モータースポーツ

2021.12.3

SUPER GT GT500クラスでのNISSAN GT-Rの活躍を振り返る
vol.3 2017年〜2021年

苦戦の中で見せた輝き

2017年、ドイツ・ツーリングカー選手権(DTM)との共通車両規則に見逃せない改正が実施されました。

基本的な内容はこれまでと変わらないものの、ダウンフォースの量を25%減少させるとともに、年間に使用できるエンジンの数を従来の3基から2基に削減することが、その主な柱でした。これらは、14年の新規則導入に伴ってGT500マシンが「速くなりすぎた」との判断に立って実施されたもの。改正の規模自体は大きくありませんが、エアロダイナミクスとエンジンという、レーシングカーのパフォーマンスを決める重要な要素がふたつも変更されることになりました。併せて車両キャビン幅を均一化するY-Scaling規則も導入されました。

17年に向けて、日産/ニスモは新しいGT-Rを開発します。新規則に準拠しているのはもちろんのこと、車両の低重心化や重量配分の最適化によって運動性能を向上させ、さらなる躍進を目指した意欲作を作り上げたのです。

ただし、ここに課題がありました。耐久信頼性と出力性能の向上を中心に開発された新エンジンの新しい共通ECUの適合と信頼性マージンを確認しながら戦う必要があり、本来のパフォーマンスを抑制した状態でシーズン前半戦を戦うことになりました。

結果的に第3戦までは苦しい戦いを強いられましたが、第4戦という早いタイミングで改良された2基目のエンジンを投入し、この難局を乗り切りました。さらに第5戦からは#23 MOTUL AUTECH GT-Rに新しいコンセプトのシャシーセットアップを導入。ドライバーの奮闘もあってここで2位表彰台を手に入れると、第6戦でも2位に食い込み、ポイントリーダーに浮上したのです。雨にたたられた第7戦では懸命の追い上げで9位入賞。この勢いを駆って臨んだ最終戦ではポール・トゥ・ウィンを果たしますが、シーズン序盤の苦戦が響いて、惜しくもランキング2位でシーズンを終えることに。

18年、日産/ニスモは新しい開発体制を構築してシーズンに挑みました。それまでの実走データを最優先する考え方から、シミュレーションでのデータなどをより重視した考え方にシフトしたのです。この効果もあって、開幕戦を5位で終えた#23 MOTUL AUTECH GT-Rは第2戦で優勝します。一気にポイントリーダーに躍り出ましたが、その後はマシンバランスの不調などもあって徐々に失速し、ランキング8位という悔しい結果に終わりました。

前年度の雪辱を果たすため、19年シーズンに向けて日産/ニスモは新しいコンセプトのエアロダイナミクスを投入します。様々な環境でも安定した空力性能を発揮するロバスト性を更に高めた特性へ改善しました。この効果もあって、#23 MOTUL AUTECH GT-Rはシーズンを通じてコンスタントにポイントを獲得。優勝こそありませんでしたが、4度表彰台に上ってランキング3位へと返り咲いたのです。さらに参戦2年目の#3 CRAFTSPORTS MOTUL GT-Rも第7戦で優勝するなど健闘。GT-R勢としての底上げが感じられるシーズンとなりました。

2020年、SUPER GTは新たな車両規則を導入しました。これはDTMとの連携を深めたクラス1と呼ばれるもので、DTMマシンとの共通化をさらに進めるために、共通部品の比率を高め、空力開発できる余地を狭めることなどを主な内容としていました。また、東京オリンピック開催によるレースカレンダー(開催地)の変更も見据え、日産/ニスモは空力開発が認められているボディサイドのラテラルダクトやフロント部分のフリックボックスなどに新形状を導入。部品が共通化されたサスペンション関連では、その特性を理解するとともに入念な解析を行うことで各タイヤに合わせたセッティングの最適化を進めました。加えてエンジンは前年までのNR20Aに代えて、さらなるエンジン出力向上とパワーカーブの最適化を図った2リッター4気筒直噴ターボのNR20Bを投入。タイトルの奪回を最大の目標として新シーズンに挑みました。

こうした開発により、GT-Rのキャラクターは大きな変貌を遂げることになります。得意とするサーキットが、それまでの富士から鈴鹿に変わったのです。この年、鈴鹿で開催された2度のレースで#23 MOTUL AUTECH GT-Rは勝利を挙げました。ただし、2020年は新型コロナウイルス感染症の影響でカレンダーが根本的に見直され、富士での開催が1年で4回を数える異例の状況となります。結果的にここで大量ポイントを獲得できなかったことが響き、#23 GT-Rはランキング6位でシーズンを終えました。

2021年に向けて、日産/ニスモはシリンダーヘッドを中心に改良した新エンジン、NR4S21を導入したほか、車両規則で認められた範囲で軽量化や信頼性の向上を図りましたが、空力開発凍結により「富士よりも鈴鹿を得意とする」傾向に大きな変化はなく、#23 MOTUL AUTECH GT-Rは鈴鹿で開催された第3戦で優勝。第6戦オートポリスでも3位に食い込みましたが、ランキング9位と悔しい結果に終わりました。ただし、第5戦SUGOでは#12 カルソニック IMPUL GT-Rが優勝したほか、第3戦鈴鹿ではGT-Rが表彰台を独占するといった成果を収めたことも忘れるわけにはいきません。

こうしてR35型NISSAN GT-Rをベースとしたマシンは通算14シーズンを戦い、ポールポジション36回、優勝41回、ドライバーズチャンピオンを5回、チームチャンピオンを4回獲得するという目覚ましい成績を残しました。

22年シーズンから、日産/ニスモはGT-Rに変わるニューマシンでSUPER GTのGT500クラスを戦います。ただし、量産モデルのNISSAN GT-Rは今後も継続して生産・販売されるほか、GT300クラスを筆頭に様々なカテゴリーで戦うGT3規定のNISSAN GT-R NISMO GT3は、22年以降もレースに挑み続けます。引き続き、日産/ニスモのSUPER GT活動へのご声援をどうぞよろしくお願いいたします。

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