May 20, 2001

Indianapolis 500 Race Preview
第85回 インディアナポリス500マイルレース/レースプレビュー

世界最大の自動車レースイベント、インディアナポリス500マイル。インフィニティにとって5回目の挑戦だ。
今シーズンはルマンで使用したエンジンをベースとする新型「35A」にとって、ブリックヤードデビュー戦となる。

5月6日にスタートしたインディ500も、20日の予選最終日を終えたところですでに2週間が経過している。長い道のりを経てインディ500のグリッドに並んだのは33台。

インフィニティ勢の「ドレイヤー&ラインボルドレーシング」#24ロビー・ビュールは9位(3列目アウトサイド)、「チーバー・インディレーシング」#52スコット・グッドイヤーが16位(6列目インサイド)、同じく#51のエディ・チーバーJr.が25位(9列目インサイド)からスタートする。

第85回インディアナポリス500マイルは27日のアメリカ東部時間の午前11時※にスタートを告げるグリーンフラッグが振り下ろされる。(※インディアナ州はサマータイムを採用せず、中部時間と同時刻になる)



インディ500まめ知識

インディアナポリス モータースピードウェイ
1周2.5マイル(4キロ)、1909年に完成という歴史のあるレースコースで、建設当時は自動車のテストコースとして建設された。第1回インディ500が開催されたのは1911年、今から90年も前のこと。1994年までこのコースでは年に1回インディ500が開催されるのみであったが、96年からはNASCARウィンストンカップの「ブリックヤード400」を開催。2000年からはF−1世界選手権の「USグランプリ」を開催するなど今や「世界のモータースポーツの中心」となっている。

グリッドは33台
インディ500のグリッドは横3台×11列が伝統である。この3列縦隊がくせもので、スタート直後のターン1(アメリカではコーナーをターンと呼ぶ)に33台が一斉に突入していくと必ずといっていいほど接触などのアクシデントが発生してしまう。レース前に行われるブリーフィングでは「1周目は慎重に行くように・・・」とのお達しが散々出るにもかかわらず、やはりレーサーの本能として心にまでブレーキはかけられないようだ。最近では95年に10台近くを巻き込む大アクシデントが発生している。タイヤがまだ温まっていない1周目は要注意なのである。

スタートは午前11時、距離は500マイル
インディ500のスタートはメモリアルディの週末の午前11時が伝統である。第1回開催となった1911年当時の自動車の性能から日没までに走りきれる距離ということで、11時スタートとキリのいい500マイルが設定された。

追い抜き禁止のイエローコーション
インディレースの特徴であるイエローコーション。クラッシュなどのアクシデントが発生すると、フラッグポストでイエローフラッグが出されて全コース追い抜き禁止のスローダウン走行となる。逃げ場の無いオーバルコースでの2次的な事故を防ぐための措置なのだが、このコーションが出ると、全車との距離が一気に縮まってしまう。これまでの努力も水の泡と思うかもしれないが、このコーションの間に給油やタイヤ交換などのピットワークを済ませればタイムロスを最小限に抑えることができるまたとないチャンスなのだ。それに、事故処理が終われば再び接戦状態でレースが開始されるという見る側にとっても最後まで楽しみをもたらしてくれるシステムなのである。

燃料はメタノール
インディカ−の燃料はガソリンではなく、アルコールの一種であるメタノールを使用している。メタノールは圧縮に強く(オクタン価がガソリンよりも高い)ターボの加給圧を上げやすいために、より大きなパワーを得る目的で使われたのがきっかけで、一時はガソリン車とメタノール車が入り混じって走っていた。しかし、1933年スタートまもなくドライバーと観客に犠牲者を出す大火災を伴う事故が発生したのをきっかけに爆発性のあるガソリンの使用が禁止され現在に至っている。ただし、メタノールはエネルギー量がガソリンよりもはるかに少ないため、大量の燃料を必要とする。今回も満タンで走れる距離はせいぜい27周ほどである。よって少なくとも7回ほどのピットストップがゴールまでに必要になる。

通称ブリックヤードの秘密
2000年からはF−1世界選手権が開催され、名実共に「世界のモータースポーツの中心」となったわけだが、この別名「ブリックヤード」とも呼ばれるインディアナポリス、その昔はまさに「ブリック」つまりレンガ敷きのコースであった。開業当時、表面をタールで固めた簡単な舗装を施してあったが、レース中に路面の痛みが進み、その対策として300万個以上のレンガがコース上に敷き詰められた。しかし、レースカーのスピードアップにともなって、画期的であったレンガ敷きのコースはアスファルトによる舗装が施されてゆき、ついには1ヤードを残して全てが高規格のアスファルト舗装路面に改修された。残りの1ヤードは現在もスタートライン上に残されている。先代のコースオーナーであるトニー・ハルマン氏が「歴史的資産」として残したのだ。その他のレンガは今もそっくりそのまま現在のアスファルトの下に眠っている。

一番速い敗者
500マイルを一番で駆け抜けた者のみが入ることを許される場所が「ビクトリーレーン」。インディ500には表彰台は無い。つまり2位も3位も表彰されることは無い。2位は「ファステストルーザー=一番速い敗者」とも呼ばれる。2位には3位よりは高い賞金がもらえるものの歴史に名が残ることは殆んど無い。ウィナーには100万ドルを超える優勝賞金と各種賞金、豪華なウィナーリング、トロフィーのレプリカが贈られ、大きなトロフィーには名前と顔のレリーフが刻まれて生涯その名誉が称えられるという。1位と2位では、そのタイム差をはるかに上回る待遇の差があるのである。

ミルクで祝福
インディ伝統で最も有名なものにウィナーが飲むミルクがある。レースウィナーはシャンパンではなく、ミルクで祝福されるのだ。これは1933年の第21回大会にインディ500の2勝目を挙げたルイス・メイヤーが、ゴール後に冷たいミルクを用意させて飲んだのが始まりとなっている。前オーナーのトニー・ハルマンが後にこのミルクを習慣として定着させた。このミルクはインディアナ州酪農協会がスポンサーになっていて、同時に5000ドルの賞金も贈られる。

などなどが、インディ500ならではのトピックだが、その他にも世界最大のレースならではのエピソードが盛りだくさんである。5月27日、日本時間で日曜日深夜25時にスタートする85回インディアナポリス500マイル。これまで84回の開催で積み上げてきた歴史、伝統、伝説、に更なる1ページがまた書き加えられる。その1ページを書き加えるのはインフィニティなのか、5月27日、あなたは歴史の証人になる。

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