日産系チーム総監督 田中利和のレースレビュー

12号車がようやく表彰台に

GT500の日産陣営は今回から2基目のエンジンを投入しました。これが、12号車の予選での速さを引き出したアイテムの一つです。決勝を見ても4台すべてのGT-Rが入賞し、終盤戦につながるクルマの進化を確認する事が出来ました。

前戦富士大会では、12号車が非常に悔しい思いをしました。だからこそ、このSUGOには強い意志をもって挑んだわけです。予選では本当に僅差の戦いになり、惜しくもポールポジションは逃しましたが、佐々木もヤンも良く走ってフロントローのポジションを獲得しました。SUGOでは予選のポジションが非常に重要ですから、優勝に向けて順調に駒を進めた事になります。事前からSUGOではミッドシップレイアウトのホンダ勢がコースとの相性から速さを見せるだろうと予想していましたが、その中で12号車が予選2位に入ったというのは大きかったですね。
また24号車もQ2に進出しました。Q1では赤旗中断後、2分45秒でセッションが再開。日産勢はピットの位置がピットロード出口から一番遠く不利なポジションでしたが、JPが本当にぎりぎりのタイミングでQ2進出をもぎ取ってきました。Q2で高星がポジションを上げることはできませんでしたが、それでも8位のポジションを獲得しました。

決勝レースはヤンが非常に力強い走りをしてトップに立ちました。それを維持したままピットに入り、チームもミスの無い作業で佐々木を送り出してトップのままでコースに戻ることができました。アウトラップで逆転されましたが、タイヤが温まればペースは作れるだろうと、無理に押さえることはしませんでしたね。それほど大きなギャップを作らせずに良いペースで順調に前との差を詰めていましたが、最終コーナーで少しラインを外側に外した事でダストに乗ってしまいました。佐々木は自らのミスでコースアウトしてしまいましたが、全力で出来る限りの対応をしてクラッシュを避け、しっかりとリカバリーをしてきました。コースアウトした際に芝を拾い、ブレーキやエンジンの冷却が厳しくなってしまい、後半はペースが上げられなくなって順位を落としてしまいました。更に後方から迫ってきた車両にも攻められはしましたが、なんとかしのいで表彰台を守り切りました。
ヤンにとってはGT500では初めての表彰台となりました。前回のリベンジという気持ちで挑んだSUGO戦で、優勝は逃しましたが3位という結果。まだ最良の結果は得られていませんが、車も進化していますし、何より佐々木が今回のミスを糧に更に強くなると確信しています。次のオートポリス戦でも間違いなく良い戦いを見せてくれるでしょう。また24号車も決勝のペースは悪くなく、着実にポイントを取ってきましたね。こちらもオートポリスが楽しみです。

一方、23号車と3号車に関しては、ここ数戦ミシュランタイヤのパフォーマンスという点で少し苦労しています。SUGOは昨年もあまりミシュランタイヤとの相性が良くなかったため、シーズンオフからそれをキャッチアップしようと取り組んできました。日産、ホンダ、レクサスという3つの自動車メーカーもそうですが、4つのタイヤメーカーもギリギリの戦いをしています。ライバルよりも前に出るためには、時にはリスクを承知で前に進めなければならない事もあります。ここ数戦は少し辛抱しなければいけない戦いが続いていますが、残りの2戦では必ずキャッチアップしてくるでしょう。

GT300クラスでは、ようやく10号車が結果を出してくれました。予選では、10号車は5番手、11号車が7番手とGAINERチームの2台がそろって良い位置につけました。NISSAN GT-R NISMO GT3の2015年モデルはSUGOでなかなかパフォーマンスを発揮できず、2018年モデルに関してはその課題を克服するために開発してきたので、それがきちんと結果につながりました。11号車に関しては、ウェイトが重いにもかかわらず予選で7位につけたというのは、チームもドライバーも流石でしたね。

SUGOはJAF-GTと相性が良いコースなので、残念ながらトップを走るマシンには追い付けませんでしたが、10号車はFIA GT3勢としては最上位で、常に安定したペースで2位表彰台を獲得しました。10号車としても初めての表彰台でしたが、吉田選手にとってもSUPER GTでは初めての表彰台獲得だったようで、とてもうれしい結果になりました。チームメイトの11号車が先に優勝という結果を出していましたから、10号車も大きなプレッシャーを感じていたと思います。そういう意味でも、今回10号車が結果を出せてよかったです。11号車は最後にタイヤトラブルが起きてしまい残念でしたが、今回も強いレースを見せてくれていたので、まだまだチャンスはあると思っています。次のオートポリス戦ではウェイトハンディが半分になります。まだまだこれから、GT500クラスもGT300クラスも全力で行きます！