モータースポーツ

2016.07.28

Round 4 SUGO GT 300km RACE

日産系チーム総監督 田中利和のレースレビュー

チーム一丸となって勝ち取った#24の勝利

SUPER GT第4戦は、日産陣営としては天国と地獄を味わう週末となりました。苦しい場面もありましたが、自分たちの持つポテンシャルを信じ、「必ずチャンスは来る」と信じ続けた結果、我々日産勢の持つ特色を活かして開幕からのGT-R 3連勝を達成できました。

思いがけない予選の展開も、実力を信じ続けた
予選結果はご存知のように、1号車がアタック中にクラッシュし赤旗終了。その影響もあってGT-R全車がQ1敗退となりました。80kgというウェイトを積んで挑んだ1号車ですが、その重量にも関わらず悪くないタイムが出ていたこともあり、アタックを担当したロニーも少し欲が出てしまったのでしょう。少しでも良いタイムを出す為にドライバーが限界で攻め続ける事は当然の事ですが、結果としてしてそこでいろいろなものを失うことにもなりました。ほかのチームにも迷惑をかけ、本人も責任を感じて落ち込んでいましたが、そこから立て直し、パートナーの松田と共にできる限りのことをした結果、9位まで順位を上げ、貴重な2ポイントをもぎ取ってきました。ランキング2位とは若干ポイント差が縮まることにはなりましたが、1号車の強さが発揮されたと思います。

優勝した24号車は、「他のクルマより早めにピットに入り、タイヤ無交換で後半のロングスティントを戦う」という、ヨコハマタイヤを履く彼らでないとできない戦略を成し遂げました。近藤監督の中には、ある条件が整えば勝てるポテンシャルがあるという確信があるように見えていました。この週末は気温の低さもさることながら、雨の量という点において非常にチーム泣かせのコンディションでしたが、24号車はそういうことも見越したタイヤチョイスをしてきました。そして、そのタイヤにだんだんとコンディションがマッチしてきた。近藤監督は勝負師ですから、柳田の走行中も路面やタイヤの状況、タイム、周囲のペース、そしてセーフティカーが入ったことを利用してタイヤ無交換を決断しました。柳田もタイヤ無交換の可能性があるとわかっていて、前に離されることなく、タイヤをいたわりながら走っていました。あまり目立ってはいませんでしたが、いい仕事をしていましたね。そして後半スティントの佐々木に交代。40周以上にわたり、レクサス×ブリヂストン勢の猛攻をかわし続けました。かなり接近する場面が何度もありましたが、周回遅れを利用したり、非常にうまくいなしていました。あっぱれな戦いだったと思います。

もっと路面温度が高かったら全く違う結果になっていたでしょう。作ってきたタイヤと今回のコンディションがうまくマッチして、あの戦略が可能になった。このタイヤを作ってきたヨコハマタイヤ、タイヤという「生もの」の様子を感じとり、時にはアジャストしながら走ったドライバー、その状況から戦略を決断した監督、そしてノーミスのピットワークでその作戦を実行に移したチーム。正に一丸となってKONDO RACINGが1勝をあげてくれたのは本当に嬉しいです。

12号車、46号車に関しては、本当に不運が続きました。今回のレースに関しては、2連勝した1号車が上位争いをするのは難しいだろう、そうなった場合に総監督の私としては12、24、46号車の3台がトップ争いをして勝ってくれればと考えていましたが、その筆頭にいたのは先週のスーパーフォーミュラで優勝し、テストでも調子が良かった12号車でした。ポイントを落としたことは非常に残念です。46号車も、選択したタイヤとコンディションが合わずに苦しい戦いとなり、2台とも本来持っている力を発揮できませんでした。次戦はGT-Rが得意とする富士、その次は大量得点が見込める鈴鹿1,000kmですから、この2戦を12号車、46号車で獲って欲しいです。

優勝するのは大変なことですが、1回勝つとチャンピオンシップの候補にしっかりと上がってきます。今回も、24号車は2戦を終えて2ポイント獲得のランキング11位から、一気に5位に浮上してきました。コンスタントにポイントを積み重ねることも重要なのですが、やはり「1勝」というのがチャンピオン獲得に向けた重要事項です。我々日産陣営は4台それぞれ粒ぞろい。そしてタイヤメーカーをはじめそれぞれ違うキャラクターのチームです。そのキャラクターを活かして全チームが勝ち星を上げてくれたらと思っています。

大幅ポジションアップで着実にチャンピオンへと近づいているGT300
GT300クラスでは、3号車をはじめ4台のGT-Rが出場していますが、ランキングトップで42kgのウェイトを積んでいた3号車と、去年のチャンピオンでGT-R勢の中で唯一ダンロップタイヤを使用している0号車がQ1突破を果たせませんでした。しかし、48号車と360号車というユーザーチームの2台がQ1を突破してくれたのは嬉しい出来事でした。決勝では3号車が、21番スタートから5位まで追い上げ、強さを見せてくれましたが、ここまで「最低1勝とコンスタントにポイントを重ねる」というチャンピオン獲得への方程式にしっかりと沿って戦っています。菅生はコースの特性からJAF GT勢が有利と事前から予測はしていたので、ユーザーチームがGT-Rのポテンシャルを見せてくれたこと、そして3号車がチャンピオンに向けた戦い方を見せてくれたことを考えると、GT300も上出来の週末だったと言えると思います。

今回のレースではGT500のGT-Rが全車Q1敗退というという全く予想外の事が起きました。しかし苦しい状況の中でもGT-Rとチームのポテンシャルを疑う事はありませんでした。それは私や戦っているチームだけでなく、ファンのみなさんも同じ思いだったのだと思います。その証拠にスタート前のグランドスタンドも、いつも以上の声援を感じました!ホームストレートを駆け抜けていくとき、ドライバーにはスタンドのお客さんがどれだけ自分たちにエールを送ってくれているのかが見えています。だからそれが力になるのです。今回は、監督、チーム、ドライバー、そしてファンの皆さんの勝利だと思います。すぐに2週間後には富士ラウンドがあり、またその3週間後には鈴鹿1,000kmも待ち構えています。さらに勝利を重ねていけるよう頑張りますので、応援よろしくお願いします。

SUPER GT インフォメーション : Round 4