フォーミュラE基礎知識

2. フォーミュラEの魅力

世界的自動車メーカーの相次ぐ参戦

現在、大きな変革の時を迎えている自動車産業。環境対策、温暖化対策としてクルマの電動化が世界の自動車業界にとって急務となっており、大手自動車メーカーが世界各地で開催されているモーターショーにこぞって電気自動車(EV)を展示しているところからも、その傾向は明らかである。日産は「電気自動車技術」を「自動運転技術」と並んで「ニッサン インテリジェント モビリティ」戦略の大きな柱とし、世界に先駆けて、2010年に電気自動車「日産リーフ」の販売を開始した。これまでに36万台以上の「日産リーフ」を販売している日産にとって、フォーミュラEはこれまでに培ってきたEV技術を基に「ニッサン インテリジェント モビリティ」の優れたパフォーマンスを示す絶好の機会となる。

 

フォーミュラEの「シーズン1」開始当時は、大手自動車メーカーの関与は少なく、ルノーとアウディがDAMSとABTにそれぞれ側面支援を行うほかは、インドのマヒンドラがワークスとして参戦するのみで、それ以外は全てほぼプライべートチームによる戦いだった。その後、「シーズン2」にDS(プジョー・シトロエングループ=PSAのプレミアムブランド)、「シーズン3」にはジャガーと毎シーズン自動車メーカーが新規参入。昨シーズンはWECを退いたアウディがフルワークスでの参戦を宣言するなど、フォーミュラEは順調に成長を遂げてきた。

 

そのトレンドは加速を続け、「シーズン5」からはBMWもフォーミュラEに新規参戦を開始。さらに「シーズン6」にはメルセデス、ポルシェもワークス体制で参入する予定だ。そうなると、参加11チーム中、(シーズン5を前提とした場合)日産をはじめアウディ、DS(PSA)、ジャガー、マヒンドラ、BMW、メルセデス、ポルシェと過半数が世界的自動車メーカーのワークスチームとなる。世界の名だたるメーカーが参戦して非常に激しい競争が繰り広げられているモータースポーツの舞台で、新たに参戦する日産のフォーミュラEチームがいかに戦うか、ぜひ注目していただきたい。そして、そのような激しいレースの現場において切磋琢磨することで得られる最新のEV技術は、将来、日産/ニスモのロードカーにも活用されていく。

 

実力と実績のあるドライバー陣

フォーミュラEには、開始当初から実力や人気のあるドライバーの参戦が見られた。日本人では佐藤琢磨が北京で行われた2014年の開幕戦に出場し、小林可夢偉も昨シーズンの開幕戦(香港)に参戦した。その他、ヤルノ・トゥルーリ、ニック・ハイドフェルト、ネルソン・ピケJrほか元F1のトップドライバーやWEC、DTMの現役選手もシリーズの立ち上げ段階から多く参戦している。

 

「シーズン5」で日産のエースナンバーである23号車をドライブするセバスチャン・ブエミは、日本ではF1での実績やル・マン24時間での総合優勝で知られているが、フォーミュラEには今季から日産のパートナーとなるe.damsのドライバーとして「シーズン1」から参戦している。初年度はチャンピオンに1ポイント差のランキング2位と活躍し、翌シーズンには優勝3回を含み全レースで入賞する安定した速さと強さを見せて、ドライバーズチャンピオンを獲得した。そして歴代最多勝、最多ポールポジション、最多ファステストラップ、最多連勝、シーズン最多勝、最多連続ポイント獲得など、フォーミュラE選手権の多くの記録を達成。日産の初シーズンでの活躍に期待がかかる。

「シーズン5」のドライバーラインナップにおける注目点としては、元F1ドライバー、フェリペ・マッサのレース復帰も挙げられる。マッサは、2017年にF1から引退し、その後の去就が注目されていたが、モナコに拠点を置くヴェンチュリ・フォーミュラEチームからの参戦が5月に正式発表された。その他、アンドレ・ロッテラー、スーパーフォーミュラを経て今シーズンはF1に参戦しているストフェル・バンドーンなど、日本にゆかりの深いドライバーも12月にサウジアラビアのスターティンググリッドに並ぶ。 また、2018年のDTM(ドイツツーリングカー選手権)王者ゲーリー・パフェットや元F1ドライバーのパスカル・ウェーレインのデビューもある。「シーズン4」では多くのドライバー、チームが優勝しており、接戦が繰り広げられたフォーミュラEは、ますます目の離せないシリーズになっていくだろう。

シーズン5エントリーリスト

「シーズン5」は世界12の国・地域を転戦

FIA公認の選手権として行われるフォーミュラEは、世界各国を転戦してチャンピオンシップを争う。今年は、開幕戦が初開催のサウジアラビアで行われるほか、中国の三亞やスイスのベルンといった新しい都市でもレースが行われる。世界12の国・地域で8か月にわたって全13戦が行われ、来年の7月14日にアメリカ・ニューヨークまで熱戦が繰り広げられる。

第1戦 2018年12月15日 ディルイーヤ(サウジアラビア)
第2戦 2019年1月12日 マラケシュ(モロッコ)
第3戦 2019年1月26日 サンチアゴ(チリ)
第4戦 2019年2月17日 メキシコシティ(メキシコ)
第5戦 2019年3月10日 香港(香港)
第6戦 2019年3月23日 三亞(中国)
第7戦 2019年4月13日 ローマ(イタリア)
第8戦 2019年4月27日 パリ(フランス)
第9戦 2019年5月11日 モナコ(モナコ)
第10戦 2019年5月25日 ベルリン(ドイツ)
第11戦 2019年6月22日 ベルン(スイス)
第12戦 2019年7月13日 ニューヨーク(アメリカ)
第13戦 2019年7月14日 ニューヨーク(アメリカ)
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