フォーミュラE基礎知識

1. フォーミュラEとは

電気自動車のトップカテゴリー

フォーミュラE(FE)は2014年9月、中国・北京で「シーズン1」(2014-2015)がスタートした新しいモータースポーツ・シリーズで、「シーズン5」(2018-2019)が間もなく開幕する。専用開発したマシンに電動モーターを搭載し、バッテリーに蓄えた電気エネルギーで走行する電気自動車(EV)によるレースの最高峰といえる。F1(フォーミュラ1)や、WEC(世界耐久選手権)、WRC(世界ラリー選手権)、WTCR(世界ツーリングカーカップ)、WRX(世界ラリークロス選手権)などと同様、FIA(国際自動車連盟)が統括する世界規模のシリーズで、クルマの電動化という世界的なトレンドの中、新しいテクノロジーを活用したモータースポーツとして注目を浴びている。

© LAT/Formula E

電気で走行するFEは、「日産リーフ」など通常のEVと同様、走行時に排ガスをまったく出さない、環境に優しい「ゼロ・エミッション」 のレーシングカーである。また、エンジンを搭載したマシンに比べると遥かに静かな点が他のモータースポーツと大きく異なる。こうした特長を最大限に活かし、レースはアクセスの良い各開催国の首都など大都市の街中を一時的に閉鎖した「ストリートコース」で開催される。

ニッサンがワークス体制で参戦を開始する「シーズン5」は、12月15日に初開催のサウジアラビアで開幕し、モロッコ、チリ、メキシコを経て2019年3月にはアジアに上陸。香港と、中国のリゾート地・南海島の三亞(サンヤ)で第5戦、第6戦が行われる。その後はローマ、パリ、モナコといった欧州の主要都市を転戦したのち、7月13~14日にアメリカ・ニューヨークで行われるダブルヘッダーで全13戦が終了しチャンピオンが決まる。

技術規定:ワンメイクのEV

 

EVによるレースという、当時まったく新しい試みであったFEは、同一のマシンを全チームが使用する、いわゆる「ワンメイク」レースとして始まった。2015年10月からの「シーズン2」ではモーター、インバーター、トランスミッションの独自開発が可能となり、各チームが軽量コンパクトでエネルギー効率の良いパワートレーンの開発を行っている。また、コイルスプリング、ダンパー、アンチロールバーといった構成ユニットや、その使用素材などは制限されているものの、リアサスペンションの設計変更も許されており、同一シャシーのレースとは言え、現在ではチーム力の差もマシン性能を大きく左右する。

モーターに電力を供給するリチウムイオンバッテリーも全車両が同一部品を使用する。「シーズン4」までは使用可能な電力総量が28kWhで、約90kmで行われるFEではレースの途中でマシンを乗り換える必要があった。これがレースの魅力を大きく損なっているとの意見も聞かれたが、「シーズン5」からはバッテリーの電力量がおよそ倍に拡大され、1台のマシンでスタートからチェッカーフラッグまで走り切る事が可能になる。また、ブレーキング時にはモーターが発電機の役割を果たす回生ブレーキ機能が搭載されており、バッテリーに蓄えられた電力を効率よく使用するには、ブレーキの使い方も重要となる。

 

また、モーターの最大出力もこれまでの200kW(フリー走行と予選のみ。決勝では180kW)から250kW(同、200kW)に引き上げられ、よりエキサイティングなレース展開が予想される。こうした新しい技術を搭載し、FEのマシンは「シーズン5」より第2世代に進化。「Gen2(ジェン・ツー=第2世代)」と呼ばれる未来的なフォルムのレーシングカーが登場する。

参考:車両解説

スポーティングレギュレーション:ファンへの訴求

アクセスの良い市街地での開催以外にも、その魅力をより多くのファンに伝えるための試みが行われているのもFEの特徴と言える。ツイッターなどのSNSを通じた人気投票で最も多くの票を集めたドライバー5人は、場所は限定されるが任意のタイミングで5秒間、最大出力の250kWを使用する事が可能になる。コース幅が狭く抜きどころの極端に少ないストリートコースでは、オーバーテイクを容易にするこの「FANBOOST(ファンブースト)」が非常に大きな武器となる。

© LAT/Formula E

また、一般的なレースイベントが週末の数日を通して行われるのに対し、FEはフリー走行から予選、決勝レースが一日で終了。セッション全体を一日にまとめる事で、広く一般のファンにもその魅力の全てを凝縮して観やすい構成としている。さらに、レース後の表彰式は一般のファンが入場可能な広場のスペースにポディアムを設置して行われ、サポーターと彼らのヒーロー(=表彰台上のドライバー)との距離が非常に近いのも、他のモータースポーツとは異なる。

その他、これまでは80キロから90キロの距離で各サーキットでの周回数が決められていたが、「シーズン5」からは全てのレースが45分+1周のタイムレースに変更される。さらにポイントシステムも変わり、順位に応じたポイントのほか、5位までのドライバーの中で、最もエネルギー(電気)消費量の少なかったドライバーにポイントが与えられる。したがって、限られたエネルギー量でいかに効率よく走り切るかといった戦略もこれまで以上に重要となる。

Formula Eポイントシステム
各レースのトップ10入賞者に以下ポイントが与えられる。

1位 2位 3位 4位 5位 6位 7位 8位 9位 10位
25 18 15 12 10 8 6 4 2 1

ポールポジション賞 3ポイント
ファステストラップ賞 1ポイント(トップ10入賞者の中のファステストラップ記録者)

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