我々の目標はレースに勝つ事である。
従ってパワーはとても重要だ。
 
 
 
■ニッサン新型エンジン

 ニッサンR391の心臓部は日産が独自に開発したパワフルな5リッター、V8のレースエンジンである。このエンジンは、600馬力以上を持ち、13.6km(8.5マイル)のサルテ・サーキットを時速300km以上のスピードで走る。
新型のVRH50Aエンジンは、日産の高級車インフィニティQ45のエンジンと同じブロックを使って開発された。R391のエンジンは基本寸法とV型角がQ45と同じだが、レース用の強固な構造を作り出すために独自に鋳造され製造された。
インフィニティQ45のエンジンをベースとするレースエンジンは、今年の米国インディレーシングリーグ(IRL)でも4台のレースカーに搭載されている。現在第2戦を終了したところで、3位と4位に入賞している。
VRH50Aエンジンはル・マンのプロトタイプ(LMP)のレギュレーションの範囲内で、最大の馬力とトルクを出すように開発された。排気量4,997cc、V8、1気筒4バルブ、ダブルオーバーカムのこのエンジンのV角は90度である。
 
 R391 Testing
エンジンはターボラグによって生じる問題を避け、24時間以上、どんな気候の変化の中でも競争力ある走りが実現できるようにNAが選ばれた。

 VRH50Aを担当するニスモのエンジニア、高野宏はこう説明する。

 「排気量の大きいNAエンジンは長距離のレースにおいて優れたパフォーマンスを発揮する。コース状況が変わったり、ドライバーが疲労しても、車は非常に運転しやすく、一貫したラップタイムをより簡単に出せる。NAエンジンは空力においても優れた性能を出しやすい。エンジンはターボ付きよりも小型で軽量。ターボ、インタークーラー、ウエストゲートが無いので、ボディに搭載するのはとても簡単だ。」

■パワー規制

 日産のVRH50Aエンジンのパワーはレースのレギュレーションによって制限されている。シリンダーブロックの左右のバンクにはそれぞれメインインレットマニホールドがあり、それぞれ1個ずつエアリストリクターが装着されている。

■開発プログラム

 VRH50Aエンジンの開発がスタートしたのは18カ月前の事だが、最初に作られたエンジンは1年以上もかけてベンチテストが行われた。


 R391 Engine
設計上の条件は、アクセルのレスポンスの良さなどの扱いやすさを備えながら最大のパワーを出すことだ。

 「我々の目標はレースに勝つ事である。従ってパワーはとても重要だ。」と高野は語る。「開発の初期段階ではまずパワーの出るエンジンを目指した。それからドライバビリティを向上するために、カムシャフトの形状やマニフォールドの長さを調整するチューニングを行った。エンジンに必要なのは、優れた信頼性、運動性能、そしてもちろん経済性だ。」


 エンジンの開発にあたったのは日本の二つのエンジニアチームである。一つのチームは設計に専念し、もう一チームは、何時間ものテストを担当した。これらのテストを通じて日産は、空気の流入や燃焼特性などのデータを取った。それらのデータは日産のモータースポーツ開発部門から市販車開発のエンジニア達に渡され、市販車用エンジン開発の為に活用されている。

les 24 Heures du Mans des 12 et 13 juin 1999.