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残り2時間となった正午ごろ32号ニッサン車が4位でピットに滑り込み、星野選手がマシンを降り、フィニッシュドライバーとして鈴木亜久里選手がマシンに乗り込む。
星野選手は、無線で亜久里に「無理をしなくてもいいから着実に走って、マシンはフィーリングも変わっていないから大丈夫」と。
ピット内では、星野選手の花道をせめて3位内の表彰台に上げたいと全スタッフが考えていた。
トップは29号車トヨタ、事前の予想では挑戦初年目のマシンは前半でトラブルが発生するとみられていただけに、ライバル車のポテンシャルの高さに驚きの声も。
2、3位はル・マンでは実績の高いポルシェ。
健闘もここまでかと誰もが思った。
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マシンを降りた星野選手は、知合いの記者に10分後に話すからと言い残して、パドック内のニッサンテントにある自分の部屋へ向かった。
12時30分ごろから記者と最後のビッグレースの感想などを話している所に、トップの29号車トヨタがフォードシケインでストップの報せがもたらされると、星野選手の表情は100ワットの電球が10,000ワットの電球になったかと思う程一瞬のうちに明るくなった。
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「まだ、まだ終った訳ではないんだから、喜ぶのは早い」と周りの人間を笑わせながらも自重する。
「3位の表彰台って君が代、流れるの?(流れないの返事に)自分で歌っちゃっていい?」と記者に同意を求める。
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フィニッシュ30分前にピットに戻り、テレビの解説をしていた関谷正徳氏がインタビューに来る。
関谷氏はインタビュー後、涙を見せた。
星野選手は残念ながら表彰式の準備でコントロールタワー内に連れて行かれ、自分のチームのフィニッシュを見ることができなかった。
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星野選手の有終の美にライバルチームの選手、関係者からも祝福の言葉が飛び交う。
表彰式が終って「来年も乗っちゃおうか」とジョークをとばす。
星野選手は真顔で「でも、もう、勘弁してよ。自分では区切りをつけることを決めたんだから」とポツリと語った。
しかし、その目は大きな目標を成し遂げた満足感からもうもうと輝いていた。
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