モータースポーツ

2018.07.11

Round 4 Chang SUPER GT RACE

日産系チーム総監督 田中利和のレースレビュー

GT500は残念な結果に。GT300では2018年型GT3が初優勝

前戦までの結果を反映し、GT500はランキング上位3台が燃料リストリクターを絞られてタイ戦に入ることになりました。日産陣営としては23号車が引き続きその影響を受けるので、他の3台が上位に食い込むことを目標に、そして23号車はとにかく1ポイントでも多くポイントを持ち帰ってこようという思いで第4戦に臨みました。

我々としてはレースウィークのコンディションは完全なドライを望んでいましたが、残念ながら願いは叶わず、予選日は雨が降って、乾いての繰り返しという、雨季のタイの典型的な天候になりました。天候はどのチームも条件としては同じですが、昨年同様に難しいコンディションになりました。そんな中で、午前中の公式練習の時間帯はドライコンディションで行われ、3号車の千代がトップタイム、非常にいい感触でスタートを切りました。6番手に24号車、8番手に23号車とまずまずの結果で、12号車はセットを確認しながらの11番手で、各車ともフィーリングは悪くない状態で予選に向かいました。

難しいコンディションの予選で、若手の二人が速さを見せた

公式練習はドライコンディションでしたが、予選は一転して難しいコンディションになりました。Q1はウェットコンディションから徐々に乾いていくという、まるで去年の決勝レースがスタートする前と同じような状況で、23号車はレインタイヤで走り出しましたが、かなり早いタイミングでスリックタイヤに変えて、とにかく周回を重ねてQ2進出を目指しました。しかし、持ち込んだタイヤと路面の状況がマッチせず、さらに最終のアタックラップに先行車に詰まってタイムをロスし、残念ながら最下位。同じミシュランタイヤでハンディキャップの条件が良い3号車は、レインタイヤでベースのタイムを出した後にスリックタイヤに換えましたが、やはり十分にタイヤの性能を引き出す前にタイムアップになってしまいました。朝のフリー走行でトップタイムを出したクルマがQ2進出を逃す、非常に難しいセッションでした。一方、12号車の佐々木と、24号車の高星、若い二人がそういうコンディションでトップタイムと2番手タイムを出し、Q1を突破したというのは、非常に頼もしく思えましたね!

Q2は完全ドライコンディションでの戦いになりましたが、タイヤラバーが十分に乗りきらないコンディションではMRのホンダ勢2台が速く、FRのクルマとしては39号車と僅差で24号車が4位。日産陣営としてはトップ5に2台を入れたかったのですが、12号車はヤンがうまく合わせ切れず7位となりました。予選はこのような結果になりましたが、決勝はまたコンディションが変わるだろうし、各車がしっかりとレースを戦えば違った展開も見えてくるので、それぞれのチームが決勝に向けて準備をしていきました。

レース前に掲げた目標に届かず

決勝は、とにもかくにもあの接触につきますね。今回日産陣営として、これが一番大きな痛手でした。ポイントを獲らなければいけない2台が接触したことで、1台はレースを失い、もう1台もダメージを受けてペースを十分に上げきれませんでした。各チームには、スポーツマンシップに乗っ取ってレースをすること、そして最後まで走り切ることが最重要だと常に話しているので、それが陣営内で起きた事は非常に残念です。12号車は空力パーツやステアリング系にダメージを負ってペースが上げられない中、2人のドライバーがよく凌いで6位というポジションまで回復しました。これは、今後12号車のチャンピオンシップを考える上でも重要な事です。またミシュランタイヤを履く23号車と3号車は路面とタイヤのマッチングに苦しみ、タイヤ無交換作戦を選択するもペースが上げられず、結果全車がタイに入る前に掲げた目標に届かず、厳しいレースでした。

次戦はGT-Rが得意とする富士。ランキング上位の6台が燃料リストリクターを絞られますが、23号車を除く3台のGT-Rはその制限を受けない状態で臨みます。しかも今回は500マイルレースで獲得ポイントも大きい。今シーズンのチャンピオンシップを狙ううえで、非常に重要な一戦になります。まだシリーズの行方が混とんとしている中、富士で大きなポイントを獲得すればランキングでいきなり急浮上する可能性も大いにあります。ピンチをチャンスに変える、日産陣営で上位を独占するぐらいのつもりで挑みたいと思います。

2018年型GT3車両の初優勝

GT300もまず予選から振り返っていきたいと思います。GT3 GT-Rもタイを得意としています。さらにハンディキャップの条件的には10号車の方が有利。GT-Rとヨコハマタイヤの組み合わせは過去にも勝っているので、そういう期待を持って臨みましたが、10号車は予選で3番手のタイムを出したものの、残念ながら車検で失格となりました。エンジン制御系のチューニングの部分で、制限値を超える値が出たためにタイム抹消となりました。攻めた結果とはいえ、NISMOには技術サポートの責任がありますから、チームとドライバーに申し訳ないことをしました。クルマとしては調子が良かったですし、最後尾にはなりましたが決勝のペースには自信があったので、追い上げに期待しました。その期待通りに途中まではいいペースで追い上げていましたが、残念ながら他社との接触でラジエターにダメージを負い、最終的にはエンジンが止まってしまいました。

一方の11号車は、2人のドライバーとチームの戦略、タイヤ、全てがかみ合って、18年モデルのGT3車両に初勝利をもたらしてくれました。今回は安田がGT参戦100戦という記念のレースだったので、それも良かったですね。11号車は、これでランキングでもトップに立ちました。日産陣営としてGT500が苦しんだ中で、嬉しいニュースをプレゼントしてくれた、チームとドライバーに本当に感謝します。

GT3車両のGT-Rにとっても、次の富士は相性のいいコース。GT500同様に、今度は10号車も大量ポイントを稼いでくれることを期待して、サポートしていきたいと思います。

SUPER GT インフォメーション : Round 4