Racing car / Nissan GT-R NISMO GT3

History 伝説は、戦いの中で進化する。

「究極のドライビングプレジャーの追求」をコンセプトとする日産GT-Rにとって、モータースポーツは切り離すことのできない存在です。その技術を、その走りを、世界の頂点で戦うことで磨き上げ、日産GT-Rはたゆまない進化を続けてきました。
FIAのGT3規定に沿って開発されたレース専用モデル、NISSAN GT-R NISMO GT3も、その日産GT-Rの血統を受けつぐレーシングマシン。2012年の発売以来、NISMO GT3は、世界のスポーツカーメーカーが覇を競うGT3レースに参戦。その戦闘力を進化させてきました。
2015年には、オーストラリアの公道を封鎖したハードな特設コースで行われる「バサースト12時間レース」で総合優勝。また、世界のGTカーが激戦を繰り広げる日本の「SUPER GTシリーズ」GT300クラスにも参戦。富士ラウンド、タイラウンドの連戦で1-2フィニッシュを決め、その戦闘力を証明しました。

さらに、ヨーロッパ最大のGT3選手権であるブランパン耐久シリーズでは、見事チャンピオンに輝いています。
2016年には、「スーパー耐久シリーズ」全6戦すべてで優勝するという圧倒的な強さで、シリーズチャンピオンを獲得。また、世界3大24時間レース「スパ24時間レース」では2014年から4年連続、「ニュルブルクリンク24時間レース」でも 2014年から2016年まですべて完走を果たし、その耐久性と信頼性を実証しました。
激しい戦いの中で蓄積され、磨き上げられてきた技術と経験は、次世代のNISMO GT3の進化として継承されていきます。

Dynamic Performance さらなる運動性能を求めて。

NISSAN GT-R NISMO GT3 2018-Specの大きなテーマは、低重心化と、前後の重量配分の適正化による運動性能の向上です。
これまで、GT-Rの市販車同様だったエンジンの搭載位置を、エンジンをドライサンプ化してオイルパンを薄型化することで、約150mm低下。重力物であるプロペラシャフト、ギアボックスなど、パワートレイン全体の搭載位置を下げることで、大幅な低重心化を実現しています。
また、前後重量配分の適正化を図るために、エンジンの搭載位置を約150mm車体中央に移動。重量配分の最適化も図りました。
さらに、フロントまわりの捩り剛性を高めるとともに、サスペンションも全面的に見直しを行い、低重心化、重量配分の適正化とあいまって、ドライバーの入力に的確にレスポンスする操縦性を実現しています。

2015モデルに対して、エンジン、パワートレインを低い位置に搭載。さらに、エンジン搭載位置を後退させることで低重心化と前後の重量配分の最適化を実現。

Aerodynamic Performance 気流を制御するために。

NISSAN GT-R NISMO GT3 2018-Specのエアロダイナミクスは、車両の安定性確保と、冷却性能の向上をテーマとして開発されました。 サスペンションの設定を全面的に見直すことで、車両の姿勢変化を抑制。サーキットでのセッティング変更による車高の変化などに影響されない、安定したダウンフォースの確保を可能としました。
また、エンジンの搭載位置を運転席に寄せることにより生まれた、エンジンルーム前方の空間を利用して、ラジエターとインタークーラーのレイアウトも変更。スムーズに空気を導入できる理想的な位置に配置し、同時に車両のエアインテーク、エアアウトレットのレイアウトも変更して、冷却効率を大きく向上させました。
これらエンジンルーム内のエアフローの最適化は、高速域での走行安定性向上にも貢献しています。

NISMO GT3 2018-Spec Aerodynamics ラジエター、インタークーラーの配置を最適化するとともに、エンジンルームのエアフローを改善し、ドラッグを軽減。

Driving Comfort 目指したのは、快適さと扱いやすさの向上。

NISSAN GT-R NISMO GT3 2018-Specは、居住性と操作性の向上を目指してコックピットも一新しました。シートは、前方視界を維持したまま、より低くポジションを変更。車両の低重心化に貢献しています。
また、革新的なドライバー クーリングシステムをオプションで装着可能。コックピット内を冷やすのではなく、ヘルメットとシートに冷風をダイレクトに送ることで、レース中のドライバーのコンデションをベストに保ちます。
また、ステアリングホイールのデザインを見直した上、センターコンソールのスイッチパネルもレイアウトを一新。さらに操作性を向上しています。

①スイッチ類のレイアウトを改良。より扱いやすくなったセンターコンソール ②操作性を向上したステアリングホイール ③シートをより低くマウントし、視界を損なうことなく車両の低重心化に貢献。

Specifications

DIMENSIONS エンジン型式 VR38DETT
総排気量 3,799cc
最高出力 405kw以上/6,500rpm(550ps以上/6,500rpm)*
最大トルク 637N・m以上/5,000rpm(65.0kgf・m以上/5,000rpm)*
全長 4,832mm
全幅 2,036mm
ホイールベース 2,817mm
トレッド(前) 1,690mm
トレッド(後) 1,700mm
重量 1,285kg *
駆動方式 2WD(FR)
POWER TRAIN クラッチディスク 5.5"メタル4プレート
トランスミッション 6速シーケンシャル
BRAKE Fr 6ピストンキャリパー/
ベンチレーテッドスチールディスクおよびパッド
Rr 4ピストンキャリパー/
ベンチレーテッドスチールディスクおよびパッド
SUSPENSION Fr 独立懸架ダブルウィッシュボーン式
Rr 独立懸架ダブルウィッシュボーン式
TIRES Fr 330/710-18
Rr 330/710-18
WHEELS Fr 13.0J×18
Rr 13.0J×18

FIA Homologation No.:GT3-048?NISSAN GT-R NISMO GT3 2018
*主催者等が決定するBoP(Balance of Performance/性能調整)による変動あり。

2018-Spec開発ドライバー インタビュー 2018-Spec Development ~速くて、安定していて、しかも、楽しいマシン。

私は、NISSAN GT-R NISMO GT3の開発ドライバーとして、日本のサーキットはもちろん、ドイツのニュルブルクリンクも走り込んで、車両開発をしてきました。まず、2018-Specの何が変わったのかというところからお話します。これは、ニュルブルクリンクのコースで特に実感したことですが、ハイスピードコーナーの安定性が大きく向上しています。
240km/hオーバーのコーナーでも、ダウンフォースが効いてグリップするから、安心感がある。この進化は大きいです。また、これまでのモデルでは、ミッドコーナーで少しアンダーステアが出る傾向がありましたが、2018-Specはとてもクイックでシャープになり、ドライバビリティが大きく向上しました。さらに、トラフィックの中で、オフラインを走る時の安定性も良くなっていますが、これらは、車両の低重心化の効果が発揮されている部分だと思います。それから、トラクションコントロールもパフォーマンスが上がりました。特にタイトコーナーですごくいい。乗りやすいし、自信を持ってアクセルを踏み込むことができます。また、車両のセッティング変更に対する反応もさらに良くなっていますから、ドライバーの要望にエンジニアが的確に応えることができます。

一方で、今までのNISMO GT3の美点である、ドライバーへのやさしさ。つまり、どんなドライバーが乗っても楽に走れて、もし限界を超えてもリカバリーが効くという性格は、きちんと維持しています。NISMOは「速いクルマは、扱いやすく、ドライビングが楽しい」という思想に基づいて車両を開発しています。
市販レーシングマシンですから、NISMO GT3には様々なレベルのドライバーが乗られます。オーバーステア傾向のハンドリングで速い方もいれば、アンダーステア傾向が好きな方もいる。だから、私たちは、どんなドライビングスタイルのドライバーが乗っても、扱いやすくて速く走れるクルマになるように、時間をかけてNISMO GT3 2018-Specを開発してきました。一言で言えば「速くて、安定していて、そして本当にドライブが楽しいクルマ」。
それが、NISMO GT3 2018-Specです。
あなたも、このマシンで思う存分レースを楽しんでください。

Michael Krumm:ミハエル・クルム NISSAN GT-R NISMO GT3 2018-Spec 開発ドライバー

日産ドライバーとしてFIA GT1世界選手権のドライバーチャンピオンをはじめ、長年SUPER GT、FIA GT等数々のレースへ参戦し数々のタイトルに貢献。特にその高い開発能力で、エンジニアに貴重なフィードバックを送りチームに貢献した。
NISSAN GT-R ニュルブルクリンクアタックで、当時量産車最速である7:08.679のタイムを打ち立てた。
NISMO GT3 2018-Spec 開発ドライバーとして、初期段階からプロジェクトに参画し車両の進化に大きく貢献してきた。