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NISSAN GT-R NISMOのオプション NISMO N Attack Package

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 2007年に衝撃のデビューをしたR35型NISSAN GT-R(R35GT-R)は、毎年のように進化を続け、そのパフォーマンスをアップデートしていた。そして2014年モデルでは大きな変化があった。標準仕様のR35GT-Rは、GTカーとして高品質な走りと内装を持った仕様となり、新たに「GT-R NISMO」というグレードを追加し、2007年の初登場以来、R35GT-Rのパフォーマンスを確認する指標としてきたドイツ・ニュルブルクリンクサーキットのラップタイム短縮は「GT-R NISMO」に託された。

 2013年9月30日。ニュルブルクリンクにおいて、R35GT-Rは「7分8秒679」というそれまで自身が刻んできたベストラップを一気に10秒以上も短縮。同時に量産車最速タイム(当時)を記録した。複雑な迷彩模様で偽装されたその車両こそ、発売直前のGT-R NISMOだった。

 同年11月のマイナーチェンジで、標準仕様の2014年モデルと同時に新たなグレードとしてGT-R NISMOが正式に発表された。横浜の日産グローバル本社ギャラリーで行なわれた発表会には、市販モデルと偽装されたニュルブルクリンク・タイムアタックマシンが展示されていた。同時にニュルブルクリンクのラップタイムを塗り替えたアタックマシンには、「GT-R NISMO専用オプションパック」が装着されていたことを発表。さらに、その専用オプションパッケージは開発車両用の特別な装備ではなく、実際に市販されることもアナウンスされた。

 2014年7月23日。専用オプションパッケージは、「NISMO N Attack Package」として正式にNISMOから発売された。名称の“N”は、もちろんニュルブルクリンクに由来する。その内容、販売方法は、今までの国産車の常識を破るものとして注目された。

 開発は、ミハエル・クルムを筆頭としたドライバー陣、日産自動車、そしてNISMOのエンジニア、メカニックで編成されたチーム。GT-R NISMOを開発すると同時に、この「NISMO N Attack Package」の開発にも当たった。エアロパーツやサスペンションなどの設計、シミュレーション、風洞実験は日産とNISMOで行なわれた。

 「NISMO N Attack Package」は、ベースとなるGT-R NISMOにパーツキットを装着することで、実際にニュルブルクリンクでタイムアタックに挑んだ車両を忠実に再現できる。超高速コーナリングと峠道という両方の側面を持つニュルブルクリンクを制するため、より強力なダウンフォースを追求した空力パーツ、アンジュレーションに富み、激しいアップダウンが続く路面に追従するサスペンション、強力なGが続くコーナリング中でもドライバーを支えるカーボン製フルバケットシートなどの数々のパーツを開発した。

 キットは2種類があった。フルスペックの「A kit」は、リヤシートを撤去し定員2名乗車となるため構造変更届けが必要となる仕様。「B kit」は、外観は「A kit」と同じで、日常での使い勝手を考慮した4シーター仕様となっていた。

 「A kit」「B kit」ともに採用されたレーシングスペックに近い減衰力調整式4WAYショックアブソーバーはオーリンズ社製。ロール剛性可変式の専用スタビライザー、摩擦材変更品の専用フロントブレーキパッドも合わせて採用。さらに、インテリアでは「A kit」に標準装備、「B kit」ではオプション設定の専用バケットシートは、レカロ社製のカーボンシェルタイプなど、世界の一流パーツを採用した。

 SUPER GTに代表されるNISMOのレーシングテクノロジーから生まれたエアロパーツは、風洞実験と実車走行を繰り返し鍛え上げられた。専用カーボンフロントフェンダーはダウンフォースを生み出すフリック付き。フロントリップを延長する形状のゴム製の専用アドオンスポイラーを追加。そして、「NISMO N Attack Package」を象徴する専用カーボンリヤウイングは、ウイング本体をドライカーボン製とし、脚部はアルミ製+ドライカーボン製カバーを採用。2段階の高さ調整と12段階の角度調整機能が付加された。

 さらに機能部品としては、「A kit」にカーボン製専用インタークーラーパイピング、専用フロントLSD(機械式1.5WAY)、専用リヤLSD(機械式2WAY、カーボンプレート)を採用。
「A kit」「B kit」には、特性を変更した専用ECM(エンジンコントロール)&TCM(トランスミッションコントロール)が採用された。なお、「A kit」にはメーカーオプションのチタン製マフラーが必要となる。

 これらのパーツの取り付けは、直営のNISMO PRO SHOPである「大森ファクトリー」が担当。登録済みのナンバー付き車両を大森ファクトリーに持ち込み、架装、走行テスト、構造変更(A Kitのみ)を行なった上で納車される。

 フルスペックの「A kit」の価格は、820万円(消費税抜き当時の本体価格)。部品代、組み付け費、塗装費などが含まれる。4シーターでフロントLSDなどの機能部品が装備されない「B Kit」は420万円(消費税抜き当時の本体価格)で販売された。

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