Racing GT-R HISTORY ~写真で振り返る、熱きDNAの系譜~

Vol.2

GT-R伝説のはじまり

~52勝、不滅の金字塔~

1969年2月に発売されたPGC10型スカイライン2000GT-R。車名の末尾の「R」は「Racing」を意味する。ツーリングカーレースを制するため、その心臓部には、R380の2000㏄直列6気筒4バルブDOHCを量産車用に再設計したS20型を搭載。その群を抜く高性能ぶりは、ワークス活動を休止する1972年までに49連勝を含む通算52勝という大記録を打ち立てた。

スカイラインとしては3代目にあたるC10系スカイラインがデビューしたのは1968年8月。後に「ハコスカ」の愛称で親しまれるスカイラインの登場である。先代のS54型スカイライン2000GTがレースで活躍したところから、スカイラインにはスポーティなイメージが定着しつつある時期だった。

その3代目スカイラインに、ツーリングカーレース参戦を前提にした“2000GT-R”が追加されたのは翌1969年2月のことだった。先代のS54型スカイライン2000GT-Bの後継として、同じ役割を担うことにとなる。

ロングノーズの4ドアセダンに2000㏄直列6気筒エンジンを搭載するのは先代と同じだが、S20型エンジンのシリンダーヘッドはR380と同様4バルブDOHCという、当時としては群を抜く先進的なものだった。

これに三国工業製ソレックスキャブレターを3連装し、タコ足形状のステンレス製エキゾーストマニホールド装着。点火系も国産量産車としては初となるトランジスターイグナイターを採用し、量産車の最高出力は160ps/7000rpmと圧倒的な性能を誇った。

サスペンションは、フロントがストラット、リヤがセミトレーリングアームの4輪独立懸架。ディファレンシャルにも機械式LSDを組み込んでいた。ボディもワイドタイヤが収まるように前後のフェンダーアーチを拡大。リヤフェンダーのサーフィンラインもホイールアーチでカットしているのが外観上の大きな特徴である。

さらに驚いたことに、熱線式リヤデフォッガーは廃止、ヒーターもラジオもオプションとするなど、およそレースに必要のない装備は省かれていたのだ。すなわち、GT-Rは紛れもなくレースに勝つためのホモロゲーションモデルだったのである。当時の新車価格はノーマルのスカイライン2000GTの約2倍に迫る150万円。その差の大半は超高性能エンジンのコストだったという。

このスカイライン2000GT-Rの実戦デビューは、1969年5月3日のJAFグランプリTSレースだったが、このレースは若手ドライバー育成を目的としていて、過去に実績のあるドライバーに出場資格がなく、日産が誇る日本最強のワークスドライバー勢は締め出されるかたちとなった。

そこで日産側は、有力なプライベーターにGT-Rを託しデビューウィンを目指す。ライバルは、ツーリングカーレースで旧スカイライン2000GTをしのぐ戦闘力をあらわしはじめた小型・軽量なトヨタ1600GT(RT55型)。決勝では激しいデッドヒートの末、2位でゴールしたもののトヨタのペナルティにより辛くもデビューウィンを飾った。

その後のレースは、ワークスドライバーの手により快進撃がはじまる。ライバルはトヨタ1600GTから、台頭著しいマツダのロータリー勢に変わっていた。軽量コンパクトなロータリー勢は富士スピードウェイのトップスピードに優れていたのだった。

1970年10月、スカイラインはマイナーチェンジを行ない、ホイールベースをショート化した2ドアハードトップモデルが追加された。GT-Rも運動性に優れた2ドアモデルに移行し、コーナリング性能を中心に戦闘力を強化した。

ホイールベースは4ドアセダンに対し70㎜も短縮、全長は65mm短くなり、全幅は55mm拡大、全高は15mm低い。車両重量も20kg軽くなり、そのディメンジョンからも相当な戦闘力向上が想像できた。

この2ドアハードトップのGT-Rは、予想通りレースでは圧倒的強さを発揮。後輪駆動のレースカーの挙動として、現在でも当時のワークスドライバーたちは高く評価している。弱オーバーステア特性をもったハードトップGT-Rの美しい4輪ドリフトに、多くの観客も魅了された。

一方、ライバルのマツダはカペラ、サバンナと新型車を次々に投入し、GT-R対ロータリーの戦いは激しさを増した。1972年3月の富士GC第1戦のスーパーツーリングクラスで、豪雨の中、ついに栄光の通算50勝を達成。さらに同年10月の富士GC第4戦を最後に初代スカイライン2000GT-Rでのワークス活動を休止するまでに52勝という大記録を残した。

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スカイラインGT-R『栄光の52勝』の足跡(1969-1972)

月日大会名レースクラスサーキットNo優勝
ドライバー
周回数予選順位
(タイム)
備 考
*119695.31969JAFグランプリ
レース
TSIV富士6km39篠原孝道30/308位
(2'15"58)
 
*26.29富士300kmゴールデンII
レース
セダンIII富士6km51黒沢元治20/201位
(2'12"84)
 
*38.1NETスピードカップ
レース
TSII富士6km20都平健二20/201位
(2'14"42)
 
48.24ニッサン・サンデー
レース
TIV富士6km27千代間由親20/20  
58.31富士300kmゴールデンIII
レース
セダンIII富士6km64長村瑞臣20/20  
*69.21第12回全日本ストッカー
レース
全日本TII富士4.3km3都平健二24/253位
(1'45"44)
総合3位
クラス1位
*710.11969日本グランプリ
レース
TSIV富士6km39寺西孝利20/201位
(2'10"08)
 
810.19富士ツーリストトロフィー
レース
TTIV富士6km5篠原/長村133/133  
*911.3全日本鈴鹿自動車
レース
全日本IIT鈴鹿6km17都平健二23/232位
(2'33"4)
 
1011.3富士スピード
フェスティバル
セダンIII富士6km60千代間由親16/16  
1112.14富士100kmロード
レース
 TSII富士4.3km56長村瑞臣23/23 総合5位
クラス1位
*1219701.15富士フレッシュマン
レース 第1戦
MAXITS富士4.3km11久保田洋史12/122位
(1'43"52)
総合2位
クラス1位
*131.18全日本鈴鹿300km
レース
全日本IIT鈴鹿6km16高橋国光32/355位
(2'40"5)
総合3位
クラス1位
*143.8全日本鈴鹿自動車
レース
全日本IIT鈴鹿6km79高橋国光24/251位
(2'38"3)
総合4位
クラス1位
153.15富士フレッシュマン
レース 第2戦
MAXITS富士4.3km39久保田洋史12/121位
(1'40"83)
 
*163.22第13回全日本ストッカー
レース
全日本TII富士4.3km18高橋国光25/251位
(1'38"99)
 
174.5全日本鈴鹿500kmレース TII鈴鹿 6km51箕輪真治78/845位
(2'40"3)
総合5位
クラス1位
*184.12レース・ド・ニッポン6時間 TSIII富士6km5黒沢/砂子157/1591位
(2'28"22)
総合2位
クラス1位
*195.3'70JAFグランプリレースTIV富士6km58黒沢元治20/201位
(2'07"47)
 
205.17富士フレッシュマン
レース 第3戦
MAXITS富士4.3km15塩谷俊介12/121位
(1'53"43)
総合2位
クラス1位
215.24全日本鈴鹿1000km
レース
 TII鈴鹿 6km45久保田/箕輪166/16721位
(2'41"3)
総合2位
クラス1位
*226.7全日本富士300マイル
レース
100マイルBIII富士6km11長谷見昌弘25/251位
(2'10"26)
 
*236.28第12回全日本クラブマン
レース
IITSIV筑波2km45星野一義40/403位
(1'09"32)
2ヒート制
(2位/1位)
*247.5北海道スピードウェイ
オープニングレース
スポーツ
マン
TS北海道2.610須田祐弘56/604位
(1'12"16)
総合4位
クラス1位
*257.12全日本ドライバー選手権
第4戦
TII 筑波2km18高橋国光50/501位
(1'07"51)
 
267.19ニッサン・サンデー
レース
2III富士4.3km5久保田洋史25/253位
(1'44"35)
総合3位
クラス1位
*277.26全日本富士1000km
レース
 TSIII富士4.3km54砂子/長谷見20/204位
(1'39"30)
総合2位
クラス1位
*288.23全日本鈴鹿12時間
レース
 TII鈴鹿6km25高橋/都平20/201位
(2'14"42)
 
298.23富士フレッシュマン
レース 第4戦
MAXITS富士4.3km39久保田洋史12/125位
(1'43"49)
 
309.6富士インターナショナル
200マイル
100マイルBIII富士6km18杉崎直司25/251位
(2'10"41)
 
319.27富士フレッシュマン
レース 第5戦
MAXITS富士4.3km8久保田洋史12/12 総合3位
クラス1位
3210.1日本オールスター
レース
シルバーBII富士6km22杉崎直司25/255位
(2'11"68)
 
*3311.3全日本鈴鹿自動車
レース
全日本IIT鈴鹿6km69高橋国光24/241位
(2'28"7)
 
*3411.3富士ツーリストトロフィー
レース
 IV富士6km2北野/長谷見133/133  
3511.15富士フレッシュマン
レース 第7戦
MAXITS富士4.3km40久保田洋史12/12  
*3619711.1全日本鈴鹿300km
レース
全日本IITS鈴鹿 6km2長谷見昌弘50/506位
(2'30"7)
総合2位
クラス1位
*373.7全日本鈴鹿自動車
レース
全日本IIT鈴鹿6km65黒沢元治24/253位
(2'26"6)
総合5位
H/Tデビュー
*383.21ストッカー富士300km
レース
全日本T 富士4.3km17長谷見昌弘25/251位
(1'35"15)
H/T
*394.11レース・ド・ニッポン6時間TSIII富士6km5歳森/星野158/1643位
(2'03"34)
総合3位
H/T
404.25富士GC・300kmスピード
レース
Tc-BII富士6km8久保田洋史25/251位
(1'07"30)
H/T
*415.3'71日本グランプリ
レース
T・b 富士6km6高橋国光15/151位
(2'02"25)
H/T
425.16富士フレッシュマン
レース第3戦
MAXIII富士4.3km9正谷栄邦12/121位
(1'39"61)
H/T
435.23ニッサン・オールスター
レースI
スカイライン 富士6km34河原伸光20/204位
(2'12"07)
H/T
*446.6富士GC・300マイルレースTc-BII富士6km17黒沢元治15/151位
(2'04"49)
H/T
*457.18ストッカー筑波100km
レース
全日本IIT筑波2km5長谷見昌弘70/702位
(50"16)
H/T
467.18ニッサン・オールスター
レースII
F&S 富士6km33久保田洋史20/206位
(2'09"48)
H/T
*478.22鈴鹿グレート
20ドライバーズレース
 TS鈴鹿6km29黒沢元治19/2013位
(2'27"8)
総合7位
H/T
489.5富士GC・インター
200マイルレース
Tc-BII富士6km2久保田洋史25/255位
(2'06"95)
H/T
*4910.1富士GC・マスターズ
250kmレース
Tc-BII富士6km3黒沢元治20/202位
(2'01"92)
H/T
*5019723.2富士GC・300km
スピードレース
スーパーTC富士 6km15高橋国光12/121位
(2'00"41)
H/T
*516.4富士GC・300マイル
レース
スーパーTC富士6km15高橋国光20/202位
(2'00"70)
H/T
*529.3富士GC・インター
200マイルレース
スーパーTC富士6km15北野元20/202位
(2'01"79)
H/T

* Nissan Works Team

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