Inside the GT-R LM NISMO Engine
GT-R LM NISMO:エンジンの内側

ジュリアン・プレ  MOTUL 次席チーフプロダクトオフィサー
Nissan GT-R LM NISMOの心臓部には、約550馬力を発生するエンジンが搭載されています。

ウィリアム・ウェイ エンジンプログラムマネジャー
このエンジンは6000キロの走行に耐えるよう設計されていますが、私たちは耐久テストで8000キロ走行相当の負荷をかけ、問題点などをチェックしました。

プレ
MOTULはNISMOのパートナーとして、マシンの能力を100%出せるよう、オイル類の開発を進めています。エンジンオイルはエンジンを機能させ続けるために非常に重要です。出力アップや耐久性・効率性の向上、そしてエンジン自体を保護する役割も持っています。

ウェイ
ル・マンは世界でも屈指の厳しさを誇るコースです。24時間走り続けなければならず、エンジンにとっても最も過酷な条件下で戦うことになります。

プレ
ル・マンではエンジンはアクセル全開の状態がほぼ24時間続くことになります。

ベン・ボウルビー テクニカルダイレクター/チーム監督
それはまるで、ニューヨークからロサンゼルスまで一気にクルマで移動するようなもので、信じられないほどの長距離を、24時間という短時間で走りきることを意味します。

プレ
その間、常に戦い続けるためにオイル類は不可欠です。

ウェイ
エンジンオイルは非常に薄い油膜ながら、燃焼時の圧力をうけながらエンジンを守らなければならず、高い性能が要求されます。

プレ
まずオイルが果たす役目は、効率性の追求です。金属同士の接触をできるだけ減らし、エンジン内部の摩擦や摩耗を低減することです。

ウェイ
オイル類は摩擦をできるだけ減らすことが大変重要です。摩擦が増えてしまうと、エンジン出力が落ち、オーバーヒートの原因にもなります。

プレ
エンジンオイルはシリンダーとピストンのすき間を埋めて密閉する役目も持ち、エンジンの出力を最大限引き出します。

ウェイ
ピストンは300℃以上の高温にさらされ、大きな負荷がかかります。

プレ
ここでエンジンオイルは冷却剤としても機能しています。ル・マンに向けた万全のオイルを開発するには、あらゆる側面から研究を重ねなければなりません。

特に注意しなければならないのは、オイルの粘度です。どのエンジンにも最適な粘度というものがあります。オイルの粘度が低すぎると、金属部品が直接触れたりすることで、部品の摩擦や摩耗が起こりやすくなり、エンジンの故障につながります。オイルの粘度が高すぎる、すなわちオイルの膜が厚すぎると、オイルが機関内部にいきわたるのに時間とエネルギーを要します。つまり、燃費の悪化と出力も低下につながります。

ウェイ
オイルも24時間レースを走り続けなければなりません。

プレ
24時間、部品同士の接触を防ぎ続けること。オイルが薄くなりすぎないように、高分子材を採用することも肝となります。ほかに重要な指標としては、オイル温度とその消費度合いです。チームからは、油圧、オイルの消費度合い、部品の検査結果などキーとなる情報を提供してもらっています。

ウェイ
得られるデータをもとに、エンジンがちゃんと機能しているか、不具合がないかどうかチェックできます。

プレ
私たちの目標は、SUPER GTやル・マンで学んだことを市販の NISMOロードカーに活かすこと。MOTULの開発したオイルを用いて、ニスモは2003年からレースで勝利を重ねてきました。

ル・マンでもNissan GT-R LM NISMOがこれまでと同様に成功を収められればと願っています。