モータースポーツ

2017.10.12

Round 7 Chang SUPER GT RACE

日産系チーム総監督 田中利和のレースレビュー

本来の速さを取り戻した12号車

SUPER GTシリーズ唯一の海外ラウンドは、第7戦ということでハンディキャップはポイント×1倍。シリーズランキングトップ(59ポイント)で臨んだ23号車は、唯一リストリクター制限というハンディを受けた状態でレースを戦うことになりました。日産勢としては、23号車は1ポイントでも多く獲ること、そして12・24・46号車の3台は、とにかく上位に食い込むこと、そのために予選から攻めの姿勢で戦うことを作戦としていました。

それにしても、今年のタイは例年以上に天候が不安定でした。日に2度ほどスコールに見舞われ、それが止むと急に晴れて乾いていく。そのスコールも、いつ来るか分からないという状況。熱帯気候で、日本のように雲が移動して天気が変化するというよりも、すぐそこで雲が湧いてくるんですね。だから、予測しにくいわけです。過去3年間はウェットコンディションで走行することなくタイでのレースを戦いましたが、今回は初めてのウェットコンディションを含め、路面コンディションが本当に目まぐるしく変わっていきました。
今回のレースは、それに尽きると思います。

日産陣営としては、練習走行から12号車の調子が良かったですね。予選でも、まずは安田がQ1でトップ通過を果たし、それを受けたヤンも、トップと0.05秒差の2位。最後のアタックでも、セクター1と2では全体ベストを出していましたが、セクター3を走行しているタイミングでぱらぱらと少し雨が落ちてきてしまいました。そういう意味では、非常に惜しい2位でしたね。

12号車は、今シーズン苦しいレースが続いていました。序盤はクルマが辛かったのですが、2基目のエンジン投入後は46号車や23号車が表彰台を獲得したり、鈴鹿1000kmでは24号車がポールポジションを獲得したりと、他の3台が速さを取り戻してきた。しかし、12号車が本来の力を発揮できていないことは、陣営としても悔しい思いでした。それが今回、ようやく本来の速さを取り戻してきました。

前半スティントを担当したヤンは、トップの車両と遜色ないタイムで走っていましたし、後半の安田も、一時17号車に攻められることはありましたが、それをうまくいなしてポジションを守っていました。クルマやドライバーが本来持っているパフォーマンスをきちんと発揮できるということを確認できたのは、チームにとって大きな収穫だったと思います。その一方、それ以外で足りない部分が出たのも事実。最終的に燃料系のトラブルで止まってしまいましたが、ピットでのタイムロスがなければ、最低でも2位にはなれたレースだったでしょう。ドライバーとクルマをいい状態でコースに送り出すというチームの役割を、日産陣営としてもっと磨いていかなければと感じました。


23号車は、追いかける立場で最終戦へ
ランキングトップでタイに入った23号車は、今回のめまぐるしく変わる路面コンディションにミシュランタイヤがうまくはまりませんでした。11位スタートで、どちらに転ぶかわからないコンディションでしたので、決勝はスリックタイヤという賭けに出ました。路面コンディションは狙い通りにどんどんと回復していきましたが、チームが予想したよりも回復に時間がかかり、上位進出はなりませんでした。ですが、ポイント圏外スタートから最終的には9位入賞でポイントを持ち帰りました。ライバルの37号車が優勝、6号車が2位ということで、選手権ではトップから8ポイント差、2位とは2ポイント差の3位。去年はもてぎ大会にランキングトップで臨みましたが、今年は追いかける立場になります。今シーズン最後の戦いは、勝つことだけを狙って挑みたいと思います。

GT500のGT-Rは、2基目のエンジンが非常にうまく機能していて、急激に競争力を回復してきています。今回12号車が、予選と決勝序盤のラップタイムで、GT-Rが他車に対してきちんと戦える競争力を持っていることを証明してくれました。そういった意味でも、今回12号車が速さを取り戻したことは陣営にとって大きな収穫だったわけです。最終戦は自信を持って、4台全車で上位を狙い、その中でも23号車は勝ってチャンピオンを取り戻す。そういう気持ちで臨みます。

GT300も、500と同じような戦いになりました。コース特性から言えば、もてぎよりもタイの方がチャンスがありますから、3号車も10号車も勝つつもりで臨みました。しかし3号車は路面コンディションとタイヤのマッチングがよくなく、23号車と同じような戦い方になりました。ドライコンディションに回復し、路面温度が上がるのが想定より遅かった。10号車は戦略もペースも良く表彰台を争っていましたが、こちらも残り2周で突然トラブルが生じ、順位を失ってしまったのが悔やまれます。GT-Rにとって悪いことがいろいろ起きてしまったタイラウンドですが、これで不運はすべて出し切ったと考えて、最終戦に挑みます。


今週末、GT500マシンがホッケンハイムを走行
さて、SUPER GTのタイラウンドが終わって間もないですが、今週末ドイツのホッケンハイムで開催されるDTM最終戦に、GT-RとレクサスLC500がデモ走行を行うことになりました。今年DTMには、メルセデス撤退という暗いニュースがありましたが、パートナー関係にあるSUPER GTが2L直4ターボのクルマの魅力をアピールして盛り上げようとDTMに協力することになったのです。また、SUPER GTの最終戦にはDTMの車両が来日しますから、“DTMのためにSUPER GTが、SUPER GTのためにDTMが”という相互協力が、ファンの皆さんの目に見える形で実現することになります。日産は昨年の#1 MOTUL AUTECH GT-Rをロニーがドライブします。レクサスとともに、しっかりとSUPER GTをアピールしてこようと思っています。

今シーズンも、最終戦・もてぎを残すのみとなりました。今年一番のレースをもてぎでお見せできるよう、GT500、GT300とも全車で頑張りたいと思います。

SUPER GT インフォメーション : Round 7