NISMOコンプリートカーからNISMOロードカーへ NISMO COMPLETE CARS & NISMO ROAD CARS

NISMOコンプリートカーからNISMOロードカーへ NISMO COMPLETE CARS & NISMO ROAD CARS

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フェアレディZ Version NISMO/フェアレディZ Version NISMO Type 380RS(2007) NISMOコンプリートカーの大きな節目

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 2007年1月、NISMOはZ33型フェアレディZをベースにした“フェアレディZ Version NISMO(以下、バージョンNISMO)と、 “フェアレディZ Version NISMO Type 380RS” というNISMOブランドを冠したロードカーが登場した。この2台は、NISMOを名のるロードカーとしては、大きな節目に登場した重要なモデルである。

 いわゆるロードカーとしてのNISMO製コンプリートカーは1994年のS14型シルビアベースの“270R”にはじまり、1996年のR33型スカイラインGT-Rベースの“400R”と続く。さらにNISMO創立20周年の2004年には、R34型スカイラインGT-Rベースの“Z-tune”、K12型マーチベースの“マーチS-tune COMPLETE、Z33型フェアレディZベースの” フェアレディZ S-tune GT“の3台のコンプリートカーをリリースした。これらは、NISMOで企画・開発・製造をしたロードカーだった。

 一方、“バージョンNISMO”は、レースフィールド・ストリートともに様々なノウハウを持つNISMOと、多くのコンプリートカスタムカーの製造実績を持つオーテックジャパン(当時)のノウハウが融合することで生まれたロードカーである。

 この“バージョンNISMO”をベースに競技専用車両として同時開発されたのが“フェアレディZ Version NISMO Type 380RS-Competition”(以下、380RS-C)である。”380RS-C “に搭載されたエンジンは、VQ35HRをベースに排気量を3.8ℓまで拡大し、レース仕様で400ps以上を可能にするハイスペックなものだった。 

 さらに、この“380RS-C”に搭載された3.8ℓ仕様のエンジンをストリート向けにデチューンし搭載したのが“フェアレディZ Version NISMO Type 380RS” (以下、380RS)なのだ。

 以前のNISMO製コンプリートカーは、少数のマニアに向けたクルマであり、チューニングカーらしい荒々しさを持っていた。一方、“バージョンNISMO”は日産自動車のカタログモデルであり、それをベースにした“380RS”は、以前のNISMO製コンプリートカーの荒々しさはなく、日産自動車のカタログモデルに近い、より洗練されたコンプリートカーとして当時、大きな話題になった。

フェアレディZ Version NISMO

 2007年、Z33型フェアレディZは、VQ35HRエンジンを搭載し、そのパフォーマンスをアップした。この時、新たに“フェアレディZ Version NISMO”というカタログモデルが加わった。レースから得られた空力特性に優れた専用のエクステリアに、各部を強化した高い剛性のボディを与え、ドライバーを刺激する専用インテリアを持った、NISMOスピリッツに溢れたスポーティグレードであった。

 最大のアピールポイントはエクステリアだ。SUPER GTに参戦するフェアレディZのGT500仕様の開発から得られた空力データをベースに、スーパーコンピュータによるシミュレーションを活用、さらに実走行テストを繰り返してデザインされた。その結果、走行安定性に優れ、効果的なダウンフォースも獲得した“バージョンNISMO”ならではのスタイリングとなった。専用開発されたのは、フロントバンパー、サイドシルプロテクター、リアバンパー、リアスポイラーである。フロントバンパーは90㎜延長され、リアバンパーも15㎜の延長仕様となっている。

 一方、優れた走りを実現するためボディの強化も行われた。モノコックの溶接面の増加と補強パネルを追加したほか、補強バーも装着し、ハイグリップなラジアルタイヤによる高い入力に耐えられる強靭なボディを与えた。とくにホワイトボディ状態での溶接面の増加や補強パネルの追加は、自動車メーカー直系のNISMOとオーテックジャパンにしかできないことだ。さらにYAMAHA製パフォーマンスダンパーをボディに前後に装着し、低湿な振動を排除した質感の高い走りを実現している。

 サスペンションに関しても、ハイグリップなタイヤと高剛性ボディの採用により全面的にリセッティングされている。ショックアブソーバー、スプリング、スタビライザーなど専用チューンすることで優れた走りを実現。

 さらにブレーキも強化した。フロントはBrembo社製のアルミ対向4POTキャリパーにφ324㎜の大径ローターを組み合わせた。リアには、同じくBrembo社製アルミ対向2POTキャリパーにφ322㎜の大径ローターを採用し、ストッピングパワーも強化した。

 インテリア関係では、ブラックを基調としたトーンでまとめられ、シートのセンター素材もパンチング加工されたアルカンターラを使用するなどプレミアム感のある仕上げとなっていた。

 “バージョンNISMO”は、6MT車が439万9,500円(当時の税込)、5AT車が449万4,000円(当時の税込)で販売された。

 また2007年には北米向けに「NISMO 350Z」のネーミングで輸出され、「NISMO」ブランドを冠したロードカーとして初めて海外で販売された記念すべきモデルとなった。

フェアレディZ Version NISMO Type 380RS

 “380RS”は、日産自動車のカタログモデルである“バージョンNISMO”をベースに300台限定で販売されたハイスペックモデルである。最大の特徴は“380RS-C”譲りの3.8ℓ仕様のVQ35HR改を搭載したことだ。

 最高出力350psを絞り出すこのエンジンには、ピストン、コンロッド、クランクシャフトなどの主要パーツはスーパー耐久のST-1クラス制覇の為に開発された“380RS-C”と同じものが採用されている。その組み立て方法にも、NISMOならではのレースエンジンのノウハウが活かされ、各部のクリアランスはエンジン内部が適正温度になった状態で、最適なクリアランスになるように組み立てられており、非常にレーシングライクなスペックを持っていた。

 一方、ボディやサスペンション、ブレーキなどは“バージョンNISMO”と共通。インテリアは、“380RS”専用のデザイン。ブラックを基調とするもステアリングやシフトノブ、パーキングブレーキレバーにレッド系の本革素材を採用したもので、レッドの差し色を各部に取り入れている。

 “380RS”は539万7,000円(当時の税込)、300台限定で販売。サーキット走行を楽しむユーザーなどには絶大な人気を誇ったスペシャルなフェアレディZだった。

 このように、“バージョンNISMO”と“380RS”は、企画・開発・製造・販売を日産自動車、ニッサン・モータースポーツ・インターナショナル(当時)、オーテックジャパン(当時)のコラボによって実現したコンプリートカーである。このスキームは、現在のNISMOロードカーシリーズにつながっており、まさにNISMOロードカーの礎となった1台である。

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