“可能な限り逃げ出さない”というのがモットー

2002年10月4日篠塚建次郎選手「パリ〜ダカールラリー」参戦記者会見の模様

 10月4日、日産自動車本社ギャラリーにて、「テレフォニカ・ダカール2003」(通称:パリダカ)に日産チームから参戦することになった篠塚建次郎選手の記者会見が行われた。

 まず渡邊衝三NISMO常務取締役が「03パリダカのドライバーの一員に篠塚建次郎選手を迎えました。彼の情熱と経験が、新しいチームの基礎を作ってくれると思っています。彼の知名度の高さも欧州と日本の架け橋になる、貴重な存在です」と紹介。

 そして篠塚選手が「初めてこの(NISSAN、NISMOのロゴが入ったシャツ)服を着ました。似合ってますか?」と笑いを誘い、なごやかな雰囲気で記者会見が始まった。

「97年に優勝をするまで、“継続は力なり”がモットーでした。でも今は“可能な限り逃げ出さない”というのがモットーです。前の会社にいたときはサラリーマンとドライバーの2足のワラジでした。今は走ってよい成績を残すことが仕事だと思っています。めいっぱい走りたい。

 この年齢で純粋にプロとして新しい挑戦ができる。なんという幸せだろう。ニッサンさん、ありがとう!

 いま、燃えています。クルマにはまだ乗っていませんが、明日(自宅のある)パリに戻って、あさって南アフリカへ行きテストをします。

 ニッサンのピックアップは今年のパリダカで見たんですが、基本的なポテンシャルは勝つには十分と思います。時間はあまりありませんが、今までの経験をフルに生かして、クルマを仕上げたいと思います。」


そして記者からの質疑応答が始まった。

Q:契約年数は?
篠塚:「契約は1年です。ですから03年のラリーで点数をつけられて、点数が良ければまた契約があるでしょうし、悪ければ契約してくれないでしょう。今度のラリーでは僕は54歳ですからドライバーとしては高年齢なんですが、自分が走れるのは分かっています。04年、05年にも出場する気持ちは持っていますが、体力や優勝しようという気持ちがなければ走らないでしょう」

Q:2足のワラジから開放されてどうですか?
篠塚:「走り1本で行くという有利さがある。前は朝起きて会社に行かねばいけないというのがあったし、日本にいるとなかなか集中できないこともあって、無理を言って2年前からパリに住んでいます。これでもっとラリーに集中できる環境が出来上がったと思っています」

Q:今後のテストのスケジュールは?
篠塚:「南アフリカで5日間します。クルマは南アフリカで作っていますし、砂漠もあるので環境がいいんです。でもドライバーというのはクルマに100%満足しないものなので、もう1〜2回南アフリカかフランスで走ってみたいと思っています。03年のワールドカップにも出たいと思っていますいい成績を収めるには、本番で走りながらテストできるのがいいですから」

Q:ワークス体制は?
渡辺:「ニッサンとして5台、うち3台が南アフリカを主体としたチームで、その1台に篠塚選手が乗ります。他の体制は今月中旬から下旬にパリで発表をします。ベースとなる車両はニッサン・ピックアップ(日本未発売のトラック)でエンジンはV6の3.5リットル(VQ35DE)です」

Q:並みいる強豪チームの中からニッサンを選んだ理由は?
篠塚:「前の会社を辞めることになってから動きました。それまでは『このままそのチームにいるんだろうな』と漠然と思っていました。ニッサン入りは『エンジンの技術を生かせるかな?』と思い、いろんな方に話をしました。別のところもありました。でもワークス体制でやる、去年のクルマのポテンシャルを見たし、これから本格的にやるということもありましたし。パリダカに初めて出場した18年前の『やるぞ!』という感じ、燃えるような思いをニッサンに感じました。『ここだ!』と思った!
たまたまフランスニッサンの方と面識があって、大分前に冗談で『うちに来ないか?』と言われて、こちらも冗談で『そのうち行くよ』って話していたんですが、本当にそうなっちゃいました」

Q:コ・ドライバーは?
篠塚:「前に組んだティエリー・ベリゾッティというフランス人です。ナビゲーターとしても優秀ですが、普段はメカニックをやっていてそちらも信頼しています。今回のテストにはいけませんが、テスト後に南アでクルマを整備して勉強させてほしいというリクエストは出しています」

Q:前のチームメイトである増岡浩選手とは?
篠塚:「彼は僕よりひと回り若いんですが、経験も十分にある。以前から考えているのですが、自分以外は全部ライバルです。今も変わりません。」 
Q:パリダカに駆り立てるものとは?
篠塚:「走るのが好きでこの道に入ったんです。だんだん年齢を重ねるに連れて、瞬発力の要求されるWRCでは優勝争いに絡めなくなってきて、止める決心をしました。パリダカは、マラソンのように持久力が要求されるラリーで、こちらはまだ優勝争いに絡める。毎年確認しながら走ってますが、前回のパリダカでもまだ十分やれると思った。パリダカは経験、ノウハウ、瞬間的な判断の積み重ねが必要で、その判断が結果になって現れてくるのが面白いんです。終わるとしばらくは乗りたいと思わないんですが、2-3ヶ月するとまた乗りたくなる不思議な魔力を持っています。優勝に絡める限りは続けたいと思います。それに、優勝したことのある人は分かると思うんですが、表彰台の真ん中に立つ喜び。すごく気持ちいいんですよ。だから表彰台の真ん中に立っていい思いをしたい、シャンパンかけやりたいですね。」
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