WEC REPORT

Vol.
2014.4.8

皆さん、こんにちは!
SUPER GT 2014第1戦岡山、悪天候の中、たくさんのお客様でサーキットは埋め尽くされました。その開幕戦で、まず無事にNISSAN GT-R NISMO GT500の4台のマシンが全車グリッドに並ぶことができ、感慨深い思いでいっぱいでした。

ここまでたどり着くには、本当に困難な道のりでした。昨年の夏にシェイクダウンをしたマシンは、当初ほとんどまともに走行ができなかった、と言っても過言ではありません。レースの合間に幾度もテストを重ね、久しぶりに一からGT500のマシンを開発する壁に何度もぶつかりながらここまでやってきました。

グリッドに立ったあの時点でも不安要素が取り除けている状況とは言い難く、直前までトラブルに見舞われるも、メカニックの必死な作業で乗り切り、「やっとこの場所に立てた」というような思いでした。

今年は次生くんがIMPULから7年ぶりにNISMOに復帰し、日産のエースを務めることになりました。彼もNISMOでSUPER GTのチャンピオンを獲りたいという夢と、自分が期待されてこの位置にいるという喜びはもちろんありますが、その反面今まで慣れ親しんできたブリヂストンタイヤを装着するIMPULチームからミシュランタイヤを装着するNISMOへ移籍することには、どこかに不安も少なからずあったように感じます。

また、NISMOやミシュランのRONNIEへの信用は絶大で、その信用を自分も得たいそして得なくてはいけない、と次生くんは必死になっているようにも見えました。しかし、テストでは不運なトラブルやアクシデントが多く、なかなか満足いく形でアタックをすることができないままでいました。

そんな中、土曜日のフリー走行ではトップタイムを出すことができ、かなり自信を得たようでした。その気持ちで予選に臨むことができたことは、次生くんにとっては本当にプラスになったと思うし、実際Q1ではトップから僅差で3位という結果を残しました。あとはQ2を担当するRONNIEに託しました。

2人は2010年にIMPULでも組んでいるし、まじめなところも似ているので、とてもいいコンビだと思います。とはいえRONNIEは、兄弟のように慕い共に3年間戦ってきた柳田くんがMOLAへ移籍することを知ったときは、正直ショックだったようです。でも、次生くんの強さも知っているので、「このパッケージで勝つ」と年初のセパンテストでは話してくれました。

RONNIEは予選ではアタックラップで前方を走行するマシンに引っかかってしまい、ベストのタイムを出すことができず、6位という結果。狭く抜きにくい岡山のコースでは少しでも前からスタートしたいところではありましたが、次生くんの強さとRONNIEの安定さがあれば、必ず前に行けると信じていました。そして何よりも私たちにはNISMOという強い総合力があります。一から開発をしてきたからこそ、速いのに気まぐれで気難しいこのマシンと長く向き合ってきました。また、何度も何度もピットワークやドライバーチェンジの練習を行い、この練習がそのまま本番でもできるよう、自分たちの精神面も同時に磨いてきました。レースでは、その全てが出し切れたと思います。

ただ一つ、次生くんはレースで大きなミスをおかしてしまいました。スタート後1周目で36号車をオーバーテイクしようとし、コースアウト。その結果1分以上、トップから引き離されてしまいました。私が思う一番の次生くんのミスとは、このパッケージそして何よりも自分自身を100%信用しきれていなかったことだと思うのです。

確かにタイヤテストをレース距離に達するほど、十分にすることができていなかったため、「スティントの後半までタイヤが持つのだろうか」など、不安要素はありました。そのため「スタートで少しでも前に行きたい」と思ったことは間違いではないし、私たちもそう願っていました。

しかし、誰よりも最後まで速いタイムでコース上を走っていたのは次生くんとRONNIEでした。そしてピットストップでもメカニックが素晴らしい仕事をしてくれて、ギャップを10秒近く縮めてくれたと思います。

その結果言えることといえば、そこで次生くんはもう少し冷静になる必要もありましたが、このミスは次生くんだけのものではなかったと思います。私自身も、マシン・タイヤ・メカニックそしてドライバー、あの接触以外の全ての要素があそこまでの素晴らしいパフォーマンスをしてくれるとは正直思っていませんでした。

あのアクシデント後の次生くんとRONNIEの諦めない力強い走りには見ていて涙が出ました。あの瞬間、たとえ一瞬でも「もうだめだ」と思った自分を恥ずかしく思います。だからこそ、今後は確実に自分たちの仕事をしていけば、表彰台の頂点は必ず見えてくると思えるし、次生くんも自信を持ってレースに臨み、彼らしいコース上での図太さに加え、エースとしての余裕も見せてくれると思います。

このレース、少なくとも「私たちはレースをした」、そう言い切れます。トップから31秒遅れの7位まで順位を上げることができたということは、誇れることだと思います。ここで得た4ポイントと反省点を、今後の糧にしていきたいと思います。

NISSAN勢としては、12号車は表彰台3位、GT300クラスの3号車は4位という結果。今の時点での実力を発揮し、シリーズを見据えるとベストなレースができたと思います。

46号車は速さを見せるも、不安定な天候に左右され戦略ミスにより10位、24号車は終始不安を抱えながらのレース展開で12位という結果となってしまいました。これらはNISSANチーム全体としての問題も背景にはあると思いますので、さらなる改善を目指したいと思います。

最後に、繰り返しにはなりますが、様々なトラブルを抱えながらテストを重ねてきたNISSAN GT-R NISMO GT500 の4台が完走できたことに関しては、本当にうれしく思います。そしてサバイバルレースになると思われたGT500クラス全車15台が完走したことは、日本のモータースポーツ界全体としても、大きな一歩だと言えるのではないでしょうか。もちろん、まだまだ解決すべき問題も多く、このようなレースが今後も続くとは限りません。ここで気を緩めることなく、むしろさらに気を引き締めて、ドライバーが100%信頼を寄せて力を出し切れるマシンにするべく、開発を進めていきたいと思います。

皆さん、寒い中、岡山国際サーキットまで声援を届けてくださり、ありがとうございました。今シーズン、まだまだ始まったばかりですので、今後もみんなでしっかり前を見て頑張っていきたいと思います。また、次戦の第2戦富士もぜひサーキットもしくはパブリックビューイングまで足を運んでいただき、私たちの背中を後押ししてくださいね!

また富士スピードウェイでお会いしましょう!

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