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1996年に発売したNISMO 400R以降、NISMO製コンプリートカーはしばらく登場しなかった。世間では270psの270R、400psの400Rと登場したからには、次は500psの500Rが登場するに違いないと期待する声は大きかった。しかし400R以降、NISMOは沈黙を続けていた。じつは、コンプリートカー開発には人員とコストの負担が大きい。その間、基幹業務ともいえるストリートパーツビジネスに影響が出ることは必至だった。
1999年にはスカイラインGT-Rが、BNR34型にフルモデルチェンジした。R34 GT-Rに対しては、NISMOはデビューと同時に様々なチューニングパーツを展開した。
コンプリートカー開発の転機が訪れたのは、2000年暮れのNISMOフェスティバルだった。このイベントとしてははじめてとなる、チューニングカーによるアトラクション「チューニングカーバトル」が行なわれることになり、NISMOはR34 GT-Rをベースにした「Z-tuneプロトタイプ」をエントリーさせたのだ。全国の著名チューニングショップが集まり、自慢のデモカーによるバトルである。このチューニングカーバトルでE・コマスのドライブによるZ-tuneプロトは並み居る有名チューナーたちのデモカー相手に見事優勝した。
「Z-tune」とは、ロードゴーイングカーとして世界トップクラスの速さと耐久性を目標に進化し続けるチューニングコンセプト。クルマの総合バランスを考えつつNISMOの考える究極のストリートチューニングである。
そして「Z-tuneプロトタイプ」はクルマとしてZ-tuneコンセプトを具現化したものだった。エンジンは600ps以上を発揮する2.8ℓ仕様のZ1エンジン。室内も余計なモノは省かれサーキット走行に徹したもので、レーシングカーに近い仕上がりだった。
その後、「Z-tuneプロトタイプ」はアップデートされ、2001年のNISMOフェスティバルでは、エンジンは500ps以上のZ2に進化。インテリアなども本革が各部に採用され、ロールバーには本革仕様のロールバーパッドが巻かれるなど、ロードカーを強く意識したスペックに変化した。同時に排気ガスや騒音対策など、ロードカーとして各種法規への適合も行なわれた。
その後もNISMOはメインテスターに田中哲也選手を迎え、国内のサーキットを中心に「Z-tuneプロトタイプ」の開発を進めていた。そして、2003年、NISMOは「Z-tuneプロトタイプ Ver 2003」をニュルブルクリンクに持ち込みテスト走行を行なった。この時の模様は専門誌でも紹介されGT-Rファンの間では大きな話題となった。いわゆる「Z-tuneプロトタイプ」の卒業試験であり、スペックは決定した。
その後、NISMOは創立20周年の2004年にコンプリートカーとして「Z-tune」を販売することを決定。2003年にはベースとなるR34 GT-Rの生産は終了していたため、NISMOは走行距離3万㎞以下の極上中古車をベースに「Z-tune」を作ることにした。ボディは一度、ストリップ状態にされ、スポット溶接を増すなど補強が行なわれ、生産車と同じ防錆処理が施された。500psの2.8ℓ仕様の「Z2」エンジンはもちろん、サスペンションやブレーキも当時の最高級スペックが奢られ、NISMOが培ってきた第2世代GT-Rのノウハウと技術を詰め込んだ究極コンプリートカーとして販売されたのである。
価格は1690万円。NISMO創立20周年を記念した「NISMO R34GT-R Z-tune」は最終的に19台が生産された。
NISMO R34 GT-R Z-tune Refresh Project:
01 The history of Z-tune
02 Disassembly and diagnosis
03 Assembly and testing
04 Back to the circuit
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