2021.12.3
それは「満を持して」という表現がまさにぴったりのデビューでした。
それまで4シーズン戦い続けてきたフェアレディZに代えて、日産/ニスモはNISSAN GT-Rを2008年シーズンのSUPER GTに投入したのです。R35と呼ばれる新型は前年の10月に発売されたばかりのニューカマー。最新テクノロジーを満載し、300km/hオーバーのクルージングが可能とされたGT-Rは、日産/ニスモがSUPER GTを戦うのに、まさに理想的な存在でした。
一方、08年シーズンのSUPER GTは、翌年にGT500車両規定の大幅改正を控えたタイミングでもありました。そこで日産/ニスモは、09年に導入される新規定を先取りする形で車両を開発。ここに前年までZに搭載されていたVK45DEエンジンを搭載して、新シーズンに挑みました。
厳密にいえば、このR35 GT-Rは08年の車両規則を一部満たしていませんでしたが、GTアソシエイションによって特認車両とされ、参戦が認められました。ただし、旧規則で戦うライバルメーカーとの戦闘力を揃えるため、開幕戦と第2戦の結果を見極めたうえで、特別性能調整が実施されることとなりました。
その開幕戦ではGT-R勢が予選でトップ3を独占。決勝では#23 XANAVI NISMO GT-Rと#22 MOTUL AUTECH GT-Rが激しいトップ争いを演じた末、#23 GT-Rが優勝。新型GT-Rのデビュー戦を栄冠で飾ったのです。
第2戦でも#23 GT-Rはトップでチェッカーを受けましたが、第3戦以降は厳しい特別性能調整が課せられたために苦戦。それでも第8戦にダメ押しともいえる1勝を重ね、#23 GT-Rはこの年のチャンピオンに輝いたのです。しかも、終わってみれば全9戦のうちGT-Rが7勝を挙げる大成功のシーズンとなりました。
09年は新規則が正式にスタート。ただし、日産/ニスモは新規則に合致した排気量3.4リッターV8エンジンではなく、この年もVK45DEエンジンで戦う方針を固めます。そして、この影響で09年シーズンもGT-Rは特認車両としてシリーズに参戦することとなりました。
車両の熟成が進んでいることから、開幕戦では#24 HIS ADVAN KONDO GT-Rが、第4戦では#3 HASEMI TOMICA EBBRO GT-Rが優勝。一方、連覇も期待された#1 XANAVI NISMO GT-Rは、不運も重なって開幕戦と第2戦をノーポイントで終える出足に。その後は復調して第3戦と第5戦で白星を挙げたものの、後半戦は特別性能調整を受けて勝利から遠ざかり、ランキング3位でシーズンを終えました。
雪辱を果たすべく挑んだ2010年は、新規則に沿った待望の新エンジン、VRH34Aを投入。ついにライバルたちと同じ条件でレースを戦う環境が整いました。開幕戦では#24 HIS ADVAN KONDO GT-R、第4戦では#12 カルソニック IMPUL GT-Rが勝利を挙げますが、#23 MOTUL AUTECH GT-Rは未勝利のままシーズンを終えました。
この年、日産/ニスモは水面下でエアロダイナミクス開発を推進。09年規定で弱められた空力性能を取り戻すほどの進化を果たします。そしてこの努力が、翌11年と12年の快進撃へとつながっていきました。
11年に向け、ライバルチームは車両の大幅な開発を進めていました。前述のとおり、日産/ニスモは前年度に基本的な開発を終えていたため、10年型に近い状態の車両で新シーズンを迎えます。そして11年3月、東日本大震災が発生。この影響で開幕前の公式テストが中止され、各陣営はぶっつけ本番に近い状態で新シーズンを迎えました。日産/ニスモはすでに豊富なデータを手にしていたため、この影響を最小限に留めます。しかも、新規参入した#46 S Road MOLA GT-Rとミシュランタイヤが絶妙なマッチングを示し、シーズンを通じて安定した戦績を残してタイトルを獲得。さらには、日産/ニスモにとっては全8戦で5勝を挙げる大成功のシーズンとなったのです。
#1をつけたS Road MOLA GT-Rの快進撃は翌年も続きます。前半戦は苦戦するシーンも見られましたが、第5戦で新エンジンが投入されるとシーズン初優勝を果たし、そのまま波に乗って2連覇を達成したのです。
日産/ニスモは前年度のマシンを継承する形で13年に挑みましたが、この年はライバル勢の躍進が顕著で、結果的には#12 カルソニックIMPUL GT-Rが第3戦で挙げた1勝のみでシーズンを終えることとなりました。