最速ラップタイムを出すことは重要ではあるが
ラップスピードだけでは
ル・マンで勝つことは出来ない。
 
 
 
■新型ニッサンR391

 日産は今年のル・マン24時間レースへの挑戦にふさわしい新型のレースカーを開発した。日産の新型レースカー、R391はル・マンでの総合優勝という目的を持ち、激戦が予想されるル・マン プロトタイプカテゴリーに参戦する。


 Nissan R391 1999 edition.
 R391に搭載されるのは、V8、5.0リッター、NAのニッサン新型エンジンで、600馬力以上のパワーを発生する。車両は軽量で高速性に優れ、運転しやすく設計されているが、それ以上に同車はル・マンでの24時間を安定した確実なパフォーマンスで走りきる性能を持っている。R391は日産自動車のモータースポーツ業務委託会社であるニスモで開発、製造された。
全長4650mm、全幅2000mm、全高695mm。軽量だが頑丈で安全を考慮した設計により、ニッサンR391は、900kgというこのカテゴリーの最低重量でレースに臨む。


■新デザイン

 プロトタイプが昨年に比べてより有利になる方向でレギュレーションが見直されると確信した時点で、日産は新型のル・マン用レースカーを製作する決断をした。このレギュレーションの変更には、プロトタイプクラスの車の燃料タンクの増量と改善された空力が含まれる。

 4台全てのニッサンR390GT1が3位、5位、6位、10位で完走するという、スピードと信頼性をズバリ証明した昨年の成功にもかかわらず、日産はまだ優勝という約束を果たしていない。

「昨年のレースの後すぐに我々は今年のル・マンの為にプロトタイプカーを作ることを決めた。」とニッサンR391のチーフデザイナーの永島勉は語る。
「GT1カーとプロトタイプカーの性能が今年はかなり似通っており、我々はレースを制するのはプロトタイプだと考えている。他の多くのチームも同様に感じているのは明らかだ。」
全日本GTカー選手権のスカイラインGT−Rや、全日本ツーリングカー選手権のプリメーラといったプロジェクトで成功を修めてきた永島はR391のスケッチの際に、エンジン性能、空力、ハンドリング、そして運転のし易さにおいてバランスの取れたパッケージングを作り出そうと考えた。


 Nissan R391 1999 edition.

 「最速ラップタイムを出すことは重要ではあるが、ラップスピードだけではル・マンで勝つことは出来ない。」と彼は言う。「何ラップ走っても一定して速いタイムが出せるように快適なドライビングフィールを持つ耐久性のある車でなければならない。
ニッサンR391は多くの特徴を持っているが、特に際立っているのは重心が低く、重量バランスに優れたパワフルなエンジンである。勝つ車の基本はこの点にある。」
ニスモは1990年以来プロトタイプの設計・製造に携わってこなかった。そこでニスモは、G−Forceの技術とレースカーの空力という職人技のスペシャリストとして知られているナイジェル・ストラウドにアドバイスを依頼した。ストラウドはチームの中でアドバイザーを担当している。

■タイトな開発期間

 ニッサンR391はレースの為に作られた本物のレースカーだ。ルーフやドアやウィンドウを無くした事は、エンジニアの開発時間を減らし、ル・マンに勝つための最高のレースカーの設計に専念させることに役立った。


 1998 Le Mans
 車両の組立は、40%のスケールモデルを使った風洞実験と並行して、昨年の8月よりフルスケールモデルの設計を始めた。主な外観の形状は昨年の11月末に完成したが、マイナーな空力上の変更点とアンダーボディのエンジニアリング上の仕上げはレースの日まで続けられる。

 ニッサンチームはル・マンの予備予選に向けて、南フランスのポールリカールにてテストを行った。


これらのテストを通じて、車両の初期設計のセッティングの確認と耐久走行の確認を無事終えている。また、予備予選とレースウィークの間にも再びテストを行う。

■車両構造

 カーボン製のニッサンR391のバスタブ型モノコックは強固で、全体重量を減らす為に小さく仕上げられている。ボディ剛性はエンジンとギアボックスというシャシーの二つの主要構造体に不安なストレスが生じないように設計されている。

 フロントとリアのサスペンションはインボード型のプッシュロッド式コイルスプリングとダンパーユニットを組み込んだ軽量のダブルウィッシュボーンである。形状は去年のデザインとほぼ同じで調整し易さと強度を損なわずに、さらに軽量化されている。

 ニッサンV8エンジンは縦方向に重量中心を低くかつホイールベースの中心近くに配置され、最適の重量バランスとなるように搭載されている。

■燃費

 燃費は世界中の日産の顧客が重視しているように、長距離を走るレースカーにとっても重要なポイントである。余計な給油の為のピットストップによるタイムのロスは、チームが優勝を逸する危険性をもたらす。

 今年のル・マンのレギュレーション変更では、燃料タンクの容量をプロトタイプもGT1も同じ90リッターとなった。

■6速ギアボックス

 ニッサンR391は、エンジン位置をより低くしたのでギアボックスの形状を変更したが、昨年のR390GT1に使ったものと同じ6速シーケンシャルギアを使っている。このギアボックスは日産自動車で開発されたものである。

les 24 Heures du Mans des 12 et 13 juin 1999.