ル・マンシリーズLMP2クラスのエンジンレギュレーションが2011年より改訂され、対象となるパワーユニットは、市販車用量産エンジンがベースとなった。このルールが2010年6月に公布されるやいなや、ニスモではかつてSUPER GT用に開発したV8型自然吸気エンジンVK45DEがこの規定に合致すると判断し、早速開発に着手した。

 このVK45DEエンジンを搭載して2008年にSUPER GTに登場したNISSAN GT-R GT500は、デビューイヤーに9戦中7勝という圧倒的強さでチャンピオンに手中にしている。このポテンシャルの高さと、実戦で磨いた耐久性や使い勝手が、24時間レースを含む耐久レースが組み合わされた同シリーズにマッチすると考えたわけである。しかも、欧州では多くのマニュファクチャラーや有力チームが最も注力すると言われるル・マン24時間レースがシリーズのクライマックスであり、米国での2戦やアジアでの開催を含むインターコンチネンタルシリーズも同時に行われることから、注目度は申し分ない。さらに、参加チームやエンジンメーカーの過剰な開発競争を避けるため、シャシーにもエンジンにも費用を抑制する「バジェットキャップ」制が導入されることから、既にSUPER GT用として完成の域にある同エンジンは、コスト的にも有利であった。

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