予選12位から怒涛の追い上げで、#1「MOTUL AUTECH GT-R」がシリーズ連覇!

予選12位からスタートした#1「MOTUL AUTECH GT-R」(松田次生/ロニー・クインタレッリ)。最終戦らしい死闘が繰り広げられる中で怒涛の追い上げを見せ、2位表彰台を獲得してシリーズ連覇を達成した。

スタート直前に強い雨が降り、それまで徐々に乾いてきていた路面が一気にウェットコンディションに戻ることになった。各車はスリックタイヤを履いてスターティンググリッドにつけていたが、グリッド上で全車がレインタイヤに履き替えて、レースはスタートした。ところが、レーススタートと同時に雨が止み日差しが差し込むようになり、路面状況が急激に変化。レース序盤は、この路面状況の変化に対応しながらレースを戦うという、ドライバーにとって非常にタフなスティントとなった。

前半スティントを担当したクインタレッリは、オープニングラップで2台をかわし10番手に浮上。さらに、3〜4周目に入り周回遅れが登場すると、これを巧みに利用する形でじわじわとポジションアップを果たし、10周目には6番手まで順位を上げていた。5番手を走る#12 GT-Rとは14秒という大きな差があったが、1周で1秒縮めるほどのハイペースで追い上げると、24周を終えたところでドライバーとタイヤ交代のためピットイン。メカニックは33秒という驚異的な速さで作業を済ませ、マシンをコースへと戻した。この素早い作業で、ピットイン前には#1 GT-Rの前のポジションにいた#12 GT-Rを逆転。後半スティントを担当する松田はアウトラップにもかかわらず後続からのプレッシャーをはねのけポジションをキープ。そして#1 GT-Rの復帰直後にクラッシュ車両が出たことでセーフティカーが導入され、レースが再開された31周目には表彰台圏内の2位までポジションアップした。さらにリスタートでトップのマシンのミスを突いて、32周目には首位にまでのぼりつめた。

ここから後続3台を含めて、息の詰まるトップ争いがレース終了間際まで続く。オーバーテイクのポイントでしっかりと後続をブロックしトップを死守。43周目にはV字コーナーで順位の入れ替えを許したが、その後はさらに攻め寄ってくる後続をはねのけ、2位でフィニッシュした。息詰まる戦いを走り切り、2位表彰台を獲得した#1 GT-Rは2年連続のシリーズチャンピオンを決めた。


#1 GT-Rドライバー 松田次生
「なんと言ってもロニーが前半頑張ってくれたし、その後のピットワークも凄かったですね。ドライバー交代やピット作業は、シーズン中ずっと練習してきたことだし、あの頑張りで僕もアウトラップで踏ん張れたと思います。後半は、ラインが1本しかなく、GT300やバックマーカーも絡んで、ヒヤヒヤすることも多く精神的にとてもタフなレースになりました。でも王者らしい、良いレースができたと思います」

#1 GT-Rドライバー ロニー・クインタレッリ
「スタート前に軽い雨が降ってくれて、ウェットスタートになったことは、私たちにとってラッキーでした。スタート前はタイヤ選択にものすごく悩んだのですが、結果的に一番良い条件で前半のレースができました。少ない雨量の時のレインタイヤを信じていたので、恵みの雨でしたね。フルプッシュできたことで、戦略的にも楽になりました。次生くんの粘り強い走りも凄かったね」

ニスモ鈴木豊監督
「勝因は、みんなの諦めない気持ちです。ロニーの頑張りもそうですし、最短のピットワークも今シーズンを象徴していると思います。メカニックたちがドラマを作ってくれたと言えるでしょう。次生のアウトラップもみんなの頑張りに応えてくれた結果だと思います。本当にNISMOらしいレースができ、チャンピオンに結びつけることができました。ファンの皆様、一年間応援ありがとうございました」


#3「B-MAX NDDP GT-R」、他車の追突でシーズンを終える

予選15位から巻き返しを誓っていた#3「B-MAX NDDP GT-R」(星野一樹/高星明誠)。スタート直前に急激に変化したコンディションを味方につけ、追い上げを開始しようとしたところで後続のマシンが追突。レースを終えることとなった。

決勝日の朝も雨が降り、完全なウェットコンディションで30分間のフリー走行がスタートした。ただし、雨の具合は強まったり弱まったりを繰り返し、コース上の水の量も1周ごとに変わるような難しい状況であった。#3 GT-Rは決勝レースに向けてマシンの具合を確認し、今シーズン最後の戦いに向けて万全の準備を進めていたが、ピットウォーク終了後ごろから天気が回復。サポートレースが行われたことでコースの路面もスリックタイヤで走行できそうなコンディションまで回復したため、通常は8分間設けられているウォームアップ走行が18分に延長されることになった。ここでも#3 GT-Rは入念に路面とタイヤの状況をチェック。決勝レースに備えた。

ところが、グリッドウォークが行われている間に再び雨が降り出し、路面は再度ウェットコンディションに変化。全車がレインタイヤに履き替えての決勝レーススタートとなった。15番手グリッドからスタートする#3 GT-Rの前半スティントを担当する星野は、フォーメーションラップで入念にタイヤを温めてレースをスタート。まだまだ集団となっている中で大きく順位アップを見込めるオープニングラップでオーバーテイクのチャンスをうかがっていたが、90度コーナーで他車からの追突に遭い、コースオフ。マシンのダメージが大きく、またグラベルにつかまってしまい、レースを終えることになった。


#3 GT-Rドライバー 星野一樹
「これから追い上げ…というところでアクシデントに遭いました。速度が全く違う状態で後ろから来たので、状況も何も分からない状態でした。今シーズン、序盤は第2戦富士で2位、タイで優勝とチャンピオンが狙えるくらい調子が良かったのですが、その後からリズムが狂ったようで中盤はすごく苦しかったです。復活を誓って、何度もミーティングを重ねて挑んだオートポリスでもう一度勝てて、最後をいい形で締めくくろうと決めていたのですが…。アップダウンの激しいシーズンでしたが、これを糧にまた来年頑張りたいと思います」

#3 GT-Rドライバー 高星明誠
「今シーズン最後のGTレースでこのような結果になり、非常に残念です。1年を通して2勝できましたが、浮き沈みの激しいシーズンでした。レースを終えて、自分自身で成長したなと感じる点もありますが、自分がどうこう言うよりも、周りの方に『高星は成長したな』と思ってもらえれば嬉しいです」

NDDP RACING 長谷見昌弘監督
「もう何も言うことができない…という結果になってしまいました。今シーズンは嬉しいレースもあり、苦しいレースもありました。ただ、年間2勝でGT-Rの強さを見せるという部分では、チーム・ドライバーともにいい仕事をしてくれたレースがありました。1年間応援ありがとうございました」