OMORI FACTORY NEWS

2010.5.25
44万キロ走破のRBエンジン。その中身は!? Vol.2

皆さん、こんにちは。エンジンメカニックの小坂です。
44万キロ走破のRBエンジンVol.2編です。いよいよエンジン本体の中身をチェックしてみましょう!

ロッカーカバーを外してひと言。「すごくキレイ!」。
通常、8万キロも走るとカムなどはスラッジで真っ黒になってしまうのですが、リフレッシュ後27万キロを 経過したエンジンとは思えない状態を保っています。これは定期的なオイル交換を実施されていたことと、 使用されていたオイルの選定が良かった結果と言えます。オイルの選定を誤るとスラッジをオイルが吸着しきれずに 定期的にオイル交換を行なってもスラッジで真っ黒になる事が多いからです。
ちなみに、タペットクリアランスとバルブの気密性を計測したところ、INT側はほとんど問題のないレベルでしたが、 EXH側は少し気になる数値となっていました。高回転域を多用するとINT側のタペットクリアランスが狂いやすくなるのですが、 そうした症状は見当たりませんでした。

RB ENGINE

↑非常にキレイ。スラッジの堆積がない。

RB ENGINE

↑スラッジ堆積例。オイル選定を間違うと汚れがひどくなる。

 

一方、EXH側はバルブシート部のカーボン堆積が気密性低下の要因となっています。距離が延びるとカーボンの堆積は 仕方のない事ですが、ある程度エンジンを回してあげるとカーボン堆積を抑制することが可能です。余談ですが、 リフレッシュ時にバルブガイドにガタが出ていたのでガイドをGTレース車両にも使用しているリン青銅製に交換 していたのですが、ガタなども出ておらず、さすがレース用パーツと感心した次第です。

RB ENGINE

↑左がINT側で右がEXH側。EXH側のカーボン堆積が顕著。

RB ENGINE

↑リン青銅製に交換したバルブガイド。ガタなし。

 

ちなみに、ヘッドボルトやカムキャップボルトなどは、通常、10万キロを超えると水蒸気などによりサビて固着 しやすいのですが、サビや固着もなく非常に取り外しやすかったです。リフレッシュ時にオイルをまんべんなく 丁寧に塗布しておいたのが一因ですね。

RB ENGINE

↑ヘッドボルト

RB ENGINE

↑カムキャップボルト

 

通常、10万キロが交換時期とされるピストンリングですが、トップリングは全面が減っており要交換レベル。 これは吹き抜けの原因となります。またセカンドリングも2/3程度が減っておりオイル上がりの原因となる一歩手前です。
また、ピストン側面にカーボンが付着しているのも特徴です。RBエンジンは苛酷な状況下での使用にも耐えられるよう、 あえてピストンクリアランスを大きめにとってあります。ゆえにある程度エンジンを回して熱膨張させないと吹き抜けにより カーボンがピストン側面にまで付着してしまうのです。熱膨張が足りないため、ピストンが首振りをしてしまいピストン上部の カーボンが削り取られているのが見てとれます。

RB ENGINE

↑ピストン側面までカーボンが付着。熱膨張不足が原因。

RB ENGINE

↑首振りにより、ピストン上部のカーボンが削り取られている。

 

クランクプーリーはリフレッシュ時に新品に交換していますが距離が延びたので経年劣化しており、衝撃吸収の役割を果たす ゴムダンパーの亀裂が目立っています。ゴムダンパーの劣化が共振を生んでしまい、メタルの磨耗を早める可能性が高くなります。 通常は、タイミングベルト交換時に新品に交換しておきましょう。

RB ENGINE

↑クランクプーリー

RB ENGINE

↑ゴムダンパーに亀裂。共振を生みメタルに影響を与える。

 

コンロッドメタルは全体的に磨耗していますが、3番メタルが一番激しく磨耗しています。クランクシャフトメタルはほとんど磨耗 していない箇所もありますが、クランクプーリーのゴムダンパー劣化によるクランクシャフトメタルの磨耗などが確認されました。 メタルも通常は10万キロで磨耗が生じます。

RB ENGINE

↑全体的に磨耗しているコンロッドメタル。

RB ENGINE

↑磨耗の激しい3番コンロッドメタル。

 
RB ENGINE

↑ほとんど磨耗していなものもあったクランクシャフトメタル。

RB ENGINE

↑クランクプーリー劣化により磨耗したクランクシャフトメタル。

 

その他、オイルポンプではブーストアップなどによりクラックが入りやすいクランクとの駆動用勘合部の磨耗はなく、 シリンダー内部にはキズなどもなくキレイに磨耗していました。カム山やクランクシャフトの曲がり、各部のクリアランスや磨耗、 ガタに関してもほとんど問題のないレベルであり、特に異常は見当たりませんでした。

RB ENGINE

↑オイルポンプ勘合部。クラックなし。

RB ENGINE

↑シリンダー内のキズなし。

 

今回、エンジンをバラして改めて感じたのは、RBエンジンの耐久性の高さです。チューニングレベルや乗り方にも大きく左右されますが、 使い方次第では44万キロ走破でも全く問題がないということが分かりました。もちろん、定期的に交換を必用とする消耗品はありますが、 ブロックやピストン、コンロッドなど主パーツは44万キロ無交換となっています。
自分なりに分析した結果、RBエンジンの性能を損なうことなく長期にわたって愛用するためには、
?@ ちょい乗りをしない(一度、エンジンに火を入れたら、ある程度の距離を必ず走行する)。
?A オイル管理をしっかりする(交換頻度だけでなく、オイルの選定も重要なポイント)。
?B 適度に高回転域も使用する。
という点が挙げられます。特別な要素ではありませんが、こうした基本的な要素がエンジンを長持ちさせる秘訣です。

大森ファクトリーでは、名機と呼ばれるRBエンジンにひとりでも多くのお客さまにご愛用いただけるよう、エンジンリフレッシュメニューに加え、 お客さまのエンジンにあった最適なメンテナンス、チューニングをご提案いたします。エンジンに関して、何か気になる事があれば、お気軽にご相談ください。

以上、小坂レポートでした。

 
KOSAKA

Reported by 小坂
(OMORI FACTORY)