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S耐をターゲットにしたコンプリートレーシングカー発売

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2007年 FAIRLADY Z Version NISMO Type 380RS-Competition(Z33型)

 2007年1月、NISMOはスーパー耐久シリーズST-1クラスに代表されるプロダクションレースに参戦するプライベーター向けのコンプリートレーシングカーを発売した。FAIRLADY Z Version NISMO Type 380RS-Competition(以下、380RS-C)である。

 380RS-Cの最大のセールスポイントはそのエンジン。量産車に搭載された当時の新型VQ35HRエンジンをベースに、ストロークを7㎜アップし、排気量を3.8ℓ(3798㏄)にまで拡大した専用エンジン。さらにこのエンジンをスーパー耐久シリーズST-1クラスの規則に合わせて、最高出力400ps以上にチューニングした。エンジンの制御システムはMOTEC社製のECMを使用。6速クロスミッションを組み合わせ、強化クラッチやカーボンL.S.D.も搭載していた。さらにフロントブレーキにはBrembo社製6POTキャリパーとφ380㎜の大径ローターを装着。外装関係ではドアやボンネットはカーボン製とし、左右ドアとバックドアのガラスはポリカーボネイド製に変更され車体の軽量化が施された。一方、レース用装備としてロールケージ、バケットシート、フルハーネスベルト、消火器、カットオフスイッチなどの安全整備のほか、95ℓのレース用安全燃料タンクなども装備。380RS-Cを購入し、タイヤ&ホイールを装着すれば、即実戦参加が可能というフルコンプリートのレーシングカーだった。価格は2,625万円(当時の消費税込み)。デビューイヤーの2007年にはシリーズタイトルを獲得した。

 翌2008年には、スーパー耐久シリーズの規則変更に伴い、触媒を装着。ロールケージやリアウイングの形状を見直した2008年モデルにアップデートされた。

2011年 NISSAN FAIRLADY Z NISMO RC(Z34型)

 2008年12月、フェアレディZはフルモデルチェンジしてZ33型からZ34型になった。エンジンは336psの3.7ℓV型6気筒のVQ37VHRにアップデートされた。そして、2011年10月にNISMOはZ34型フェアレディZをベースにしたコンプリートレーシングカー NISSAN FAIRLADY Z NISMO RC(以下、Z34-RC)を発表した。車名の“RC”とは、レーシング・コンペティションを意味するものだ。

 先代の380RS-Cはスーパー耐久シリーズのST-1クラスで総合優勝を狙うことを目標としていたが、今回のZ34-RCはST-3クラスに参加するカスタマーチームがクラス優勝を狙えるポテンシャルを目標とした。

 ST-3クラスは、排気量が2401㏄~-3500ccの後輪駆動車で争われ、改造内容もST-1クラスよりも狭く、より生産車に近いレースカーのクラスだ。排気量が3.7ℓの新型フェアレディZは、ウエイトハンデを搭載するなどの条件で特認車両としてST-3クラスのへの参加が認められた。

 Z34-RCは、355ps以上までファインチューニングが施されたVQ37VHRエンジンを搭載。ブレーキは前後ともにBrembo社製のキャリパーを装着し、ローターはフロントがφ355㎜、リアがφ345㎜と拡大された。そのほか安全装備なども含めた内容は、ほぼ380RS-Cと同様。ただし大きく異なったのは、アルミ鍛造1ピースホイールとスリックタイヤまで標準装備したこと。つまり、Z34-RCを購入すればそのままスーパー耐久に参戦可能なパッケージだった。価格は1,312万5,000円(当時の消費税込)。さらにより安価なパーツレス仕様(1,102万5,000円)も設定された。

 Z34-RCは2014年にチャンピオンを獲得し、シリーズランキング1位から4位まで独占。翌2015年もチャンピオンを獲得するなど、高いポテンシャルを見せつけた。

2011年 NISSAN GT-R NISMO RC(R35型)

 2007年、第3世代となるR35型NISSAN GT-Rが発売された。3.8ℓV型6気筒ツインターボエンジンに電子制御4WDシステムを搭載した新世代のGT-Rである。かつて、RB26DETTを搭載した第2世代のGT-Rは、スーパー耐久およびその前身であるN1耐久時代から、このレースシリーズの王者として君臨してきた。となれば、新世代のR35 GT-Rもスーパー耐久シリーズでの活躍をファンならずとも大きな期待を寄せていた。

 R35 GT-Rの市販車ベースのレースカーが脚光を浴びたのは2008年の十勝24時間レースだった。この時は、NISMOオイルをはじめとしたNISMOオプションパーツの耐久テストを兼ねた参戦で、マシンのスペックも極めて市販車に近い内容だった。

 2010年、本格的にスーパー耐久第4戦に参戦し、目まぐるしく変わる天候に翻弄され総合8位でゴール。しかし、公式練習からベストタイムを出すなど速さを見せていた。この時、エントリー名も「NISSAN GT-R NISMO RC」とされていた。さらに第5戦にも参戦。この2戦はいわゆるテスト参戦で、この結果を踏まえてゴーサインが出され2011年1月に、NISSAN GT-R NISMO RCの発売がはじまった。価格は2,079万円(当時の消費税込)。

 しかし、この2011年にスーパー耐久シリーズを取り巻く環境が大きく変わり、FIA GT3クラスが新設されるなど、様々な理由から短期間で販売終了。FIA GT3仕様のNISSAN GT-R NISMO GT3に活躍の場を譲ることになった。スーパー耐久シリーズへの参戦は2戦、記録は残せなかったが、NISSAN GT-R NISMO RCは、4WDシステムもそのまま搭載したR35 GT-R唯一の市販車ベースのレースカーとして、ファンの記憶に残るレースカーとなった。

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