今年のレースは雨にたたられるケースが多く、真夏の3連戦の掉尾を飾る筈の鈴鹿1000キロレースもあまり暑さを感じない中で行われた。従って大きな事故もなく鈴鹿恒例となっているセイフティカーの出番がなかった。これは戦略上大きな意味があり5ピットイン作戦で走った36号車に勝利を呼び込んだ。

1000キロ、173ラップのレースでは、100リットル燃料搭載車を何回ピットインさせるかが重要な戦略となる。5ピットイン(6スティント)車は29ラップx5+28ラップ、4ピットイン(5スティント)車は35ラップx4+33ラップである。入れる燃料量やタイヤ交換の有無によって左右されるが、ピットロード走行時間や新品タイヤの温まるまでの時間を考慮すると、5ピットイン車は85秒から90秒のロスタイムが生じる。しかし燃費モードで走らなくて良いし、タイヤも短いサイクルで使えるので速く走れることになり、これだけリードするのは難しい事ではない。しかしセイフティカーが入ると前後の間隔が一気に縮まるので、このリードは無に帰する。だからセイフティカーが入るか入らないかが肝となる。過去の例から鈴1000はセイフティカーが入る可能性が極めて高いので、23号車はポイントリーダーになることを念頭にリスクの低い4ピットインを選択した。

実際のレースでも5ピットインの36号車と4ピットインのMOTUL AUTECH GT-R(23号車)は80秒から90秒の差で推移して、36号車のピットアウト直後シケインでクロスする場面もあった。しかし遂にセイフティカーの導入は無く、最後は燃リスの大きい36号車に力づくで押し切られた。

23号車は計画に従ってキッチリと4ピットイン作戦をやりきり、2位表彰台でシリーズランキング1位に躍り出た。ハンディの大きい状態で2戦連続2位を獲得し、名門NISMOの復活を予見させるものがあった。

ただ一方で、今年はS Road MOLA GT-R(46号車)にエンジントラブルが頻発しているが今回はカルソニックIMPUL GT-R(12号車)も含めて迷惑を掛けたので、耐久信頼性の面までキチンと対策が出来て初めて名門復活と言えるのだろう。

46号車は、Q1で本山選手がコースレコードを記録し、午前中ほとんど乗っていない柳田選手もQ2 4位と健闘した。速さは十分過ぎるほどあったのでエンジントラブルによるリタイヤは本当に勿体なかった。

12号車はハンディは大きいが速さがあり、堅実な走りで十分上位が狙える位置にいたが、チーム、ドライバーにミスがあり、エンジンもトラブルが出て遅れてしまった。しかし諦めないで最後まで粘り強く走り1ポイントをもぎ取り、ランキング3位に留まっているので、この1ポイントが最後に効く可能性がある。

D'Station ADVAN GT-R(24号車)はドライでの一発の速さは戻ってきたが、タイヤが壊れてはしょうがない。チームは9回ものピットインに切り替えて対応し9位を得た。GT300のB-MAX NDDP GT-R(3号車)もタイヤトラブルに泣いた。

GT500のGT-Rは今回から規則で許される権利を行使し新たなハイダウンフォース仕様を投入した。ハイダウンは初戦の岡山戦以来であったが、ドライバーの感触も良く実際に速さも安定性も大きく向上していることが分かった。

チャンピオン争いをリードして臨む残り2戦はハイダウンであり、これを力強い味方にして頑張りたい。

今回は2戦連続2位をNISMOらしい戦いで獲得した、NISMOチームスタッフ及び、松田、クインタレリ両ドライバーに☆三つ。

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