが装着されている。当時のメカニックによれば、「空力性能向上のためだ」とのことだが、レーシングカーとアンダーガードという意外な組み合わせ、さらにフロントサスペンションのロアアームをこのアンダーガードに取り付けるという、ユニークかつ合理性を重んじる発想に驚かされたファンも多かったことだろう。

 日産は、このマシンで99年のBTCCシリーズ26戦中13勝を挙げ、マニュファクチャラー、ドライバー、チーム、そしてプライベーターの4部門でチャンピオンを獲得した。同時期に日本で活躍していたプリメーラと比較すると、そのカラーリングやマシン造りの違いに、彼の地との国民性や文化の違いを感じさせてくれる1台である。


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