ボディワーク
FIA GT1はベース車両のボディシェルをそのまま使うことが義務付けられている。ただし、太いタイヤを収めるためのボディ拡幅は可能。拡幅の上限はベース車両プラス150mmで、NISSAN GT-R FIA GT1車両はこの上限をほぼ使い切っている。ベース車両の全幅1895mmに対し、FIA GT1車両の全幅は2040mm。レギュレーション上、車両の最大幅は2100mmと規定されているが、「ベース車両プラス150mm以内」の規定が優先される。
拡幅された前後フェンダーには、31/71-18サイズのミシュラン製タイヤが収まる。幅310mm、直径710mmで、内径は18インチ。ベース車両はフロントに255/40-20、リヤに285/35-20のランフラットタイヤを履く。前後ともにタイヤ幅が広くなり、接地面積が増大。グリップ向上に結びつく。一方、ボディ拡幅によって前面投影面積が増えるのは空力上好ましくないが、車両トレッド幅拡大によるパフォーマンス向上効果の方が圧倒的に大きいため、議論の余地なくボディ拡幅を優先した。
競合する車両の中には、フォーミュラカーやSUPER GTの一部車両のようなカーボンモノコックを採用するモデルもある。必要な強度・剛性を確保しつつ軽量に仕上げられるのがメリットだ。一方、NISSAN GT-Rはスチールを基本としたボディシェルを採用。ただし、構造の工夫によって、スチールを主体とした割に軽いボディシェルに仕上がっている。
量産ベースのボディシェルを元にレース車両を仕立てる場合、横転時の乗員保護を目的としたロールケージを最適に配置して、ボディ剛性向上に役立てるのが常套手段。 キャビンに張り巡らせるパイプの数を増やせば増やした分だけ剛性は上がるが、それと引き換えに重量は増えてしまう。
NISSAN GT-R FIA GT1車両の開発にあたっては、純レース車両に近いベース車両を持つ競合相手との差を縮める目的から、重量増を最小限に抑えつつ、必要な剛性の確保を狙った。その際、ベース車両が持つボディ剛性の高さが大いに役立った。NISSAN GT-R FIA GT1車両に見るパイプ本数の少なさが、素性の良さを物語っている。
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