世界一過酷なツーリングカーレースと言われるニュルブルクリンク24時間レース。第42回の今年、日産/ニスモからは、2台のNISSAN GT-R NISMO GT3が出場しました。日産創立80周年とニスモ30周年を記念して、カーナンバーは80と30でエントリーしました。

ドライバーラインアップは、#30 GT-Rがミハエル・クルム、田中哲也、星野一樹、千代勝正。#80 GT-Rはニック・ハイドフェルド(GTアカデミー審査員)、アレックス・バンコム(同先生役)、ルーカス・オルドネスとフローリアン・ストラウス(GTアカデミー卒業生)です。

車検、ドライバーのレジストレーションに続き、木曜日の現地時間14時45分に公式プラクティスがスタートします。#30 GT-Rはクルム、#80 GT-Rはオルドネスのドライブでセッションを開始。天候は曇り空から薄日が差す程度で、少し肌寒い気温です。

グランプリコースとノルドシュライフェ(北コース)をつなぐ全長25kmのニュルでは、各車両のGPS信号をリアルタイムにキャッチして走行場所を確認しながら、モニターでタイムチェックすることができます。#80 GT-Rが3位、#30 GT-Rが9位となっています。

16時45分から公式予選開始。#30 GT-Rはクルムがアタックし、この時点で5番手タイムを記録。「トラフィックがなければトップタイムが出せたと思うので少し残念」とクルム。予選1回目は、#30 GT-Rは6位、トップ30クォリファイに出られる#80はアタックせず32位。

翌金曜日。夜半から小雨が続き路面は濡れていますが、このあと天気は回復の見込みです。前日ウェットコンディションでのチェックはできているので、問題ありません。#30 GT-Rはトップ30クォリファイ進出を果たすため、フルアタックで上位グリッドを目指します。

#30 GT-Rは田中が予選走行を開始しました。グランプリコースはほぼドライでしたが、ノルドシュライフェはウェットという難しいコンディションです。続いて千代と星野が走り、このあとクルムのアタックです。路面は回復してきており、セッション終盤にはドライになるでしょう。

千代は、「まだウェットな箇所があちこちに残るなか、僕はインターミディエイトタイヤで走行しました。水量だけでなく、路面サーフェスの新旧の差でグリップレベルが異なる難しいコンディションでしたが、本番レースに向けて良い練習となりました」と語っています。

さて、いよいよクルムのアタックです。無事トップ30入りを果たすことができました。「60km/hに減速しなければならない区間があった中、8分30秒1をだせたので、クルマの状態も僕のドライビングも良かったです」とクルムは振り返ります。

30台がポールポジションを争うトップ30クォリファイがスタートしました。#30 GT-Rはクルム、#80 GT-Rはバンコムがアタッカーです。コースはドライですが、森の中は雨が少し降っています。そんな中、#30 GT-Rは20番手、#80 GT-Rは10番グリッドを獲得しました。

そしていよいよ24時間レースが始まります。 グランドスタンドだけでなくグランプリコース沿いのスタンドに満員のファンが詰めかけ、ノルドシュライフェの両脇のキャンプサイトには多くのテントが並んでおり、観客の総数は20万人を超えました。

#80 GT-Rはバンコム、#30 GT-Rはクルムがスタートを担当しました。レースは序盤から荒れた展開となり、コースアウトしてカードレールに張り付いたり、他のマシンのスピンに巻き込まれたり、多くがグリーンヘルと呼ばれるこの難コースの餌食となってしまいました。

順調にスタートを切ったかに思われた#80バンコムも、オープニングラップに何かに接触してタイヤバーストに見舞われました。幸いグランプリコースのショートカットを通過してピットインすることができたので、ボディ修復とタイヤ交換を行い最小限のロスにとどめました。

一方、20位からスタートしたクルムはポジションキープして序盤を周回。コースの所々で起きているアクシデントを交わしながら7周の予定周回を終え、星野にバトンを渡しました。

星野のスティントでは、ノルドシュライフェの約1/3もの距離がイエローフラッグ区間でストレスのたまる時間となりました。18時を過ぎても気温、路温共に高く、タイヤには厳しい状況でしたが、タイヤマネジメントと燃費運転を心がけ、予定の8周を終えました。

3人目はこのニュル24時間レース初挑戦となる千代です。しかし同様に我慢のスティントとなりました。再度発生したクラッシュにより、コース脇のガードレールの補修作業が行われ、スティントの大部分となる1時間もの間イエローフラッグが提示されました。

4時間が経過し#30 GT-Rに乗りこんだのはベテランの田中でした。この頃になるとコース上は落ち着いてきました。田中は順調に周回を重ねましたが、7周目に突如振動を感じてピットイン。シャシー、タイヤ双方を確認した結果、タイヤカスのピックアップが振動の原因でした。

約5時間でドライバー4名が一巡し、この時点で21位となっていた#30 GT-Rは再びクルムがコースインして行きました。チームは、効率的な休息をとらせるため、1人のドライバーが給油を挟んで2回走るダブルスティントでローテーションすることにします。

24時間を戦う上では、ドライバーの疲労回復も重要な要素です。ドライバーごとに食事をとる時間も異なるため、そのリクエストに応えてくれるケータリングスタッフも大切なチームの一員です。さらに、ドライバーのボディケア担当(フィジオ)も常駐しています。

そしてここから#30 GT-Rは追い上げを開始しました。夜間走行の時間帯となり気温が下がるにつれて徐々にペースを上げ、ポジションを上げていきます。しかし、クルムがタフなダブルスティントを終えようとした時、突如トラブルが襲い掛かります。

ガードレールに接触しボディを損傷した#30 GT-Rがピットインすると、準備して待っていたメカニックが暫定的な補修を終えて、星野に交代して復帰しました。幸い車体へのダメージは少なく、予定通り8周のスティントを開始。21位まで順位を回復させました。

ところが悲劇はこのあと発生します。夜間走行の経験も豊富な星野でしたが、0時15分頃、#30 GT-Rはノルドシュライフェ後半のフォックスヘーレ付近のブラインドコーナーでコース上の停止車両を避けるためコースオフし、側壁に衝突してしまいました。

星野は暗闇の中をスロー走行し、なんとか自力でピットまで戻ったものの、#30 GT-Rのダメージはフレームまで達しており、チームはレース中の修復を断念せざるを得ないと判断。やむなく午前2時30分にリタイヤ届を提出しました。

もう1台の#80 GT-Rは、オープニングラップのアクシデントの後は順調に周回を重ねていました。しかし、その#80 GT-Rも夜間走行中に他車との接触により約1時間をロスすることになりました。走行車両が150台を越えるニュルでは避けきれないコンタクトが頻発します。

それでも#80 GT-Rは最後まで走り切り、クラス13位で24時間目のチェッカーフラッグを受けました。GT-R勢最上位は、山内一典、ジョルダン・トレッソン、トビアスおよびミハエル・シュルツの駆るシュルツ・モータースポーツの#24 GT-Rで、クラス11位でした。

「僕らはリタイヤを余儀なくされましたが、GT-Rのポテンシャルを改めて確認しました。ミスなく走り続けたら10位以内フィニッシュは確実でした。やらなければならないことはたくさんありますが、もし来年も参戦できるなら、さらにクルマを強くしたいですね」とクルムは語りました。