後半戦のタイトル争いに大きな影響のある伝統の鈴鹿1000キロで、12号車(カルソニックIMPUL GT-R)は3位表彰台を獲得し、一歩抜きんでてランキングトップに立ち、タイトルへの地歩を固めた。昨年は中盤までポイント上位に居たが第6戦として行われた鈴1000で2ポイントに終わり、それが第7戦タイでの活躍にも拘らず最終戦でタイトルを逸する前兆となっていた。

いつタイトルを獲ってもおかしくないTEAM IMPULはいつも惜しいところで逸してきた。しかし今年期待を集めている理由の一つは、J. P. デ・オリベイラ選手が大きな成長を遂げたことである。もともと速さについては定評があるが他車との接触や無用なスピンが多く、肝心なところでポイントを失ってきた。しかし今年は名伯楽星野監督の指導で落ち着いたレースが出来るようになった。「お前に言われたくないよ」と怒られそうだが、星野監督の現役時代もJPと共通するところがあった。だからJPの心の在り様を最も知り得ている星野監督の「自分で変わらないと他人からは変えられないよ」という徹底した姿勢がJPの変化をもたらしたと言える。鈴1000でも路面状況やライバルとの位置関係、自分のクルマの状況に合わせながら速さも維持し今回の結果をもたらした。カテゴリーを問わずこれからのJPの活躍が期待される。

安田選手も今回は進歩を見せた。「Q1はJPで8位だったのを、自分が担当したQ2で5位に引き上げた」と自慢げにツイートしていたが、この自信こそ成長の証でもある。実はレース中に飛び石でラジエーターに穴が開き水漏れでエンジンはオーバーヒートしていた。しかし序盤雨だったので路面がダーティで、かつ1000キロ故にタイヤカスも多くそれらがラジエーターに付着して水漏れを徐々に止める方向になり、影響を最小にしてくれた。安田選手のスティントでオーバーヒートが始まったが、ラップタイムに影響の少ないストレートでのペースダウンを織り交ぜながらエンジンを労わり、水漏れが最小になるまで持たしてJPに引き継いだ。幸運もあるが簡単に諦めない姿勢がこの結果につながったわけである。

46号車(S Road MOLA GT-R)は目まぐるしく変わる天候に翻弄されることなく上手に対応した。チームとって長いレースでの6位はこれからのレースに大きな自信をもたらしたと考えている。

1号車(MOTUL AUTECH GT-R)はロニー選手が新記録のポールポジションを獲得したが、レース序盤の松田選手のスピンが全てである。当日ウエットでは乗っていないとかタイヤのウオームアップが遅かったとかいろいろ悪条件が重なったが、複数回の全日本チャンピオン経験者なのでどんなコンディションであろうと2度と同じことはないと信じている。ラップタイムを整理すると、勝った36号車に一つのスティントだけ劣っていたから速さは十分にあったし、ランキングはまだまだ可能性のある4位に留まっているので、残り3戦全力を尽くす。

24号車(D'station ADVAN GT-R)は同じタイヤを履く19号車に比較して遅かったが、ウエイト差だけではなさそうなので原因を究明し次戦以降に臨む。

ライバルながら36号車は昨年に引き続き完璧なレースをして勝った。昨年はセイフティカーが入らない条件での4ピットストップ作戦がうまくはまったが、今年は2回のセイフティカーに上手に対応して2連勝を果たし、ランキング3位に浮上した。やはりタイトル争いの強敵として意識して行きたい。

難しいレースで重ハンディながら表彰台を獲得した12号車のJPと安田、チームスタッフに☆3つ。ロニーの驚異のポール走りに☆3つ。そして「敵に塩を送り、実を取る」作戦で36号車にも☆3つ。

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