――ダットサンのモータースポーツの功績はすぐにアメリカの伝説となりました。ひとつは会社のモータースポーツへの取り組み方が非常にプロフェッショナルだったこと。そしてさらに重要なことは、ダットサンがSCCAとIMSA、つまりアマとプロの両方のイベントで偉大なる成功を納めた事でしょう。
そのとおりです。私は、日野" サムライ"(1960年代のプロトタイプレーシングカー)をデサインしたピート・ブロックによかったら我々と一緒にやらないか、ダットサン・フェアレディ・ロードスターをレース用に準備しないかって話をもちかけたんです。それがアメリカでの勝利の始まりでした。最初はなかなか勝てなくて、それがどうしてだか良く判りませんでした。後になって、他の車はルールを都合よく解釈して車を改造していることを発見したんですよ。例えばみんな大きい燃料タンクを取り付けてあったり…。しかし我々は正々堂々と戦い続けました。そして短い期間で勝利を勝ち取ったのです。フェアレディの後には、510、Zが我々に数えきれないほどの勝利を与えてくれました。
そういう成功の時でも、私はアマチュアのレーシングを忘れることはありませんでした。だから元F1ドライバーのボブ・ボンデュランがオレンジ・カウンティ・インターナショナル・レースウェイに当時新しく高度なテクニックを教えるドライビング・スクールを開設するから車を提供してくれないかと会いに来た時には、喜んで引き受けたんですよ。嬉しい事に、ミスター・ボンデュランとは今でもいいお付き合いをさせてもらっています。
――もうこれでみなさんには「Mr.K'sコレクション」というブランドが単なる商品ブランドじゃなく、あなたのライフワークを反映したものということがご理解いただけたと思います。1969年にさかのぼりますが、あなたが誕生に深く関わったオリジナルのフェアレディZはかなりセンセーショナルを引き起こしましたね。新型Zもそうなると思われますか?
ぜひそうなってほしいです。運転はまだですが、スペックを見た限りでは、きっと見事なパフォーマンスをしてくれそうです。とにかく言えることは、新しいZカーに会えることが嬉しくて嬉しくて仕方がないということなんです。Zとそのオーナー達というのは、いつも私の心の中では特別な場所にいるんですよ。
――Mr.K 、あなたはデトロイトにある自動車殿堂に殿堂入りされた日本人4人の中のひとりです。このような素晴らしい名誉を受けられた感想、そしてそれはあなたに何を意味するのか、お話しいただけませんか。
初め自動車殿堂に推薦されると聴いたとき、まさか日本から出掛けた自動車セールスマンにそんな名誉が与えられる事は有り得ないとしばらくは信じられませんでした。しかしそれが本当なら、やっぱりアメリカは偉大な包容力のある国だと再認識をしました。更に、これは私自身よりも、むしろダットサンに、そしてそのお客様と販売店の大きなサポートの結果であると考え、17年間共に働いてくれた米国日産自動車全員に対する評価なのだと考えて、感謝と誇りをもって私が代表してダットサンと共にその栄誉を受けました。私は自動車セールスマンとして自動車殿堂に選ばれた事を生涯における最高の名誉と考えています。
――これからは、ここNISMO本社を拠点に活動されるので、NISMOで色々な自動車愛好家の方に会うことができますね。
91歳になられても、まだまだ" LoveCars,LovePeople,LoveLife " ということですね。あの有名なあなたのキャッチフレーズは、ただの宣伝コピーの名文句じゃなく`哲学'ですよね。
ええ、そのとおりです。我々のような自動車愛好家にとって、車というのは七里靴みたいな物で、すごく面白いから毎日履きたいし、楽しみたい。アメリカのお客様に会うために最初にしたことは、私のオフィスを元の8階に置くのはやめて、1階に移したことです。入って来られるお客様と私がすぐに会えるようにしたかったのです。私はお互い楽しく付き合うためには、まず人々と近づき、話しをしなくてはいけないと思うんです。高い建物のどこかに閉じこもっていたんじゃ役に立ちません。人生は一度しかないのですから、とにかく試してみて、達成できるところまでやってみなくてはなりませんよ。
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