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トップカテゴリーで通用するコンプリートレーシングカーの発売

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550ps以上のグループA コンプリートカーを5,500万円で発売

 1990年3月の全日本ツーリングカー選手権シリーズ第1戦にデビュー以降、破竹の勢いで連勝街道を驀進したBNR32型スカイラインGT-RグループA仕様。そんな1991年、ある刺激的な広告が自動車雑誌に掲載され、GT-Rファンが騒然となった。

「超高性能レーシングカーを持つ、贅沢。ニスモよりグループAフルスペック仕様車発売」
 刺激的なコピーとともに記されたスペックには“最高出力550ps以上”とあった。

 

 今でこそ、R35 型NISSAN GT-R NISMOは600psをカタログで謳っているが、1990年当時は500ps以上を誇るロードカーはごく一部のスーパーカーのみ。ところがそれを上回るパワーと最新の4WDシステムを持つスカイラインGT-RグループA仕様が、5,500万円で手に入るとなれば、GT-Rファンならずともじっとしてはいられなかった。

 この広告が掲載されるや否や、NISMOには問合せの電話が殺到した。つまり、多くのファンは、公道も走れる超・高性能なロードモデルだと勘違いしたのである。問合せの大半は「公道を走れるのか」「カタログはあるのか」といった内容だった。

 しかし、実際には純然たるレーシングカーであり、日本の公道を走ることは出来なかった。

 一方、カタログは非常にシンプルなものが準備され、広告に使われた車両のボディカラーが赤であったことも、ロードカーを想起させた要因であったかもしれない。一般的にこうした競技専用のベース車両は、後にスポンサーカラーに変更し易い白いボディカラーが常識だったからだ。

 販売されたGT-RグループA仕様の第1号車は1991年のレースシリーズから参戦するタイサンKLEPPER GT-Rだった。そして2号車はHKS SKYLINE。1991年シーズンは国内レースシリーズには参戦せず、マカオのみ参戦し6位でフィニッシュ。1992年から国内シリーズに本格参戦した。

 一方、カタログや広告に使用された赤いGT-Rは1991年のグループAによるスパ24時間レース参戦のためのテスト車として使用された。その後、若手ドライバー育成のために1991年第3戦レース・ド・ニッポンと第4戦ハイランドグループA300㎞レースにスポット参戦したザウルスチャンプGT-Rニスモとして使用された。

 このグループA仕様GT-R発売時の大きな反響は、後にR33 GT-RベースのNISMO 400Rや、R34 GT-RベースのNISMO R34 GT-R Z-tuneといったハイスペックコンプリートカー発売を後押しした要因のひとつでもあった。

 車両は、当時のNISMO本社でグループAを担当するメカニック達の手で仕上げられた。

グローバルに展開するFIA GT3仕様をコンプリート

 1991年にグループA仕様のスカイラインGT-Rを発売したNISMO。あれから30年の時を経て、2012年にはR35型NISSAN GT-Rをベースにした、世界のトップカテゴリーで戦える競技専用車両をNISMOはリリースした。

 

 21世紀を迎えると、ハイアマチュアやジェントルマンと呼ばれるドライバーが増えた。彼らを受け入れるため、FIAはGT3というレースカテゴリーを生んだ。近年は、このFIA GT3というカテゴリーが世界のツーリングカーレースの中心になりつつある。

 グループAと大きく異なるのは、参加チームやドライバーがマシンを改造できないこと。つまり、メーカーが開発したコンプリートレーシングカーを購入し、ほぼストックの状態でレースを行なわなければならないのだ。ただし、ウイングの角度やダンパーの調整など、ごく限られた範囲の、いわゆるセッティング変更は許されている。

 NISMOはこの世界的なトレンドに注目し、2012年1月にR35 GT-Rをベースとした初のFIA GT3仕様の「NISSAN GT-R NISMO GT3(2012年モデル)」を発売した。搭載するエンジンはR35 GT-RのVR38DETTを530ps以上にチューニング。トランスミッションは6速シーケンシャルミッション、セミオートマチックパドルシフト、ステアリングアジャスト機能を標準採用していた。 そして駆動方式はFIA規則により後輪駆動、つまりFRに変更。ボディは生産車をベースに改造。国内のSUPER GT GT500クラスに参戦するマシンに比べ、生産車に近いスペックである。もちろん、グローバルに販売され、その車両本体価格は3,200万円(日本国内)。「NISSAN GT-R NISMO GT3」は、初年度から国内のSUPER GT(GT300クラス)やスーパー耐久(ST-Xクラス)、海外でもイギリスGT選手権やイギリスGTカップで勝利を収め高い実力を見せた。

 日本、欧州、アメリカ、中国、オーストラリアなど、世界各地のカスタマーに販売された「NISSAN GT-R NISMO GT3」は、FIA GT3の規則にのっとりアップデートを繰り返し、現在に至っている。

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