モータースポーツ

2019.04.17

Round 1 OKAYAMA GT 300km RACE

日産系チーム総監督 松村基宏のレースレビュー

新しいシーズンの開幕

2019年のSUPER GTが開幕しました。今シーズンの勝利に向けて、時にはライバル陣営の動向も伺いながらテストを重ねてきましたが、その結果がいよいよ現れるときです。

日差しの下で行われたフリープラクティスでは、ホンダさんが最高速が同じになるぐらいにパワーを上げてきました。シーズンオフのテストでは、他社はどんなことをしているか見えにくかったので、ようやくきちんと比較ができるようになりました。ホンダさんはマシンのレイアウトが違うので、次戦以降は分かりませんが、岡山ではだいぶ性能が近くなってきたと感じましたね。

クルマの進化とドライバーの頑張りが速さを生んだ予選

今シーズンに向けてクルマを進化させてきたわけですが、改善してきた部分の効果が出て、去年に比べてGT-R勢は速くなりました。これまでは特定のチームだけが速いということがありましたが、今回は4台ともに速さを見せられた。ドライバーたちが意欲的にトレーニングしてきてくれたことも大きく、QF1では上位を独占できました。とはいえ、ホンダさんも意地がありますから、QF2はさらに熾烈な戦いで、3~5位に食い込んできました。そんななか、ロニーの出した16秒6は非常に速かったですね。それまではどちらかというと、12号車の大樹がテストごとのトップタイムを出していましたが、テストというのはそれぞれやっているメニューが違いますから、予選ではロニーも頑張るので、どうなるかな、と思っていました。タイミング含めてロニーがうまくタイムを出したと言えるでしょう。ただ、12号車も23号車も非常に実力は接近していて、どちらが獲ってもおかしくない状況でした。お互いにコースレコードを更新していますし、よく頑張ったと思います。意外だったのは、レクサスさんが37号車のほかが下位に沈んでしまったことです。彼らのタイムが去年と比べて落ちているわけではないので、とてつもなく厳しい戦いになってきたことが分かります。1年前のQF1のGT-R平均タイムが18秒半ばで、今回は1秒強ほど縮めています。クルマの開発は制限されていますが、タイヤの開発が進んでいるのが理由です。

4台全車が上位フィニッシュ

予選日の天気で決勝レースが行われていたら面白い戦いになったとは思いますが、雨だけはどうしようもありません。タイヤの温度が上がる時間も違うので、序盤にホンダさんに抜かれてしまったのは残念でした。タイヤが温まってからは彼らとほぼ同じタイムで走れていたので、ウェットコンディションで性能に差があったわけではありませんが、せっかく熱が入っても短い時間でセーフティカーが出てきてまた温度が下がってしまう、その繰り返しでした。荒れたレースでしたが、ホンダさんの上位2台がアクシデントに遭ったこともあり、2~5位にGT-R勢が並びました。これは予選で上位にいられたからです。ハーフポイントではありますが、しっかりポイントを獲得できました。

決勝レースではもっと走ってデータをとりたい部分がたくさんあったので残念ですが、いろいろ成果も確認できました。一番大きな成果は、各チーム体制を変えての初戦でしたが非常に良く機能していて、モチベーションの高さも見えたことです。チームワークもいいですね。モチベーションが上がっているのは、クルマの手ごたえを感じられていることも大きいと思います。また、現場で話を聞き、その場で様々なことを決定できる、そのスピード感が上がっていることも影響しているかもしれません。

もう一つ、新しいドライバーの加入で、日産勢全てのドライバーが大きく刺激されていることもモチベーションの高さに影響していると思います。実は今回イベント広場でのトークショーでもお話ししたのですが、1台のクルマを2人でセッティングするにあたって、比較的ドライビングスタイルの近いドライバー同士を組み合わせると、お互いのいいところを見つけて「1+1=2以上」の力が出せるようになるのです。ドライバーのコンビネーションは重要なポイントです。これと、クルマを仕上げる能力、クルマを同じ方向に持って行くスタイリング、技術力ですね。そしてそれを走らせるトラックエンジニアの作戦。これらが揃わないと速くなりません。この部分に焦点を当てて体制変更を行ってきたので、少しは良くなってきたかなと感じました。

富士に向けて

次戦は富士スピードウェイでの戦いです。テストの結果を考えると、実力を発揮できれば面白い結果になると思います。GT-Rが得意としているサーキットですし、どのチームも狙っている1戦です。それぞれのチームがいい意味で抜きつ抜かれつしていく関係ができていけばいいですね。ライバル陣営も含め、もう少しお互いの実力も見えてくるでしょう。そのなかで、今度はGT-Rが表彰台の頂点に立つ姿をお見せできるよう頑張っていきたいと思います。

SUPER GT インフォメーション : Round 1