How do the Aerodynamics work on the GT-R LM NISMO?
GT-R LM NISMO 空力の秘密

ダレン・コックス グローバルヘッド NISMOブランド/マーケティング/セールス
私たちのLMP1マシンのエアロダイナミクス(空力)は競合車とは大きく異なります。見た目のカッコよさだけでなく、速く走るためでもあるのです。

ベン・ボウルビー テクニカル・ダイレクター/チーム監督
コーナーを速く駆け抜けるには、タイヤを下方向に押しつける力「ダウンフォース」が必要です。すなわち、タイヤがダウンフォースによって、路面と接地する面積が大きくなるのです。

ザック・エイキン チーフエンジニア
ダウンフォースでタイヤを路面に押しつければ押しつけるほど、タイヤはグリップします。サーキットでの走行性能を追い求めるのに、最善の方法です。

ボウルビー

このマシンは、計算上時速150マイル(240キロ)において、天井に逆さまに貼りついて走れるほどのダウンフォースを生み出します。

エイキン
マシンの開発は、この空力性能の開発からスタートしました。レギュレーションをよく理解し、マシン前部にエンジンを積み、駆動輪は前輪とするなど、主要部品を車両前部に搭載、空力形状も工夫することで、効率的に強力なダウンフォースを生み出すマシンが出来ました。

ボウルビー
規則上、車両後部で強力なダウンフォースを生み出すには、制限が多く、開発の余地が限られています。

エイキン
一方で、車両前部はその制限が少なく、前方にできるだけエンジンなどの重量物を置きながら、強力なダウンフォースを生み出す空力開発に集中することにしたのです。

ボウルビー
生み出すダウンフォースの配分は、フロントが65%、重量配分もフロントが65%となっています。

リカルド・ディビラ LM P1エンジニア
レギュレーションと照らし合わせながら、できるだけ空気抵抗を少なくしながら、強力なダウンフォースを発生するよう設計しています。

ルーカス・オルドネス LM P1ドライバー
ドライバーにとって、コーナーをより速く駆け抜けるのは喜びでもあります。ただ、ダウンフォースが多くなればなるほど、空気抵抗は増え、最高速は伸び悩みます。ダウンフォースを増やして高い速度でのコーナリングを取るのか、ダウンフォースを減らしてストレートでの最高速を取るのか、マシンをセッティングする上である程度の妥協が必要ですね。

ディビラ
最小限の空気抵抗でダウンフォースを生み出せれば、ラップタイム短縮につながるでしょう。ハードブレーキング、早目のアクセルオン、そして高速コーナリングなどです。ストレートで速く、かつコーナリングスピードも高い。それこそがル・マンで求められるレーシングマシンの特徴なのです。

オルドネス
ル・マンは挑戦しがいのあるコースです。直線でのスピードが必要なだけでなく、コーナーでのダウンフォースも必要です。

ボウルビー
空気抵抗による悪影響をできるだけ受けずにダウンフォースを発生する一つの方法として、車体前部から後部にかけて一気に伸びる、2本の巨大なバキューム・チューブを設けました。

エイキン
競合チームの多くは、空気をフロントタイヤ後方下部のディフューザーから排出するなどしていますが、日産は車体後部にかけてのダクト全体を空気がよどみなく流れる仕組みになっています。

ボウルビー
車体前部から取り込まれた空気の流れは、低圧の状態でダクトを通り抜けます。おかげで抵抗が少なく、多くのダウンフォースが得られるのです。

エイキン
これにより、私たちの考える最速のマシンが生まれると信じています。

アレックス・バンコム LM P1ドライバー
ダウンフォースが充分発生していると感じられれば、さらにコーナーを攻めてスピードを稼ぎたくなるものです。

エイキン
マシンのスピードが乗れば乗るほど、マシンはますます路面に貼りついていきます。

オルドネス
このマシンを操るにはこれまでとは全く異なるドライビング技術と自信が必要です。

エイキン
ダウンフォースは車速の2乗で増していきます。文字通り2倍の速度になれば、4倍のダウンフォースが得られるのです。スピードが乗れば乗るほど、多くのダウンフォースが得られるのです。このマシンのエアロダイナミクスはとても強力な武器になるでしょう。