Friday, May 31, 2002
ファルケン☆GT−R
ニュルブルクリンク24時間レースレポート Vol.2


予選レポート
ファルケン☆GT-R、タフなアッシュが
黄旗に引っかかりながらも予選4位に


 今回が30回目と、長い歴史を誇るクラシックイベント、ニュルブルクリンク24時間レース。これで4回目の挑戦となるファルケン・モータースポーツにとっては、歴史の節目を飾れるという意味において、またとない機会となった。今年からグランプリコースの1コーナー周辺に改修があってレイアウトが一部変更され、これまでの総コース全長、25.936kmから25.947kmへと改められた。距離にしてみれば微々たる変化だが、今まで以上に1コーナーでは減速を強いられることから、これまでのタイムは参考にとどまりそうだ。

 今年のエントリー台数は、結局200台をわずかに超える程度にとどまり、例年よりはやや少なめ。ただ、表現としては適切ではないかもしれないが、ウケ狙いのチームはほとんど見られず、参加することに意義があると考えているチームが激減しているようだ。その意味では、よりレベルの高いレースが繰り広げられるのは、ほぼ間違いないだろう。
 さて、注目の予選だが、まず1回目は午前10時から2時間にわたり開催された。ファルケン・モータースポーツの立てた計画としては、ローランド・アッシュ、ダーク・ショイスマン、木下隆之、そして田中哲也の順で、2周ずつ走行。そして、タイムアタックは昨年同様、アッシュが担当するというもの。なお、ニュルブルクリンク24時間の予選のユニークな点は、いきなりフルコースに挑まなくてもいいことだ。GPコースで肩慣らし、もしくはチェックをした後、準備が整ったチームからフルコースでのタイムアタックを開始できる。つまり、早めにフルコースに挑んでいった方が、完璧なクリアラップがとれるということになる。

 ニュルブルクリンクでのレース経験豊富なアッシュは2番目でフルコースに挑み、絶妙のタイミングをつかんで、ほぼ想定どおりのタイムをマークする。9分40秒238は、このセッション5番手。ちなみに、2番手から6番手まで並んだポルシェ911 GT3やBMW M3との比較ではタイム差もそれほどなく、上位陣の実力伯仲を感じさせた。「少しアンダーステアかな。でも、ほとんど問題ないし、僕自身がそういうのを感じられるようになったのが大前進(笑)。まだフォーミュラ・ニッポンのコンマ1秒を切り取るような走りはできていないけど、以前よりかなりいい感じで走れてます」と田中。
 だが、昨年のウィナーであり、優勝最有力候補の呼び声高いザクスピードのクライスラー・バイパーは、元F1ドライバーのペドロ・ラミーのアタックにより、9分12秒842という圧倒的なタイムをたたき出していた。いくら真っ先にフルコースに飛び込んでいったとはいえ、この差は少々予想外だった。
 そして、7時間のインターバルの後、午後7時から2回目のセッションが行われた。日本の感覚で言えば、午後7時ともなればあたりは夕闇に包まれてしかりだが、緯度の高いここドイツではまだ昼間も同然。したがって、アタックにはしばらく適した条件だ。4時間の長きにおいて行われ、後半の1時間がナイトプラクティスを兼ねていると考えていい。

「とりあえず、木下に1回行かせるつもり。1周だけ。あとはアッシュを待って間に合えばもう1回。そのあとはナイトにライトチェックをするだけ。バタバタしたくないし、ここまですべて順調に来ているからね。セッティングももう本番仕様に戻しちゃったし」と語るのは、鈴木哲雄監督。もはや、大幅なタイムアップは望んでいないというわけだが、決勝は24時間にも及ぶことを考えれば、リスクを避ける方が作戦としては的確だろう。ところで、コメントの中にある「アッシュを待って」とは、実はアッシュ、この週末にはザクセンリンクで行われるDTM(ドイツ・ツーリングカー選手権)のサポートレースであるポルシェカップにも出場しており、どちらも欠場するわけにはいかないと、片道250kmを小型チャーター機で移動することになったのだ! つまり、ポルシェカップの予選を終えてから、もう一度ニュルブルクリンクで予選に挑むという次第。なんたるタフガイ!

 かくして、木下は計測開始からすぐにアタックを開始し、間もなくフルコースへとトライ。自身としては1回目のタイムを上回るも、クリアラップを完璧に取れず、やや不満気味。それでも、「ずっとポルシェが前にいて、直線だとちょっと厳しいけど、コーナーでは勝負になることが分かった。それに地元のドライバーについて走って、すごく勉強になったよ」と、すぐに気分を入れ替えていた。
 しばらくガレージで待機の後、予定どおり9時頃にアッシュがサーキットに戻ってくる。休む間もなくマシンに乗り込み、闇で視界の奪われることのない、残り少ない時間を激しく攻め立てた。気温もほどよく下がって、コンディションは悪くない。期待に応えて、マークされたタイムは9分33秒304。これで4番手に浮上する。まさにニュル・スペシャリストの面目躍如といったところか。

「正直言って、ちょっと残念です。アッシュも悔しがってます。『イエロー(フラッグ)が至る所に出ていて、完璧には攻め切れなかった。クルマもタイヤも最高の出来だったから、感触としてはフロントロー、2番手にはつけられた』とのことなので」とアッシュのコメントを伝えてくれたのは、横山欣司マネージャー。確実な手応えをつかんでいたからこそ、両者の悔しそうな思いが理解できた。
 それから間もなくあたりは闇に包まれ、予定どおりナイトランを田中が実施。ここで初めてのアクシデントが発生。5km地点で、マシンが止まったとの報が入ったのだ。しかし、これはガス欠のよう。大事には至らず、スタッフ一同ホッと胸を撫で下ろしていた。
「最後のは余計だったけど、それ以外はここまではかなり順調。順位を物足りなく思うかもしれないけど、今回の予選は10番手につければいいと、そういう考え方でやってきたから。長いレースなんだし、決勝では何が起こるか分からない。逆にウチに変なトラブルが起きなければいい。ポルシェとなら勝負になる? いや、そんなに甘くないよ。甘くないと思う。だけどね、ここまではいい感じ」と鈴木監督は予選を振り返って、そう語っていた。

 ファルケン☆GT-Rが4番手から挑む、決勝レースは土曜日の午後2時にスタートを切る。その先に輝かしいドラマが待ち受けていることを期待したい。なお、ファルケン・モータースポーツ同様、スーパー耐久のチャンピオンとしてニュルブルクリンク24時間に挑む、三好正己/大井貴之/日下部保雄/桂伸一組のRX-7は23番手からスタートを切る。あわせて健闘を望みたい。

Result Qualify 5.31 fri
POS DRIVER CAR TIME
1 P.ザコウスキー/P.ラミー/R.レヒナー Chrysler Viper GTS-R 9'12"842
2 W.ケルン/L.ルーア/R.ネアン/M.ブルスト Porsche 996 GT3 9'26"299
3 J.アルツェン/A.クラセン/M.エストライヒ/T.ベルンハルト Porsche 996 GT3 9'32"296
4 R.アッシュ/D.ショイスマン/木下隆之/田中哲也 NISSAN Skyline GT-R 9'33"304
5 J.シェイド/H-J.シュトゥック/O.カインツ/M.メルテン BMW M3 GTRS 9'35"969
6 W.デストレー/K.ヨデクスニス/P.フルファーシェイド/E.オルソフ Porsche 996 GT3 9'37"506
22 三好正己/大井貴之/日下部保雄/桂伸一 Mazda RX-7 10'02"899



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